「いちばん大きな世界を描く」
ラクガキは、
いちばん大きな世界を描くための、
いちばん小さな絵。
――寄藤文平
(日本のアートディレクター・グラフィックデザイナー・イラストレーター)
最近、いつ、ラクガキをしましたか? それは、どこに?
ラクガキといえば教科書でしょう!
とはいうものの、ラクガキは主に授業中に実施されるアクティビティ(笑)なので、自宅学習が続く現在、これまでになくきれいな教科書の状態が維持されているのかもしれません。
でも、考えてみれば不思議なことです。ラクガキしてはいけない時に、ラクガキしてはいけない場所なら、ラクガキはこの上なくはかどるというのに、どうして、家ではラクガキする気にならないのでしょう。どうして、白い紙にラクガキする気にならないのでしょう。
白い紙は、何かを待っている感じがします。意味のあるもの、価値のあるもので埋めてくれるのを待っているような。
それは錯覚だよ、と言っても、真っ白な紙の上にラクガキをするのは気が引けるものです。
先日、次男の図工の課題を一緒にやりました。と言っても、一緒に何かを作ったわけではありません。僕も画用紙を一枚用意して、同じ課題に取り組んだのです。それは、「謎の生き物を描こう」という課題でした。
やりかたは、こうです。
① 真っ白な画用紙の上に、30秒間、ぐちゃぐちゃの線を鉛筆で引く。
② ぐちゃぐちゃの線の中から、生き物に見える部分を探し、その形の部分をペンでなぞる。
③ 消しゴムで鉛筆の線を消し、色を塗って「謎の生き物」を完成させる。名前も付ける。
(小3向けの課題なので、実際にはもっと易しい言葉で説明されています。)
真っ白な画用紙を与えられて、「さあ、謎の生き物を描きなさい!」というのは無理でも、このやり方なら、誰でも「謎の生き物」を作れてしまいます。そして、なにより、楽しい! 絵を描くことが、白紙から何かを生み出すことだと思い込んでいた頭を、ガツンと殴られた感じがしました。
「いちばん大きな世界を描く」のは、きっととても難しいことです。ですが、今のアプローチを思い出してください。ぐちゃぐちゃとラクガキをしていって、結果的にそこに現れたものの中に「いちばん大きな世界」を見つけることは、難しくはありません。というか、ラクガキしたものを指差して、「これがいちばん大きな世界だあっ!」と言ってしまえばいいのです。
そうです。何かを目指して描くのでなく、手を自由に動かす。何のため、とか言わない。ただ手を動かす。それがラクガキというものです。
そんな時間が、一日の中に数分、あってもいいんじゃないかな。
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