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腎細胞ガン療養記⑥:切るか、切らないか、それが問題だ…?

ガンの温熱療法をご存知だろうか。
「ガン細胞は、正常細胞よりも熱に弱い」という原理に基づいた治療法らしい。
簡単に言うと、熱でガン細胞を死滅させたり、免疫力を高めてガン細胞の増殖を抑える効果が見込めるということのようだ。

私が腎細胞ガンだとわかったとき、この温熱療法を勧めてくる友人が少なからずいた。
もちろん、みなが善意や心配からである。

腎細胞ガンは、進行自体は比較的ゆっくりとされている。
私も担当医から「なんならあと一年くらい、ほうっておいても大丈夫なレベル。まあ、そんなことはしませんけどね(笑)」と言われていた。

そんなこともあってか、

  • 今すぐ手術を受けずに、まずは温熱療法を試してみてはどうか?

  • せめて半年試してみては?ガンが小さくなるかもしれない。

  • もしガンが治れば切らずにすむのだから、やってみる価値があるのでは?  

…ということらしい。

自分がガンになる前は、そういう治療法もあるんだーくらいにしか思っていなかった。
しかし、いざ自分がガンになってみると、周りの善意の助言に対して、「ちょっと放っておいてほしい」と思ってしまった。

この類の助言のタチが悪いところは、なぜか「二者択一」で語られることだ。

そのため、シェークスピアの『ハムレット』に出てくる有名なセリフ “To be, or not to be, that is the question” 風な思考にさせられてしまうのだ。

「切るか、切らないか、それが問題だ」みたいな?

どちらが正解だろう?自分の選択は正しいんだろうか?といった、謎の圧迫感を感じることがたびたびあった。

善意や心配から言ってくれているのは、よく分かっているつもりだ。
それでも、その類の話をされるたびになんだか苦しかった。

シンプルに痛いのはイヤだし、仕事も休まないですむならそのほうが良い。
何より、キズあとが残らないなら、複雑な乙女(?)心も解消される。
(お時間が許せば、こちらもお読みください)


でも、効果がなかったら?
先延ばししている間に、ガンが大きくなったら?

たしかに、腎細胞ガンの進行は遅い。
腎細胞ガンは1センチ以下だと、腹部エコーにひっかからないという。
去年、異常なしだったということは、1センチ以下だったからだ。
そして、今は2.2センチになっている。
1年で確実に大きくなっているのだ。

特に腎細胞ガンは、進行するほどに予後が格段に悪くなる。
だからこそ、今回の早期発見はスーパースペシャルなことなのだ。

もし半年後まで先延ばしすれば、私の性格的に、どっちつかずの状態がストレスだろうな…と容易に想像がついた。

あとはたぶん、心配症の母が、心配しすぎて病む気がする(苦笑)

だから、私はかなり早い段階で「切る(手術をする)」を選択していた。
助言をくださる方にはお礼を言いつつ、丁重にお断りしてきた。

でも、助言されるたびに「切るか、切らないか、それが問題だ」という正解探しが再燃してしまう。
自分の選択は、本当に正しかったのだろうか?と。

そんな時、以下の記事にであった。ぜひご一読いただきたい。

『責任とるつもりがないなら、素人は黙っていてください』

なんと力強い言葉だろう。
うんうん、そうだよね…と何回も読み直してしまった。

こちらが求めたときに、助言やアドバイスをしてもらえるなら本当に助かると思う。
でも、求めていないときには、それらが負担になったり、心を乱すきっかけになったりすることもあると知ってほしい。

ガンになる前の自分自身の行動も反省しつつ、そんなことを考えた。

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