見出し画像

「アートは世界でいちばん強い貨幣だ」

アートは世界でいちばん強い貨幣だと思う。
金よりもずっとね。

――ダミアン・ハースト
(イギリスの現代美術家)

おはようございます。
まだ意識がはっきりしていない人は、次の一文で目を覚ましましょう。

ダミアン・ハーストは、「その作品《神の愛のために》が2007年に日本円にして38億という当時の美術のオークションで史上最高額を記録したことで知られる」
(「現代アート:ダミアン・ハーストの「死」と「経済」の作品世界」)

驚くほどの落札額や、死を直接扱った作品群から、何かとスキャンダラスな形で取り上げられがちなハーストですが、彼のこの言葉は、みなさんにはどのように見えるのでしょう。
「そんなに高く売れるなら、そらそうでしょ。でも、そんな高値がつくアートなんて、ごく一部だけだよ。少なくとも、僕には関係ない話だね」
「アートには、金に換えられない価値があるはずだ。見る人を幸せにしてくれたり、深く考えさせてくれたり、さ。アートが貨幣だなんて、恥知らずだよ」
確かに、一理ある気がします。

貨幣が何であるか、というのは、なかなかに複雑な問いなのですが、あえて単純化してみましょう。
――貨幣は「価値の尺度」であり、同時に「交換の材料」でもある。
100円の商品には「100円の価値」がありますし、それは「100円」という貨幣との交換で手に入れることができます。
そして、この世の様々な活動が、この「価値づけ」と「交換」によって成り立っています。つまり、価値をやり取りするコミュニケーションの中心軸として存在しているのが貨幣、ということになります。

では、アートとは一体、何でしょうか。
アートを絵画や彫刻だと考えている人は、その見方をアップデートしてもらう必要があります。アートは、芸術作品を指す言葉ではありません。それは、何かを生み出す活動であり、その活動の成果であり、その成果をめぐる人々や社会の動きです。
それは、個人や集団が作り出す価値そのものと言うことができます。

これまで、人の動きには貨幣が強くかかわってきました。人を集めたり動かしたりするには、必ずお金が必要でした。何かを作って広めようとすれば、必ずお金の問題がついてまわりました。
ところが、近年ではこの状況が変わりつつあります。人を動かすのに、必ずしもお金は必要ありません。そこに可能性と情熱があれば、人は集まります。モノもそうです。アイディアと情熱があれば、お金の方が集まってくるのです。そして、そのような可能性・アイディア・情熱を形にしたものを、僕たちはアートと呼んでいます。
今、コミュニケーションの中心にあるのはアートであって、お金ではないのです。

そして、そのことによって、社会を動かす中心軸が大きく変わってきています。
貨幣だけが人とモノと社会を動かす中心軸だった時代、そこには大人だけしかいませんでした。子どもには、お金がなかったからです。ところが、アートは大人だけのものではありません。子どもでも学生でも、自らの生み出したアートを発信していくことで、人とモノと社会を動かすことができるのです。

なんて、すごく大きな話に聞こえるかもしれませんが、お金が可能にしてくれることが小さなことから大きなことまで、様々であるのと同じように、アートが可能にしてくれることも、本当に色々です。自分の周りを笑顔にしてくれたり、ちょっとした達成感を形にしてくれたり、アイディア次第でアートは足元の日常を楽しいものにしてくれます。
さあ、恐れず身構えず、日々の暮らしの中に、価値を作り出す活動を織り込んでみませんか。

Photo by Tyler Nix on Unsplash

この記事が参加している募集

オープン学級通信

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?