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俺とユキコの奇妙な関係

ラブホのベッドで、2人とも素っ裸のまま寝転がって天井を見上げながら、何気ない世間話をする時間が好きだった。ユキコは大抵彼氏の愚痴を話し、俺はそれにうんうんと相槌を打って、時々自分の遠距離恋愛の寂しさを零した。俺たちはこんな関係になってもうすぐ2年になる。

もともとどういうきっかけで始まったんだったろう。もはやイマイチ覚えていない。ユキコとは仕事関係の薄い知り合いで、何でもない話の流れで飲みに行くことになったのが、確かちゃんと話したのも初めてだったはずだ。飲みながら話をしているうちに意気投合して、その日のうちにそういう関係になった。そういう関係になるくらいにはお互いに好意もあったが、それは恋愛感情というよりは友情や仲間意識に近いような好意で、俺たちはお互い恋人もいるまま、所謂セカンドパートナーというやつになった。

ユキコの彼氏は仕事が忙しく、月に1度会えるか会えないか。俺の彼女も仕事の都合で地方に転勤して半年、これまた月に1度会えるか会えないかというところだった。似たような境遇が響きあったのかもしれないが、もうそんなことはどうでもいい。とにかく俺たちはひょんな巡り合わせで出会って、不思議な縁で奇妙な関係に収まった。たぶん普通に恋人関係になっていたら、こんな風に2年も続かなかっただろう。そんな話もよくする。この出会いは必然で、こんな関係になったのも、大袈裟に言うならば『運命』だったのだろう。

ユキコとは本当に色々な話をした。恋愛の話だけじゃない、もっとくだらない話もだ。進撃の巨人の考察ついてひたすら語られたり、子供の頃よく行った公園にあった遊具の話をしたこともあった。コーヒーの美味しさがよく分からない。買ってきたサボテンが枯れてしまってとても悲しい。実家の猫がいかにアホであるか。靴を買い替えたいけどいい感じに気に入る靴が見つからない。ネットで買い物をしたら思っていたのと違うやつが届いて腹が立った……。こうやって羅列するのも馬鹿馬鹿しいくらい、本当に何でもないくだらない話だ。でも俺はこの時間が何よりも好きだったし、話の途中でどちらかがふんわりと寝落ちてしまうのも、いきなり前触れもなく唐突にセックスが始まってしまうことがあるのも好きだった。

ラブホのベッドで、2人とも素っ裸のまま寝転がって天井を見上げながら、いつかこの関係も終わってしまうのかなぁという話をした。どちらかが結婚することになったり、そうじゃなくても恋人ともう少し頻繁に会えるようになったりしたら多分終わるだろうねとユキコは言った。恋人にバレるなんてこともあるかもねと俺は言った。いやいやそれはないでしょ、私たちはその辺はうまくやるもんと言ってユキコは笑った。そうだねと言って俺も笑った。あぁ、この関係がずっと終わらずに続けばいいのに!俺はそう思った。少し黙ってしまった俺の顔を覗き込んでユキコは、「この関係がずっと終わらずに続けばいいのにね」と言った。俺はユキコの顔を見て、なんて美しい人なんだろうと思った。もしかしたら、この感情が愛というやつなのかもしれない。

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