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「へんな音がす」

不思議なり千の音符のただ一つ弾きちがへてもへんな音がす
――奥村晃作
(日本の歌人)

今日の短歌に詠まれているのは、ピアノでしょうかヴァイオリンでしょうか。
「千の音符」という言葉から、旋律楽器であるヴァイオリンよりも、ハーモニーも奏でられるピアノをイメージした人の方が多そうです。

では、ピアノの演奏を想像してください。
膨大な数の音符が奏でられる中、一つの音を弾き間違えた――
それだけで、「へんな音」がする、というのです。
どうでしょうか。
「そんなの、気づくはずがない」と感じましたか?
それとも、「当然のことだろう」と思いました?

世の中のものは、色々なパーツの組み合わせでできています。
みなさんが今いじっている、タブレットやスマホにしてからが、そうです。
機械そのものも、その中で走っているプログラムも、どれもこれもが「千の音符」で出来上がっている。
そして、そこに「弾きちがへ」が入りこむだけで、機械やプログラムが動かなくなったりする。
だからこそ、「へんな音」が聞こえることは、実は、とても大切なことだったりします。
熟練のプログラマーは、ソースコードを見ただけで、なんとなく「へんな音」が聞こえたりするそうです。
(実際には、そこから「ただ一つ」の「弾きちがへ」を探すのが大変なのだそう。)

違和感のない当たり前の現実を、僕たちはとかく聞き流しがちです。
それでは、「へんな音」が入りこんだことに気付かないかもしれません。
今、正しく奏でられている「千の音符」を、しっかり聞くようにすること。
どうでしょう、美しいハーモニーが聞こえてきましたか?
それとも、もう既に「へんな音」が混じってる?

でも、実はこの話、少しだけ嘘が混じっています。
「へんな音が」しない「弾きちがへ」方というのがあるんです。
ハーモニーやメロディとの関係で、「弾きちがへ」に聞こえない音があるんです。
そうです。
音楽の仕組みを理解すれば、楽譜通りでなくても、美しい音楽を生み出せる。
間違いを恐れずに演奏することも、自分だけのアドリブを奏でることもできる。
さあ、あなたはどちらの演奏スタイルで、人生という組曲を奏でますか。
練習に練習を重ねて、正確無比なスタイルで?
それとも、仕組みを学んで、大胆さと自由さを追求するスタイルで?

Photo by Divyadarshi Acharya on Unsplash

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