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講義と研修とプレゼンと

仕事柄、よく社内の講義や研修講師に駆り出されているのですが、先日、対同業者としては初めて外部のシンポジウムでプレゼンをしました。

普段は従業員を相手に話しており、中には知っている人もいるので気楽(?)なのですが、シンポジウムでは知らない人ばかり、もっと言えば、自分より経験も知識もあるであろう人を相手に話さねばならないのです。

話したのは仮想通貨関係のお話。
結果的に時間どおりに話しきることはできましたが、早口、まわりくどい、オーディエンスを見る余裕がない等々、課題が多く残りました。

良い機会なので、今回は講義、研修、プレゼンの違いを考えてみたいと思います。
巷ではこの手の本が山のようにありますが、ハウツーから取り入れるというより、自分の経験から最大公約数を出し、修正すべき点を修正して原理化するという方法で考えてみます(このあたりの話もそのうち…)。

講義と研修の関係

講義と研修は似ているようで全く異なります。
講義は知識のインプットが主な目的で、研修はある程度知識がインプットされていることを前提にそれを使いこなす、あるいはさらにアップデートするというイメージだと考えています。
講義は0から1、研修は1から2、3へという感じです。
講義のための予習は0をより早く確実に1に持っていくための手段、復習は時間の経過により1が0.5や0に戻ってしまわないようにする手段という位置づけでしょう。
そのため、講義ではいかに効率良く受け手に知識を定着させられるかがポイントとなります。
法律で言えば、賃貸住宅のように土地を持っているけど自分では使わない、なんとか安定的に現金化したい!というニーズと、家を買うまではいかないけど、上京してきたので使いたい!というニーズが合致した場合、それを実現するために「賃貸借」という契約類型があります。そのための要件は…
といった具合に、抽象的なワードを具体的なものにしたり、簡単なケースを用いてケースの課題を解決するための手段として知識を紹介するといった具合です。

他方、研修では知識を使いこなせるようになる必要があるわけですが、知識を使いこなせるというのは、知識の精度を高めることでもあります。
そのため、私はよく求められる知識の精度を「中学生がわかるように説明できることを目的としましょう」と説明しています。
その上で、より具体的なケースを用いてディスカッションをするといった具合です。

このように、講義と研修の関係においては、知識のインプットとアウトプットに焦点が置かれているのではないかと思います。

プレゼンの目的

では、プレゼンは講義や研修とは何が違うのでしょうか?
ここで、プレゼンの目的に立ち返ってみたいと思います。
そもそもプレゼンの場というのは、第三者に伝えたいことがあるプレゼンターが、自分の意見をオーディエンスに「伝える」場です。
つまり、オーディエンス側からすれば、その場においてはインプットやアウトプットではなく単にプレゼンターの意見を聞く、というにとどまります(質疑応答はあるかもしれませんが)。
そうすると、プレゼンターとしては、オーディエンスに自分の意見を「伝達」できれば形の上では成功ということになるとも思えます。

プレゼンの本質

そもそも、プレゼンを聞きに来る人の目的は何でしょうか?
おそらくは、プレゼンターの「話の対象」の評価のためかと思います。例えば、新商品のプレゼンを聞く人は新商品の自体の評価のため、仮想通貨のシンポジウムに来ていただいた人は仮想通貨の議論状況を評価するためではないでしょうか。
そうであれば、知識の定着やそれを使いこなせるようになるという講義や研修とは向けられているベクトルが異なり、性質が全く違います。
ここで必要なのは、オーディエンスがプレゼンターの「話の対象」を評価できるだけの材料を示すことができるかどうかです。
そしてそのオーディエンスの評価は、プレゼン中になされるとは限りません。持ち帰って分析、研究、検討することもあるでしょう。
そうであれば、その「材料」に関して深めるためのヒントも必要です。
例えば仮想通貨のシンポジウムであれば、仮想通貨交換業のセキュリティ対策としては●●の問題点、課題がある、課題解決のためにはこのような方法が考えられる、というのが「話の対象」です。
その方法が妥当なものかどうかはオーディエンスが決める話なので、課題解決ツールのメリットデメリットを比較した結果や参考文献を示しておけばそれで良いはずです。

方法論

そう考えると、少なくとも「問題提起、課題解決系」のプレゼンにおいては、プレゼンターの態度や話し方というより、提供した検討材料の良質性がポイントになってきそうです。
他方で、「新商品を売り込む系」であれば、どんなに新商品が優れていたところで、プレゼンターの話し方や流れが悪ければ、バイアスがかかることにもなりかねませんし、「仮に採用したとして、このような担当者で大丈夫なんだろうか?」といらん心配をさせかねません。
そのような事態にならないためにも、話すスピードを客観的に数字にしてみたり、録画を見るなどして聴き手に響いている時とそうでない時を比較してみるとか、鼻腔から発生するようにしてみるとかの工夫をすることになります。

まとめ

こうしてみると、「問題提起、課題解決系」のシンポジウムで早口になってしまったことや余裕がない云々は、提供材料さえ練られていればさして思い悩む必要がないのではないか、という結論になりそうです(笑)。
とはいえ、話すのが上手い人の話は知的好奇心を擽りますし、何よりその世界に入り込めるわけですから、聴き手の快適度を上げるための方策が必要になるのでしょう。
これは、今後の課題としたいと思います(笑)。

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