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「子の部屋を夜に覗けば」

子の部屋を夜に覗けば腰までもパソコン画面に呑まれてをりぬ
――藤原建一

みなさんは、この短歌を読んで、どう感じましたか。
もちろん、「パソコン」の部分は、iPadやスマホに置き換えてもいいですよ。
「俺じゃんw」
「腰なんて、まだまだ甘いwww」
という人が多いのでしょうか。
それとも、自分の姿を客観的にイメージして、ドキッとした人もいるでしょうか。

深夜、そっと覗いた子ども部屋。
画面からあふれる光が、ベッドの上に寝転がった子どもの上半身を飲み込んでいる。
残されたのは、薄暗がりに横たわる両足だけ。
いやいや。
この歌をそのまま、
「親の部屋を夜に覗けば……」
に置き換えてしまえる、という経験をした人も少なくないかもしれませんね。
大人だって、光る画面の向こうにしっかり「呑まれて」しまっています。

脳味噌にパソコンが繋がっていればなあ、なんて考えたこと、ありませんか?
実際のところ、僕たちの頭の一部は、パソコン(ネット)の中にあります。
検索窓に二、三文字打ち込んだだけで、調べようと思っていた言葉が表示される。
YouTube動画を見ると、自分が好きそうな動画が「次の動画」に並ぶ。
ネットは、僕たちの行動を先回りして、手を引張ってくる。
どんどん引きずられていって、一時間だけのつもりが、二時間、三時間とネットの海をさまよっていた、なんて、よくある話です。
何しろ、僕たちの〈頭=意志〉と〈胸=心〉は、とっくのとうに「呑まれて」しまっているのですから。

背筋に冷たいものを感じてしまったという人――
どうやら、今のところ、腰から下はディスプレイの光の影響下にはないようです。
だとしたら、ネットの世界は放っておいて、足を使って外に出てみませんか。
今はまだ、遠くまで行けないとしても、ひとまず、画面の光の届かないところへ。

Photo by Rishabh Agarwal on Unsplash

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