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ゴミ捨て場のメロス

家から駅に向かう道すがら、近所のゴミ収集場所に文庫本が何冊か捨てられて残っているのを見た。紙ゴミの日は木曜日のはずだ。ゴミの収集日を守らずに出す人はいるものだなと思いつつふと見ると、文庫本の山の一番上にあったのは『走れメロス』だった。何だよ太宰を読むような教養のある人はゴミの日ぐらい守る人であってくれよと、脳内で悪態をつきながらゴミ捨て場を横目に通り過ぎた。

ややあって、これも俺の勝手な思い込み、偏見だよなと思い直すなどした。太宰を読む=教養があるというわけではないし、教養がある=ゴミの日を守るでもない。○○な人は○○であるはずだみたいな固定観念、自分はあまりない方だと思っていたが、自分にもそれなりにあるようだ。いかんいかんと反省をしながら駅への道を歩いた。

そういえば昔、『猫好きの人に悪い人はいない!』と言っていた人がいたのを思い出した。猫好き=悪い人はいない…という方程式に対して俺が思ったのは、そんなわけねぇだろ!だった。そりゃそうだ。そんな無茶な論法がまかり通るわけがない。とすると、太宰を読んでる=(教養がある=)ゴミの日を守る、だなんて方程式だって正しいはずかないのだ(そもそも『走れメロス』を捨てたのがそれを読んだ人だとも限らない)。こういう固定観念は捨てられるといいなぁ。思考はぐるぐると巡っていった。

男だから、おじさんだから、歳上だから、先輩だから、芸人だから、役者だから、リーダーだから、ベテランだから、彼女がいるから、○○だからこうであるはずだ、こうあるべきだ……なるべく先入観なくフラットにありたいものですね。ゴミ捨て場の走れメロスに思った朝でありました。

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