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ハンサム

すっかり暖かくなってきて、昨日は久しぶりに半袖で出掛けた。そう言えば『ハンサム』という言葉が『半袖』に由来するのを知っているだろうか?英語だと思っている人が多いかも知れないが、実は『ハンサム』は和製語なのである。

小学生だった頃を思い出して欲しい。真冬でも、雨が降ろうと雪が降ろうとも、頑なに半袖半ズボンで過ごしていた男子がいなかったろうか?どれだけ寒くても半袖半ズボンで過ごすことがかっこいいとされた時代。『半袖(半ズボン)でも寒がらない』から『ハンサム』と呼ばれるようになったのだ。どうやら大正時代、新聞に掲載された健康増進のための広告で使われた、『子どもは風の子げんきな子、半そで半パン寒くない』という標語から広まったようだ(諸説ある)。

半袖ではなく半纏(はんてん)に由来するのだという説もある。江戸時代、特に18世紀頃から庶民の間で広く着られるようになった半纏。特に職人たちの間では作業着として定着した。半纏が定着していく中、当時の職人たちの間では仕事中以外でも半纏のまま出掛けるのが粋だという風潮が生まれた。防寒着としてはあわせに綿を入れた『綿入れ襦袢』があるが、真冬でもそんなものは着ずに半纏のまま遊びに出る。半纏でも寒がらず、転じてハンサム、というわけだ。江戸後期の狂歌では『半寒(はんさむ、はんざむ)』という言葉が用いられているものがいくつか残っているが、江戸の一部地域でのみ使われていた言葉ではあるようだ。

元々は半袖(半纏)でも寒がらないという、行動に由来するかっこよさ、粋っぷりを表す言葉だったはずの『ハンサム』が、いつしか外見や見た目のかっこよさを表す言葉になっているのはなかなかに興味深い。真冬でも薄着でいるなんてのも、今ではおかしな人だと扱われてしまうだけで、かっこいいだなんて思う人は誰もいないだろう。価値観は変わっていくもの、言葉のニュアンスも時代とともに変化していくもの、でも時にはこうやって、言葉の本来の語源に立ち返ってみるのも悪くないかもしれませんね。

という嘘を思いつきました。

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