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アラスカの秋

アラスカの秋は、美しい。遠くへどこまでもうねって地の果てまで進んで行く丘から、広い青空に向かって燃え上がる黄金の白樺の森。いつものオーロラの観測所へ登る道の両側を花壇のように飾るのは、赤く染まった背の低い草木、食べられるはずのブルーベリー、食べられるかは不明なきのこ。人間など構わず道路に立つのはムースの親子。涼しく優しい風。流れる川の豊かさ。夜になれば、風のない湖に反射する静かなオーロラ。

さらに手付かずの大自然だという国立公園のデナリが、それは素晴らしいものだとは聞いていた。だけれど、デナリへ行ってみよう、という発想は今まで無かった。冬の美しさばかりを楽しんで満足していたから。そんな自分でも、秋のアラスカに目と心を開いて歩けば、それは確かに、デナリにも行ってみたい、やはり人生感の変わる場所だろう、ということが肌でわかる。

冬に動けなくなって死にかけてから約半年が過ぎて、とうとう本当に、カナダとアラスカに観測に行っても大丈夫だった、という感動もあった。

人生は短い。人の悩みなんて、アラスカの大自然の中にいては、本当にちっぽけなものだ、とわかる。これはトオルさんの言葉。

アラスカのフェアバンクスは、四半世紀前から何度も滞在した懐かしい場所だけれど、変わらないところのほうが多かった。アラスカで一番美味しいのはタイ料理という噂も昔からある。もちろん今回もタイ料理には、お世話になった。モルドバ料理のsobaというレストランは、初めて立ち寄ったが、日本人は落ち着く味で、とても良かった。そんな小さな発見も嬉しかった。

eSIMを、アプリを、すぐに使うか使わないかで、空港では大きな格差がある。必須とも言える。端末で自分でタグを発行して、大荷物を預けて、ということも、ほぼセルフでできる時代になってしまったので。

JALの国際線は、とても良かった。完食できる機内食、サービスも安心で、楽に過ごせる。そういえば、空港ではペットボトルの水が5ドルだったのに対し、ダウンタウンに近いコストコでは水が25セントで、そのギャップには驚いた。今回の旅行では、水筒があると大変な節約になることを知った。日本のようにコンビニはないが、給水ポイントは結構ある。それから、買い物やレストランでは、やはり頭のなかでドルを円に換算しては、迷いが生じていけない。

そう。今回は、本当に円安や物価高の影響もあり、アラスカでは自分でレンタカーを借りる予算がないほどの貧乏旅行となってしまった。足がないことが逆に、滞在を充実させることとなったのは、ある人のおかげといえる。

その人は、アラスカ大学で働く八重樫さん。オーロラ研究の弟子でもある。我々の東大チームも、jaxaのチームも、あらゆる面で完璧にサポートして頂いた。初アラスカだったjaxaチームも、とても安心したと思う。車を出してもらい、職場のツアーまでしてもらった。お礼になるといいのだが、youtube番組の出演をさせて頂いた。そのうち紹介します。

アラスカで合流したjaxaの研究者たちには、最後には早朝に空港まで送ってもらったり、とてもお世話になった。日本ではお互いが忙しくて事前の雑談が不足していたというか、モルドバ料理でリラックスして雑談していたときに、ほとんどファミリーのような繋がりがあったことを知った。世界は狭い。

非日常の、天国の話はここまで。


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