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3分でわかる宇宙平和利用原則

スターウォーズの世界?

今月27日、インドがミサイルによる人工衛星の破壊実験に成功したと発表しました。説明の中で、インドが宇宙大国へ仲間入りを果たしたこと、歴史的な偉業を達成したこと、ミサイル発射から3分で自国の低軌道衛星を撃墜したことに言及しています。本連載を1つ読むくらいの時間でミサイル発射から衛星の破壊まで至ってしまうわけですね。他に対衛星ミサイルの運用能力を持つ国は、米国、ロシア、中国の3カ国です。
私はスターウォーズが好きで、物心付いた時から観ていました。宇宙軍創設の話題といい、幼い頃から夢見た空想は思わぬ形で現実のものとなっているようです。

宇宙平和利用原則

ところで、宇宙条約は、宇宙空間・月その他天体に関しそれぞれ以下のように規定し、宇宙空間・月その他天体の平和的利用について定めています。

・宇宙空間について
①核兵器及び他の種類の大量破壊兵器を運ぶ物体を地球を回る軌道に乗せない
②①の兵器を配置しない

宇宙空間で通常兵器の使用は可能ですが、国連憲章で認められている自衛権の行使の範囲を超えることはできません。
※なお、デス・スターが「大量破壊兵器」に該当するかどうかはご想像にお任せします。

・月その他の天体について
①核兵器及び他の種類の大量破壊兵器を設置しない
②軍事基地、軍事施設及び防備施設の設置、あらゆる型の兵器の実験並びに軍事演習の実施を禁止

月その他の天体の利用目的には、「もっぱら平和的目的」であることが必要です。
「平和的目的」の意味について、かつては「非軍事」と主張されたこともありましたが、現在は「非侵略」との解釈に落ち着いています。
そのため、自衛のための武力行使は可能ということになります。
とはいえ、ここでは具体的に禁止される行動が列挙されているので、天体の非軍事化はほぼ達成されているとされます(出典:日本の宇宙戦略p172 青木節子)。

他方、以下の行為については禁止されません。

①科学的研究その他の平和的目的のために軍の要員を使用すること
②月その他の天体の平和的探査のために必要なすべての装備又は施設を使用すること

まとめ

先のインドの人工衛星破壊実験の例でいうと、平和利用原則の問題をクリアできたとしてもデブリの問題は別途生じ得ます。また、そのデブリに関しても、現在、除去方法について様々な議論がなされているところです。仮に、破壊により除去する方法を採用する場合、平和利用原則に抵触しないようにしなければならないことが前提です。

参考:
・日本の宇宙戦略 青木節子
・宇宙ビジネスのための宇宙法入門第2版 小塚荘一郎・佐藤雅彦
・これだけは知っておきたい!弁護士による宇宙ビジネスガイド 第一東京弁護士会

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