見出し画像

「未読の蔵書ほど大事なものはない。」

未読の蔵書ほど大事なものはない。
――ジョン・ウォーターズ
(アメリカの映画監督・脚本家)
積ん読――買ってきた本をほかのまだ読んでいない本といっしょに、読まずに積んでおくこと。
『翻訳できない世界のことば』創元社

「積ん読」という日本にしかない言葉に、明快な説明と素敵なイラストを添えて、世界に紹介してくれたのは、エラ・フランシス・サンダースさんでした。
今日の名言は、この言葉に少し似ています。

もちろん、家にある本を読むな、と言いたいわけではありません。
これは、この世に無数に存在する「まだ読んでいない本」についての言葉です。

思い出話を少し――。
残念ながら、初めて図書館に行った時の記憶は残っていませんが、初めて〈本の街〉神保町に行った時のことは、はっきり覚えています。
中学一年の一月、戦利品のお年玉を手に……いや、カツアゲを警戒してあちこちのポケットに分けて隠し、田園都市線から、いざ地下世界=半蔵門線へ。神保町駅の表示を目に、友人の導きでさびれた路地裏を抜けつつ、たどり着いたのは書泉グランデ。地上七階建てのビルを見上げつつ、店舗に足を踏み入れると、その瞬間から驚きの連続だった。近所の本屋では絶対にお目にかかれない、マニアックな書籍の数々。雑誌でしか見たことのない、噂にしか聞いたことのないお宝が、山のように……いや、当たり前のようにそこに鎮座していたのだ!

こほん。
取り乱しました。
似たような経験は、その後、何度かありますが、この時と同じくらいの興奮を覚えたのは、大学図書館の地下に足を踏み入れた時ぐらいでしょうか。
大量の雑誌資料、それも文学史でしか目にしたことがない雑誌たちが、閲覧可能な状態で並んでいたのです。たとえて言うなら「歴史上の偉人たちとの再会」――なんて、少し言い過ぎかもしれませんが、当時の僕の驚きはそのぐらいすごいものでした。

いずれの場合も、不思議です。
そこにある本を、全て手に入れられるわけじゃない。全て読めるわけでもない。
それなのに、そこに本があるというそれだけで、僕の世界は広がったのです。
どうしてでしょう。
読んでいない本には、「まだ知らないと認識していること(Known Unknowns)」が書かれています。
そして、僕たちにとって恐れなくてはならないのは、知らなくてはならないのに、「知らないことすら認識していないこと(Unknown Unknowns)」です。「知らないこと」を知らなければ、それを知ろうとすることはできません。
読んでいない本に出合う瞬間というのは、Unknown UnknownsがKnown Unknownsに変わる瞬間でもあるのです。

「ドラクエ」で初めて船を手に入れた時、「FF」で初めて飛空艇を手に入れた時、その世界に広がる「未知」の存在に興奮しました。船や飛空艇を手に入れて、ゲームをやめた人はいないでしょう? だとすれば、次にやることは分かっていますよね。
「未読の蔵書」を増やす近道は、「既読の蔵書」を増やすことです。
冒険することでしか、未知は広がっていきません。
さあ、学びの手を休めないで!

Photo by Dustin Tramel on Unsplash

この記事が参加している募集

オープン学級通信

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?