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【詩】時間の果実

秋分に奈良の明日香村を自転車で走った
田園 彼岸花 山 空
遮るもののない景色を見るたびに 深呼吸した目が澄んでいく

奈良文化財研究所飛鳥資料館で七世紀に考案された水時計 漏刻(ろうこく)の模型を見た
スイッチを押すと 光で表現された水の流れが時を刻みはじめる
一日を一分間に凝縮
ゴーン と節目で鐘の音が響く

 枝葉から芽が出るように 
 時間の果実が実っていった

キトラ古墳では古墳の作り方の映像を見た
呆気にとられたのが 古墳の土を固める方法だった
版築(はんちく)と呼ばれるそれは 棒を持ってひたすら土を叩くという まさにSimple is the Bestの極み
なんだそりゃ と突っ込みを入れていたが この時代は全てが人力なのだ
いったいどれだけの時間を費やしたのか
分刻みで時間が可視化されている現代ではとてもかなわない工法だ

 ふくふく 
 と時間の果実がふくらんでいった

今と比べれば無いもののほうが多かった
その分だけ時間に内包されているものがあったのだろう

 明日香村で自分の中に実った時間の果実を齧ってみた
 秋の彩り豊かな味が体に染み渡っていった

(2024.9.23月 奈良 明日香村)

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