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算数の授業にカードはいかが?

題名を見た時、とにかく
「カード・・・?」という疑問符が浮かび上がってきました。
ポケモンカードのカードです。本書を読むと、本当にカードを使っています。筆者の樋口万太郎先生への誤解を生まないように、先に言っておきます。


カードは、子どもたちが獲得してきた数学的な見方・考え方を記録および蓄積をしていき、日々の学習で活用していくもの


安易にヒントカードと間違えられてしまっては、申し訳ないので最初にお伝えしました。ここが本書の根幹ですから。
真新しいからカードを使えばいいだろ、という感じではございません。先行実践へのリスペクトと、日々の実践で葛藤し続けた樋口先生が編み出した、現段階の最適解です。どうやら、このカード実践の研究は現在進行形で続いているようです。これから、成果などのデータをとっていくのだと思いますが、読みながら

  • たしかに、これなら「数学的な見方・考え方」を確実に活かして、授業デザインができるかも!

  • 継続して行うものなので、確実に力がつきそう

と感じることができる1冊でした。
興味深いのが、いろいろなところで出回っている教育実践は、本当に資質・能力の獲得につながっているのか、深い学びへと導く学習デザインとなっているのかを投げかけているところです。とても共感しました。これまでの実践、現在行われている実践を否定するものではありません。
ですが、学習指導要領に示されている資質・能力、見方・考え方を踏まえている実践が自分自身できているのかを振り返るいい機会になりました。樋口先生、ありがとうございました。

以下、私の印象に残った学びです。

子供たちの主体的な学びを促す

最初からすべてを教えるのではなく、子供たちが自ら学習活動に取り組み、その活動に意味を付けていくことが大切です。例えば、「3, 6, 9, 12と見つけたでしょ?これを3の倍数と言います。」というように、子供たち自らがその概念に気づくことを促します。

2つの理解

「道具的理解」とは、計算の手順を理解することです。例えば、「20×4」は「20の0を取って2にする。次に2×4をして8。最後に8に0をつけると80になる」というように説明することです。しかし、これだけではなぜそのような手順を行うのか理解できません。これに対して、「関係的理解」は、計算の概念を理解することです。例えば、「20×4=10×(2×4)。20は10が2つで、2×4は8。つまり、10が8個だから80になる」と説明することで、計算の仕組みも理解できるようになります。

概念的知識と手続き的知識

「概念的知識」は教科書の吹き出しに書いてあることが多く、子供たちは答えを出すことに夢中になります。しかし、「この2ページで大事なことは何か」「この単元で大切にしていきたいことを見つけよう」という仕掛けをすることで、子供たちが自然と概念的知識へとつながっていきます。

筆者の主張は、新たな知識を獲得することもありますが、現在獲得している知識をよりアップデートしていく感覚です。この感覚を育むために、カード実践が有効です。

具体的な実践例

例えば、5年生の速さの学習で「キハジの法則」を使うことが多いですが、本来であれば「1時間あたり」「1キロあたり」など、1あたりで考えることができる単元です。特別新しく覚えることはなく、カード実践で有効なカードを使うことで、新しい単元に出会っても問題を解くことができます。

また、「12÷6=2」「12万÷6=2万」「1.2÷6=0.2」といった問題では、3年生で学習した割り算の基本を活用しながら新しい知識に転移させることが可能です。

子供たちの主体性を育むために

子供たちが自ら目当てを作り、その後に振り返りを書くことが重要です。振り返りにはPadletを使用し、これにより、子供たちはより具体的に自分の学びを振り返ることができます。

教師は授業中に動き回り、子供たちの学びをサポートします。前に立ちっぱなしや座りっぱなしは避け、常に子供たちと対話し、学びを深めるためのフィードバックを与えることが理想です。

最後に

本日も読んでいただき、ありがとうございます。本当に久しぶりの「授業!」という感じの本でした。ここ最近は自己啓発ばかりだったので、自分の本分を思い出しました。

結局のところ、私たちの実践のベースは何かを考えることなしに、いい、悪いの判断はできません。

  • 先輩がやっていたから→他人の教育観ベース

  • ある学習スタイルの目的化→学習スタイルベース

  • 子どもの主体性を活かす→子どもベース

どれがいいかどうかではありません。単元の中で、あるいは長い目で
「今日はガイダンスだから、話すのが多くなるかもな」
「次の時間からは、子どもが獲得したことを活かした学習展開に移れるといいから、自由進度学習にしよう」
「そろそろまとめだな。パフォーマンス型課題を与えたら、単元でどのように学んできたかを見とれるかな。」
思考錯誤しながら、そのときに合った方法を選べばいいと思います。ただ、目指したいのは資質・能力の育成であり、その通過点で、各教科の見方・考え方を活かすという視点は忘れてはなりません。

ある学習スタイルや方法、実践を真似するだけでは惜しいです。もう一歩、意識を上げて、教材研究をがんばりたいと思います。

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