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Apple Musicでビリー・ホリデイに胃が縮む。

最近は昔好きだった小説をいろいろ読みかえしていて、今は花村萬月さんのデビュー作『ゴッド・ブレイス物語』を読んでいます。若い頃から何度も読んだ小説だけど、今回はあらためて、じっくりじっくりじっくり、細部に渡るまで読みこんで楽しませてもらっています。

若く才能溢れた女性ブルース・ボーカリストが、バンドメンバーやはぐれヤクザ、夭折した天才ギタリストなんかのワケありの人々と織りなしていくアウトローでちょっと切ないエンタメ音楽小説の傑作なんだけど、作中には実在するミュージシャンや楽曲がたくさん出てくるんですね。

過去に読んだときにはあまり気にかけていなかったんだけど、今回は試しに「Apple Music」っていう定額制の音楽配信サービスでその都度検索してみたら、どの曲もけっこうあるんですよ!

ジャンゴ・ラインハルト、エルモア・ジェームスの『The Sky is Crying』とか、ビリー・ホリデイの『God bless the child』や『I'm a Fool to Want You』だとか、作中でポイントとなる曲や大事なシーンで使われている曲を、その場で検索してすぐに聴くことができる。

ちょうど最近、SONYがバキバキの解像度を誇るちょっとお高いモニターイヤホンを買ったところだったので、大音量で聴きながら読んでみたら、臨場感というか気持ちの昂ぶりのすごいことすごいこと。

とくにビリー・ホリデイの『I'm a Fool to Want You』は、歌声が流れてきた瞬間にぶわっと鳥肌が立ちましたね。

ちょっと抜粋しちゃおう。

”レディ・イン・サテン”は、ビリー・ホリデイが死ぬ一年ほど前に録音されたLPで、麻薬のせいで全盛期の魅力的な美声を失って、まるで老婆のように嗄れ、枯れはて、荒れはてた声が音溝に刻まれている。
 その荒廃ぶりは目を覆いたくなるほどのものだが、それにもかかわらず、凄まじいまでの表現力とにじみでる孤独に圧倒されてしまい、ブルーなときに聴くと胃が縮みあがり、涙がにじんでしまう。イシガミがこれを理想としたのもよくわかる。美しいだけではたどりつけぬ境地は確かにある。___『ゴッド・ブレイス物語』

ふつう文章でここまで賞賛されちゃうとハードルが上がっちゃうもんでしょう? でもこの曲は本当に、ブスリと刺さった!

亡くなる一年前ってことは四十三歳なのに、その声はたしかに老婆みたいで、けれど表現力は凄まじく、そして圧倒的に孤独が沁みてくる。すげー孤独。すげー寂しい。おっかねえ。たしかに、美しいだけではたどりつけぬ境地がある。

さて、まだ怒濤のクライマックスを読んでないので、これからどんなミュージシャンや楽曲が出てくるのか楽しみですねこりゃ。Apple Music検索けっこう使えるんだけど、どうですか?どうですかってなんだよ。

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