価値観1
先日久しぶりにファミレスへ行った。
値段も安いしドリンクバーもあり時間を潰すには絶好の場所だと思う。
ファミレスと言えば思い出す出来事があるので書いていく。
価値観1
まだ20代半ばの頃、ミキという女性とお付き合いしていた。
容姿は上の中で街を歩けば必ず声をかけられるレベル。
ただ当時は彼女の容姿よりも性格に惹かれてお付き合いをしていた。
彼女にはまず物欲が無い。
持っているバッグはショッピングモールで買った数千円のバッグ。
身に着けている時計も数千円の時計など必要最低限。
だからといってケチなのではなく数十万のバッグも時計も持っている。
必要な場面ではしっかりとした物を持ってくるタイプだ。
次に人を職業や収入、見た目などで判断しない。
(だから私とも2年ほど続いていた)
そして人の悪口を言わない。
彼女の中にも苦手な人や嫌いな人は当然存在しているが、悪口を言って蔑むことは絶対になかった。
そんな彼女とも人生のパートナーとしては少し違うなと互いに思い友人関係へと戻った。
ミキと別れてから1年くらいたった頃、ミキから携帯に連絡があった。
「やっほー久しぶり、元気?」
電話口での開口一番「やっほー」がミキの口癖だった。
「お~久しぶり、元気だよ。ミキは?」
「私も相変わらずだよ」
「急に連絡してきてどうしたの?」
そう問いかける私の顔を電話口の向こうから覗き込むようにミキが言う。
「元彼の誼で相談事があるんだけど」
たぶん電話口の向こうで手を合わせているだろう。
「お金の事と元鞘に戻る事以外なら相談に乗るけど?」
笑いながら答える私の声に負けないように笑いながらミキも答える。
「違うよ~。タツヤの都合がいい時に〇〇町のファミレスで会おうよ」
翌週の私の休みの日に合わせてミキと久しぶりに会う事になった。
ファミレスに入るとミキが手を振っている。
久しぶりに見るミキは少し大人っぽくなって以前よりもキレイになっていた。
隣のボックスにいた2人組のサラリーマンが私を睨む。
まあ容姿だけ見れば私とミキは釣り合わないかもしれない。
日替わりランチとドリンクバーを頼み、とりあえずはコーラを注いで席に戻る。
「で、相談事って?」
ミキは飲み物を一口飲むと話を始めた。
私と別れてから気分を一新するため仕事も変えたらしい。
事務職だった仕事を辞め畑違いのアパレル関係の店員をしているという。
そこで知り合った男性から猛アプローチを受けて困っているとの事。
しかもその男性がかなりのハイスペック。
日本中誰もが知っているとまではいかないが、それに興味がある人なら誰でも知っている会社の御曹司。
30代前半で年収は3000万~4000万、家も今でいう億ションのような物件に住んでいるという。
そして当たり前だが次期社長だ。
「超優良物件じゃん!」
我が娘のように元カノの成功を喜んだ。
歓喜する私とは対照的にミキはヤレヤレという顔でグラスの飲み物をストローで飲み干す。
「いや、それが全然私のタイプじゃないの」
「しっかりとお断りしたんだけど、最後のチャンスをくれって言うからあと1回会わなきゃいけないんだ」
ミキはストローでグラスを掻き混ぜながら私のグラスも持ってドリンクバーへ向かう。
次はアイスティーを飲もうと思っていたが戻ってきたグラスには同じくコーラが注がれていた。
「この最後のチャンスってのが怖くてね」
最後のチャンスという言葉で昔ミキに聞いた話を思い出した。
頃合いを見計らったかのように私の前に日替わりランチが並ぶ。
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