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当たりの日

仕事の日はいつも、家を出て最寄りの自販機で缶コーヒーを買うのが日課になっている。いつものようにコーヒーを買って取り出そうとすると、ピピピピピと音が鳴った。当たりだ!そう、ここの自販機は当たり付き自販機なのだ。

ここのnoteを書き始めた日。あの日もこんなふうに当たりが出た日だった。

自販機で当たりが出るたびに、あの初めての日を思い出す。ここから先の人生、何かを毎日書くということをどこまで続けられるかは分からないが、自販機で当たりが出る度、僕はこうして毎日何かを書き続けた日々のことを思い出すことだろう。桜の時期になる度にサクラという名前の人のことを思い出すように。それは悪くないことのように思う。

あの日何となく始めたnoteも、辞めるタイミングも分からないまま1160日を超えた。我ながらすごい数字になったものだと感心する。あの日の当たりから数えて今日の当たりは4回目になるはずだ。滅多に出ない当たりを4度も超えた。あの日はまだ100円で買えた缶コーヒーは今や110円になって、あの日ぴったりと顔を覆っていたマスクを付けずに出かける日も増えて、あの頃毎朝『おはよう』とLINEを送っていた恋人とはもう疎遠になって、あの日はまだ平和だった……わけでもないが、世界では戦争が始まった。そういえば自販機の脇に置かれていたゴミ箱も、利用者のマナーの悪さを理由に撤去されて久しい。変わらないものがある一方で、世界は目まぐるしく思いもよらない所へ変わってゆく。変わらないものを大切にし、変わりゆくものを意固地に否定せずに受け入れ、時には変化を求め、時には変化を嘆き、そうして人は生きていくのだろう。そうやって相変わらず生きていこう。

いつもの自販機でいつものコーヒーを買っていつもと違って当たりが出た日、そんな諸行無常を想った朝でありました。

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