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自分が翻訳してきたゲーム

The English version:
https://note.com/ryu20230913/n/nd6c70cad9c29


2006~2015年

初めてゲーム翻訳の仕事を受けたのは2006年です。
当時はいろんな翻訳会社さんのトライアルに申し込んではことごとく落ちまくる、という日々でした。

しかしその内の一社さんが、ある大型プロジェクトで人手が足りなくなり、「この人ギリギリ不合格だったから声かけてみようか(後から聞いた話)」と連絡をくれました。

「このチャンスを逃すわけには!」と奮起した自分は全力を尽くして仕事に挑み、どうもその出来がそう悪くはなかったようで、同じ会社さんから次回の仕事の依頼も頂けました。

それがいわゆるキャリアの始まりで、その後8、9年くらいは、この翻訳会社さんを通してPS3/Xbox360時代のAAAタイトルを中心に翻訳に参加させてもらっていました。AAAはテキスト量が多いこともあり、一部分だけ担当したものが多いですが、なかには全体を訳させてもらったものもあります。

別に専属、というわけではなかったのですが、ひとつプロジェクトが終わると次はこれと、ありがたいことに途切れることなくひたすらこの会社さんから仕事を頂けたので、ひたすらそれをやり続けるという日々が続きました。

残念ながらこの会社さんのNDAの方針によりこの間の仕事はすべて言及不可なのですが(関わったものすべて数えると100タイトル以上はあると思う)、この期間に翻訳、レビュー、尺合わせ、音声収録立ち合いなど、ローカライズに関する工程を一通り経験できたことが現在の自分のスキルの土台となっており、この会社さんには今でもとても感謝しています。


Gone Home (2014)

担当: 翻訳 & LQA (有志翻訳)
クライアント: The Fullbright Company
リンク:
https://gonehome.com/

友人の翻訳者の武藤陽生(@Minstrel_Bird)さんと共訳。
テキストを半分くらいに分けて2人で翻訳し、続いて相手が翻訳した部分を互いにレビューをかけるというクロスチェック方式で進めました。

この頃はまだ上記した特定の会社さんの仕事を受け続けていた時期で、そんな中自分が初めて携わったインディーゲームでした(まだインディーゲームの存在自体がそこまで認知されていない頃だった)。自分がAAAからインディーへとシフトしていくキャリアの大きな転換点となった仕事で、開発者と直接やり取りして作業したのも初めての経験でした。

なぜ携わることになったのか等、翻訳におけるエピソードも山ほどある非常に思い出深い作品。武藤さんのYouTubeチャンネルで振り返り話をしているのでよかったらご覧ください。



Digital: A Love Story (2015)

担当: 全体翻訳 & LQA (有志翻訳)
クライアント: Christine Love
リンク:
https://scoutshonour.com/digital/jp.html

この時から遡ること4年ほど前、たまたま本作を知ってプレイしてえらく感動した自分は、いつかこの作品を訳してみたいと思っていました。そこで意を決して作者である Christine Love さんにメールを送り、許諾を得たことでローカライズが実現。フリーゲームなので、本作もまた有志での翻訳という形になりました。

またその作業中に今井晋さん(@shinimai)の主催するHotline Tokyoの集いで Chrisitine さん本人と会って話ができたり、LQA作業をHotline Tokyoのメンバーの皆さんが手伝ってくださったりと、今井さんを筆頭に人の縁に助けられたプロジェクトでした。

作品の本質について語ろうとするとネタバレにならざるを得ないため、詳しく語ることができない……という非常にもどかしい作品でもあるのですが、僕自身は稀有な傑作だと思っています。是非いろんな方に体験していただきたいです。今の時代に生きる人々にとって、この作品がプレイヤーに問いかけるメッセージは、当時よりもさらなる切実さを持って心に刺さってくるのではないかと思います。


Salt and Sanctuary (2016)

担当: 全体翻訳 & LQA
クライアント: 架け橋ゲームズ
リンク:
https://store.steampowered.com/app/283640/Salt_and_Sanctuary/

この後、長いお付き合いとなる架け橋ゲームズ(@kakehashigames)さんから初めて依頼された仕事ということで、こちらも思い出深い作品。

ダークファンタジーは好みのジャンルですが、ソルトシリーズでは英語にも存在しない造語が数多く使われており、シナリオを書いた James Silva(@Jamezila)さんに沢山質問しながら日本語でも造語に移し替えていく、という作業を行いました。

大変でしたが、最終的には比較的満足いくものになったと思います。とある有名ゲームのシナリオライターさんが翻訳をとても褒めてくれたのも嬉しかった。
あとゲームが日本で物凄く売れたので James さんが驚いていました。


Her Story (2016)

担当: 全体翻訳
クライアント: Playism (Active Gaming Media)
リンク:
https://store.steampowered.com/app/368370/Her_Story/

Playism(@playismJP)さんから依頼いただいたお仕事。UIテキストはごくわずかで、主な作業は実写映像に字幕をつけていく、というものだったのですが、本作は主人公がその映像の中で話している言葉をユーザーが検索することでゲームを進めていく、という構造になっているため、訳文にも各種キーワードが含まれるように気をつけながら翻訳していく必要がありました。

字幕という性質上、長すぎると読み切れなくなってしまうこともあり、文字数も意識しつつと、縛りがある中で言葉を選んでいった記憶があります。
LQAは担当していないのですが、翻訳時のものがほとんどそのまま残ったという印象です。


Brigador: Up-Armored Edition (2017)

担当: 全体翻訳 & LQA
クライアント: 架け橋ゲームズ
リンク:
https://store.steampowered.com/app/274500/_/

強烈な世界観を放つ怪作。インゲームテキストは少ないものの、とにかくロアが豊富でテキスト量も結構ありました。

開発チームとDiscordで繋がっていたので、彼らにとにかく質問をし、ガチミリタリーオタクである彼らの解説に耳を傾けながら咀嚼し、日本語に落とし込んでいきました。


Hollow Knight (2017)

担当: 全体翻訳 & LQA
クライアント: 架け橋ゲームズ
リンク:
https://store.steampowered.com/app/367520/Hollow_Knight/

ホロウナイトの翻訳はいろんな意味で大変で、苦労話やエピソードは山ほどあります。用語のネーミング方針なんかでは開発と結構やり合ってバチバチに緊張が高まったこともありましたが、架け橋ゲームズさんの強力なバックアップもあり、最終的には向こうも翻訳を非常に気に入ってくれたようなのでよかったです。作品作りにおいては互いに良くしようという気持ちが衝突を生んでしまうこともあり、そこを乗り越えたときに初めて生まれる信頼というものもあるのだと実感したタイトルでもあります。

全体的に捉えどころのない難解な台詞が多い作品ですが、これは原文でも同じで、以前にアメリカ人の翻訳者の友人と話した際に「よくHollow Knight 訳せたね。俺は英語でプレイしたけど全然意味わかんなかったよ!」と言われました。翻訳文は訳者の理解というフィルターを介すこともあり、日本語版のほうがむしろ意味は通りやすくなっているかもしれません。


Dead Cells (2017)

担当: 全体翻訳 & LQA
クライアント: 架け橋ゲームズ
リンク:
https://store.steampowered.com/app/588650/Dead_Cells/

とにかくゲームそのものが面白かった。主人公はわりとふざけていて、パロディ要素なども多く、世界観の統一といった点ではあまり気を遣わずに済んだ記憶があります(メタなネタが入ってきても問題なし、という世界観)

自分が担当したのはローンチ版と最初のDLCだけで、以降に配信されたDLCはすべて黒澤勇太(@blackstream001)さんが翻訳とLQAを担当されています。こういう場合どんな翻訳になっているか多少気になるものですが、黒澤さんは素晴らしい翻訳者なのでなにも心配せずに後を託せました。


Tacoma (2017)

担当: 翻訳 & LQA
クライアント: EDS WORDLAND Lt
リンク:
https://store.steampowered.com/app/343860/Tacoma/

Gone Home を開発した Fullbright の新作。前作からの縁もあって Fullbright の Steve Gaynor さんからご指名を受け、本作も武藤陽生さんと2人でローカライズを行いました。

Gone Home の時は武藤さんも自分も互いにエゴをぶつけ合って散々ケンカもしたのですが、Tacoma では2人ともその時の経験を踏まえて大人になったのか、かなりスムーズに進めることができました。

翻訳者が自分の正義を主張したらどうにもならない……これは共同作業における真理として学びました。


2064: Read Only Memories (2017)

担当: 全体翻訳
クライアント: Playism (Active Gaming Media)
リンク:
https://store.steampowered.com/app/330820/2064_Read_Only_Memories/

諸事情によりLQAがやれなかったのがやや心残りな作品。テキスト量も多かったし思い入れもある作品なのですが、実機確認を自分でやれていないとどうしても他の作品と比べて距離を感じてしまいます。

翻訳に関して言うと、主人公の性別が特定されていないため、口調がどちらの性別でも成立するように気をつけた記憶があります。本作の主人公は非常によく喋るのですが、実は「僕」「俺」「私」といった一人称は一度も使っていません、というか使えなかった。

キャラクターをつかむのが難しかったのはトムキャット。わりとすぐにつかめてすいすいと訳せたのがチューリングです。


The Red Strings Club (2018)

担当: 全体翻訳 & LQA
クライアント: 架け橋ゲームズ
リンク:
https://store.steampowered.com/app/589780/The_Red_Strings_Club/

翻訳代表作を1つあげるとしたら、今のところこれになるのかも、という作品。物語を書いた Jordi(@jordidepaco)さんの書くテキストはとても肌が合うというか、登場人物の台詞ひとつひとつにしっくりくる感じがあり、英文を読みながら日本語訳が降ってくるような感じでした。
訳す際になんとなく意識したのは押井守とレイモンド・チャンドラーです。

書き手との同期率が高ければ高いほど翻訳は易しくなる、というのが僕の実感ですが、そういう意味で Jordi さんは同期率が非常に高い書き手さんで、この後も彼の書く物語を4作品訳させてもらうことになりました。

ちなみにブランダイスとドノヴァンは Jordi さんが大好きなルパン三世の、ルパンと次元からイメージを得て創作したキャラクターだそうです。


Crossing Souls (2018)

担当: 全体翻訳 & LQA
クライアント: 架け橋ゲームズ
リンク:
https://store.steampowered.com/app/331690/Crossing_Souls/

元々はスペイン語のゲームで、それをどなたかが英訳したものを僕が日本語に訳す、という伝言ゲーム的な形での翻訳でした。しかしこの英訳の質が正直よろしくなくて……台詞もうまくつながっておらず、らちがあかず原文のスペイン語を調べて元々のニュアンスを確認したりと、なかなか苦労がありました。やはり翻訳はオリジナル言語から訳せるのが一番です。

ラストが非常に感動的な作品。


Pikuniku (2018)

担当: 全体翻訳 & LQA
クライアント: 架け橋ゲームズ
リンク:
https://store.steampowered.com/app/572890/Pikuniku/

架け橋ゲームズのザックさんから「龍の好みのタイプではないかもしれないけど…こんな作品どう?」と打診され、「いや実はこういうの好きなんだよ!」と引き受けさせてもらいました。

とぼけたブラックユーモアにはどこかMOTHERを彷彿させるところもあり、そのあたりも少し意識しつつ訳しました。訳しててとても楽しかった作品です。お気に入りは序盤に出てくるクモと後半に出てくるミミズ。


Budget Cuts (2019)

担当: 全体翻訳 & LQA & 音声収録立ち合い
クライアント: 架け橋ゲームズ
リンク:
https://store.playstation.com/ja-jp/product/UP5030-CUSA20553_00-7666010101337901

インディーでは珍しく音声吹き替え収録も行ったVRステルスゲーム(日本語音声は確かPlayStation版のみ収録)。あまり知られてないけど、これまたブラックなユーモアが効いた面白い作品です。

久しぶりに音声収録の立ち合いもして、声優さんの凄さを改めて実感できたのもよい経験でした。


Russian Subway Dogs (2019)

担当: 全体翻訳 & LQA
クライアント: 架け橋ゲームズ
リンク:
https://store.steampowered.com/app/762610/Russian_Subway_Dogs/

大きめの作品が続いていた中、架け橋さんがテキスト少ないけどどう?と打診してくださった作品。ワード数は数千ほどながら、キャラクターが個性的で、楽しんで翻訳できました。

また開発者さんがローカライズに関してもの凄く気がつくというか、理解がある方で、日本語のためにオリジナルのインゲームグラフィックを沢山作ってくれました。

英語から日本語に作り替えてくれたグラフィックテキスト

お陰で良いローカライズになったと思います。ゲーム性も面白く、小ぶりながら隠れた名作です。


Days Gone (2019)

担当: メインクエストの一部を翻訳 & 尺合わせ
クライアント: インピタス
リンク:
https://store.playstation.com/ja-jp/product/JP9000-CUSA09117_00-DAYSGONECOMPLETE

翻訳会社のインピタスさんからお話をいただき、翻訳チームの1人として参加させてもらいました。インディーをメインにやるようになってから尺合わせのある翻訳をほとんどやってなかったので、かつての勘を取り戻しながら進めていった感じです(しかもすべての台詞がリップシンク…)

ちょうど作業中はサッカーのワールドカップをやっていて、尺合わせの作業とワールドカップの記憶がなにやらセットになっています。
終えて、やっぱり吹き替えは大変だなーと思った記憶が。


Observation (2019)

担当: 全体翻訳 & LQA
クライアント: 架け橋ゲームズ
リンク:
https://store.steampowered.com/app/906100/Observation/

2001年宇宙の旅を思わせるような、雰囲気のあるSF作品。ローカライズにおいて一番気をつけたのは日本語にすることでUIがダサくならないように、ということ。UI自体が表現の一部になっていたので、翻訳としてはOKでもインターフェース上の言葉として見栄えが悪いものはボツにしたり、文字の長さを揃えたり、考えながらやりました。

リリース後に開発が「日本版のUIの見た目がクールだ」とTwitterに写真を載せて言及してくれたのは結構嬉しかったです。


Dark Devotion (2019)

担当: 全体翻訳 & LQA
クライアント: 架け橋ゲームズ
リンク:
https://store.steampowered.com/app/718590/Dark_Devotion/

ドット絵の2Dダークファンタジー。全体的に暗くシリアスな雰囲気なので、それを崩さないようにフォント選びや言葉遣いなどを意識してやりました。このあたりは自分の好きなジャンルではあります。


Half-Life: Alyx (2020)

担当: 全体翻訳 & LQA
クライアント: 架け橋ゲームズ
リンク:
https://store.steampowered.com/app/546560/HalfLife_Alyx/

全世界同時発売で、非常に機密性が高いプロジェクトだったためアメリカのValve本社にまで行って作業したこれまた思い出深い作品。しかも滞在中(2020年3月)にコロナが大流行し始め、これはひょっとしたら日本に帰れなくなるかもしれないという話になったりと、いろいろ緊張感がある中での仕事となりました。

実はプロジェクトの最中に一度「(出国が可能な今のうちに)日本に帰るか?」と訊かれたのですが、途中で放棄して帰るということが自分としては受け入れられず、残る選択をしました。その際に「もし日本に帰れなくなっても当面の生活費はValveで面倒見るから心配するな」と言っていただけたことは今でも印象に残っています。今聞くと大げさな、と感じられるかもしれませんが、当時は本当にこれから世の中がどうなっていくのかわからず、皆先の見えない状況下での判断を強いられていました。

オフィスにはドイツ語やフランス語など、各国のローカライザーが集結しており、彼らと情報交換しながらLQAを進めていったのも、それまでにないユニークな経験でした。リリースされた瞬間もオフィスにおり、現地のローカライズマネージャーと一緒にお祝いしたのも良い思い出です。

本作は吹き替えではなく字幕なのですが、Half-Lifeは伝統的にアクション性が高く、台詞ではなく画面上で起きている出来事そのもので物語を語る要素が強い作品なので、字幕を読んでいて画面上の動きを見逃すことがないように、字幕の長さにはかなり気を遣いました。基本的には激しい銃撃戦の最中でも読み切れる長さを意識し、原文のどのニュアンスを残してどこを削るか、この台詞において鍵となる情報とはなにかを精査しながらLQAを進めていきました。


Bare Knuckle IV / Streets of Rage IV (2020)

担当: 全体翻訳 & LQA
クライアント: 架け橋ゲームズ
リンク:
https://store.steampowered.com/app/985890/4/

メガドライブユーザーだった自分が「ベア・ナックル」の新作を翻訳することになり、人生の不思議を感じた作品。元々は日本で展開していたタイトルなので、本作の翻訳はある意味「海外に出て行ったものを本家の言葉に戻す」ような作業でもあり、通常のローカライズとはちょっと違う、不思議な感覚でした。

過去作で使われていた日本語表記を念入りに確認しつつ、シリーズのファンの方々が「ベア・ナックル」として違和感なく受け止められるものになるよう意識しました。


Haven (2020)

担当: 全体翻訳 & LQA
クライアント: 架け橋ゲームズ
リンク:
https://store.steampowered.com/app/983970/Haven/

プロジェクトが始まってから幾度か中断もあり、結果的に2年以上の期間付き合うこととなった作品。テキスト量もなかなか多く、そのほとんどが主人公であるケイとユウの会話なので、この2人とはなんだか随分長く一緒にいたような感覚があります。リアリティのある2人の会話が日本語でもそのまま伝わるように注力しました。


JETT: The Far Shore (2020)

担当: ダイアログ部分の翻訳
クライアント: ハチノヨン
リンク:
https://store.playstation.com/ja-jp/product/JP2390-PPSA01756_00-8430935359770657

なんとも不思議な世界観の作品。自分はキャラクターの会話部分の翻訳を担当させていただきました。

独自の用語なども多く、それを日本語でどう当てるかがなかなか難しかった記憶があります。


Starstruck 時をつなぐ手(2020)

担当: 全体翻訳 & LQA (体験版のみ)
クライアント: Createdellic, LLC
リンク:
https://store.steampowered.com/app/1297720/Starstruck_Prologue/

こちらはまだ開発中で、体験版のみの翻訳なのですが、個人的にとても期待しているタイトルです。

僕がMOTHER好きということを開発者のMaxさんが知り、連絡してきてくれたことで翻訳を担当することになりました。Maxさんはプログラマーとしてもとても優秀な方で、こちらが出す要望をなんでもすぐに叶えてくれるという、ローカライザーとしては非常になんというか拝みたくなるような存在です。本作では漢字の上にルビが振れる仕様なのですが、これもMaxさんに頼んでみたところ「できるよ」と2日くらいで実装してくれました。日本語版のクオリティにもの凄くこだわってくれていて、とても良い環境で仕事させてもらっています。

ちなみに本作では手書き文字によるインゲームグラフィックが登場するのですが、その手書きも担当しています。なかなかインゲームグラフィックまで関与できる機会は少ないので、そういった意味でもユニークな仕事でした。

英語版に使われたオリジナル画像
日本語版用に自分が手書きしたもの

音ゲーやらオブジェクト破壊パートやら探索パートやら、いろんな要素がごっちゃになっていてなんのゲームだかわかりづらいところがあるのか、まだ多くの人に知られていないのがとても残念です。体験版は本当に素晴らしい出来なので是非プレイしてみて欲しいです。


Eternal Home Floristry (2021)

担当: 全体翻訳 & LQA (有志翻訳)
クライアント: Deconstructeam
リンク:
https://deconstructeam.itch.io/eternal-home-floristry

The Red Strings Club を作った Deconstructeam の無料短編作品。プレイして「これは是非とも訳したい」と思い、Jordi さんに連絡して翻訳させてもらうことになりました。

ちょうど作業している頃に患者長ひっくさん(@hicchicc)が作成したフォントのマルモニカがリリースされ、「これはこの作品にぴったりだ」と早速使わせてもらったりも。

ローカライズ作業としては自分のPCで日本語ファイルのビルド実装ができるという神環境だったので、改行位置をとことん調整したりと、気が済むまで微調整をすることができました。とても短いですが、Deconstructeam らしい静かで美しい作品です。


Card Shark (2021)

担当: 全体翻訳 & LQA
クライアント: 架け橋ゲームズ
リンク:
https://store.steampowered.com/app/1371720/Card_Shark/

テキストが全体的に洗練されていて、訳し甲斐のある作品でした。伯爵も魅力的だしいろいろ好きなシーンはあるのですが、個人的には雪の中でユージーンとマクレガーが決闘した後に、マクレガーが「死体に話しても仕方ないか」と独り言のように語るシーンが好きです。

リリース後は主人公のユージーンが人気者になってファンアートが沢山描かれ、驚いた記憶があります。


Salt and Sacrifice (2022)

担当: 全体翻訳 & LQA
クライアント: 架け橋ゲームズ
リンク:
https://www.playstation.com/ja-jp/games/salt-and-sacrifice/

前作『ソルトアンドサンクチュアリ』に続き担当。Jamesさんのテキストのスタイルは前作でわかってはいたものの、本作も造語や意味深な台詞のオンパレードで翻訳はかなり大変でした。500近くの質問を投げ、ひとつひとつ詳細なニュアンスを確認しつつ日本語に移し替えていきました。

作中に出てくる Mage を魔導師ではなく魔導司と訳すことになったのも、Jamesさんとの会話が元になっています。あと炎の司、氷の司といった呼び名はゲド戦記を参考にしたり。このあたりのネーミングにはかなり頭を悩ませましたが、最終的にはなんとか納得できる表現にたどり着けました。


11.45 A Vivid Life (2022)

担当: 全体翻訳 & LQA (有志翻訳)
クライアント: Deconstructeam
リンク:
https://deconstructeam.itch.io/1145-a-vivid-life

これまた Deconstructeam の無料短編作品。「スペイン語追加することになったからビルドを更新する予定なんだけど、日本語も入れる?」と Jordi さんから連絡をもらい「もちろん」と引き受け実現。

なんとも不思議な話で、なにかに達観したような少女が主人公の話。少女の性格の描き方を間違えると単にグロくて凄惨な話にもなってしまうと感じたので、そのあたりのバランスに注意しながら、どこか乾いた感じが出るように言葉を選んでいきました。


Horizon Forbidden West (2022)

担当: ストーリーの3分の1ほどを翻訳 & 簡易尺合わせ
クライアント: SIE
リンク:
https://www.playstation.com/ja-jp/games/horizon-forbidden-west/

Days Goneに続きSIEさんの吹き替え作品。担当させてもらった量も多く、半年間くらいはこの仕事にかかりっきりとなりました。

台詞はすべてリップシンク。翻訳段階でおおよその精度でリップに合わせておき、それをSIEさん側でブラッシュアップして最終形にしていただくという形で進められました。訳してて楽しかったのは拠点でのアーロイと仲間たちとの会話。好きなキャラクターはエレンド。サイレンスも割と好き。

しかし吹き替えタイトルは終わるたびにへとへとになり、日常的にやられているSIEの皆さんは凄いなと思います。個人的に当時ある力を出し尽くした、印象深いタイトルのひとつです。


Ringlorn Saga (2023)

担当: 全体翻訳 & LQA
クライアント: Graverobber Foundation
リンク:
https://store.steampowered.com/app/2135990/Ringlorn_Saga/

たまたま開発者がソーシャルメディアを介した知り合いだったこともあり、「日本語翻訳者探してるんだったら誰か紹介するよ?」と声をかけたところ、なりゆきで自分が翻訳することに。

80年代のレトロゲームにインスパイアされた作品なので、テキストにおける言葉遣いなども当時のゲームのちょっと垢抜けない感じを意識して訳しました。


Horizon Call of the Mountain (2023)

担当: 全体翻訳 & 簡易尺合わせ
クライアント: SIE
リンク:
https://www.playstation.com/ja-jp/games/horizon-call-of-the-mountain/

『Forbidden West』に続くホライゾン。VR作品でテキスト量がそこまで多くなかったこともあって、翻訳全体を担当させていただきました。とはいえ、SIEさんによる厳密な校正と尺合わせが入っているので、自分の翻訳から変わっているところも多いですが。プレッシャーもありましたが光栄なお仕事でした。

好きな、というか気になるキャラクターはウーリッド。「え、何歳?」というインパクトのある見た目もさることながら、主役のレイアスより実は屈折していないというか、素直な性格のところなど。


The Cosmic Wheel Sisterhood (2023)

担当: 全体翻訳 & LQA
クライアント: 架け橋ゲームズ
リンク:
https://store.steampowered.com/app/1340480/The_Cosmic_Wheel_Sisterhood/

自分にとって今後も心に残り続けるであろう作品。1周のプレイ時間は6,7時間ながら、台詞差分がもの凄いがゆえにワード数は20万を超えるという、ボリュームたっぷりのプロジェクトでした(通常この長さの作品ならワード数は5万から多くても10万くらい)

作業期間はLQAも入れると8か月くらい。その間はまさにCosmicの世界に浸りっぱなしの日々でした。リリース時にタイポを結構出してしまったのが悔やまれる…

キャラクターを早い段階でつかめて訳しやすかったのはフォルトゥーナとエイブラマー。意外に難しかったのはダリアです。

苦労したのはペッパーマンサーの変身シーンと、講堂に向かうフォルトゥーナとエイブラマーのやり取り。この2つのシーンはなかなか納得いくような言葉の流れにならず、何度も書き直しをしました。だけにどちらも思い入れのあるシーンです。



*これら以外にも一部お手伝いしたタイトルなどはあるものの、関与の度合いが比較的少ないものは割愛しました。

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