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趣味を始めたりやめたりしたらいいーー日本人は「やめる練習」がたりてない

多くの人は「辞める練習」が足りてない。自分の意思で転校したり、部活辞めたりした経験がない。「自分で辞めるとどーなるか」って経験してないから、会社だってそりゃ辞めるの怖いよね。マレーシア人は「学校合わないな」と転校する。それが小さい頃の「辞めて結果を引き受ける練習」になるんだな。

(野本響子、『日本人は「やめる練習」がたりてない』p3、集英社新書)

3万6,000回を越えてリツイートされた野本響子のTwitterでのつぶやきの一部である。このつぶやきがきっかけとなって執筆された『日本人は「やめる練習」がたりてない』は、"辞められない"ことに苦しむ人に向けられた著者からの提案になっている。

読みながら「ああ、"そうあるべき"と思って自分を責めなくてもいいんだな」と考えていた。やめる練習が足りてないのは私も同じだった。

長く続けることが正義に思える

『日本人は「やめる練習」がたりてない』は、マレーシアと日本で子育てした著者が、その経験を元に、「やめられない」日本人への生き方を提案するものである。マレーシアと日本の制度の違いや価値観の違いについても言及しつつ、著者の考えを示している。

著者はどちらが良いか悪いかという点で述べてない。私もやめないことが良い作用を生むこともあると思う。実際、日本人にとっては長く続くものが良い感覚はあまりに普通になっている。

「創業100年の老舗」と聞くと、それだけで品質のよい印象を受けるのは私だけじゃないはずだし、「その道50年のベテラン」と聞くと、まるで仙人の話をしているようにも聞こえる。長く続けることはそれだけで正義っぽい。

一方で、途中でやめることは"普通"から脱線するような空気を感じる。「部活をやめる」とか、「大学中退」とか。途中でやめる人はマイノリティーな感じがするし、その人への肯定的な感想が想像できない。周りの声を気にしたら、たしかに「やめられない」と思うかも。

やめる人を肯定的に後押しする人達の声がもっとイメージできる世の中になったら、解決するのだろうか?

「やめる」が後ろめたかった

読みながら自分が転職するときのことを思い出した。

数年前、私は5年勤めていた会社をやめた。大学を卒業してからずっと働いていた会社だった。転職の準備をしている間もずっと不安がつきまとった。「やめる練習」がたりていなかったのかもしれない。前向きな思いで選択をしているはずなのに、後ろめたい気持ちだった。

転職先が決まってなかったこともあり、やめると会社に伝えてからしばらくはどんよりした世界に生きていた。こんな気持ちになるとは思わなかった。幸いにもすぐに次の勤め先は決まったけれど、最後の出勤日まで気持ちは快晴にならなかった。

今振り返ってみれば、「やめる練習」がたりてなかった影響なのかもしれない。学校も部活もそれ以外の活動も、これまでなんとなく区切りまで続けていた。途中でやめることをしたのは初めてかもしれない。

だから、やめたときに自分がどうなるのか、その先がどう変化するのか想像できなかった。自分が社会から断絶してしまって、もう生きている間は以前のように人間関係を作れないのではないかと本気で心配していた。

実際はそんなことなんてない。新しい職場では新しい人間関係が始まる。以前の職場の人とは基本的に関わらないから、やめたことで後ろ指さされない人の方が多いと思う。それでも不安になるのが、「練習がたりない」ということなのだろう。

オンラインコミュニティは「やめる」練習がしやすい

今は会社以外でもコミュニティに所属するなどして、多様な人と関わるようになった。会社だけが人間関係のすべてでないことを、身をもって感じている。それでもやはり、やめることにはなれていなくて、同じ場面になったらまた怖くなるのかもしれない。「ああ、まだ練習が足りないな」と感じる。

自分でやるかやらないかを決めて、挑戦して、結果を引き受ける。その訓練を何度もすると、挑戦することが怖くなくなる。挑戦に慣れてくるうえに、自分の適性がわかってくる。

(野本響子、『日本人は「やめる練習」がたりてない』p72、集英社新書)


「練習」の意図はなかったけど、最近オンラインコミュニティを入ったりやめたりを繰り返している。気になるコミュニティはちょっと試す。新しいのを始めるときに、既存のコミュニティから離れる。所属する上限をなんとなく決めておくと、判断基準にもなってやめやすい。

『日本人は「やめる練習」がたりてない』では、子供の頃から練習できた方が良いとしているけれど、大人になってからも遅くはない。自分の所属するコミュニティを選んだり、さまざまな趣味に興じて、やめてみることだ。仕事をやめるようなと大きな決断にはならないけれど、それがやめる練習にもなるから。

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