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介護現場にビジネススキルを

介護の仕事の目的とは?

介護を仕事としている私たちの「仕事の目的」はなんでしょうか?

個人的な動機や目標を持っているかもしれませんが、仕事の目的は法律や理念に求めることができます。

例えば介護保険法では、「国民の保健医療の向上及び福祉の増進」をすること目的となっています。

さらに企業理念(会社の存在意義や目的)に求めることもできます。例えば私が経営する会社であれば「最期まで自分らしく生きられる社会をつくる」です。

企業理念は各企業によって異なりますが、医療・介護という業界で働く私たちにとって、医療や介護という手段を用いて「健康を増進する」という目的があるのは間違いないと思います。

では健康を増進するとはどういうことでしょうか?

WHOでは健康をこのように定義しています。

健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいいます。

公益社団法人日本WHO協会ホームページより

そして、増進するとは「活動力や能力などを、増し進めること。また、増し進むこと。」です。

私たちの仕事の目的は、私たちが日々接している利用者さんが、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にもすべてが満たされた状態になるように推し進めることと言えます。

その目的を果たすために私たちが使える時間は?

介護の人員配置はだいたい3:1となっています。利用者3名に対し1名の介護職員です。

例えば18名の利用者がいれば、6名の介護職員を配置するということです。

といっても、これは18名利用者さんがいるところに6名の介護職員が出勤している状態を指すわけではありません。

週40時間(8時間労働×5日)を1名分とカウントし、それを6名分、つまり240時間分の勤務を確保しなさいということです。

となると、1週間は7日間なので、1日に出勤する職員数は240時間÷7日≒34.3時間/日となり、人数にすると約4.3人となります。

介護職員全員で1日に34時間滞在していますが、この時間ずっと介護業務をしているわけではありません。食事や入浴、排せつ介助の準備をしたり、申し送りや会議をしたり、記録を入力したり様々な業務があります。

介護職員が実際に直接介護をしている時間は勤務時間のうちの6~8割程度です。間をとって7割とすると、直接介護業務をしている時間は34時間×0.7で約24時間程度になります。

利用者さんは18名いますが利用者さんに立場に立ってみましょう。
24時間を18名で割ると、利用者さんは1人当たり1.3時間程度しか直接援助してもらう時間はないということになります。利用者さんの1日は(誰でもですが)24時間ありますが、このうちたった1.3時間しか直接介護をしてもらえない計算になります。割合にして1日のうちの5.4%です。

たった5%強という短い時間の関わりで、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にもすべてが満たされた状態になるように推し進めることを求められているわけです。

生産性とは投入した資源により得た成果の割合

生産性とは、「生産性=成果/投入した資源」という式で表されます。

私たちが利用者さん一人に使える合計時間は、1日1.3時間、1週間で9時間強、1ヵ月40時間弱です。これが、生産性の式の分母(投入した資源)にはいります。

成果には、「現在の健康状態ー私たちが関わる前の健康状態」が入ります。つまり私たちが関わることで健康状態がどれだけ改善したか、です。

このように考えると、出勤している時の私たちの貴重な時間で、どれだけ生産性高く動けるか、という勝負になってきます。これは現場職員、管理者、経営者層が一丸となって協力して取り組まないと、一部の層だけが頑張ってもなかなか成果が出にくいものです。

どんなに有効な認知症ケアを学んできても、それを実践できる仕組みや環境が整っていないと、現場で実践することができないということもあります。

先進的な施設の事例を学んでも自施設でそれを実践できないのは、現場のスキルの問題ではなく組織の仕組みや体制、考え方が違うからという理由が大きいのです。

収益性

よいサービスは、期間限定ではなく永続的に受けたいものです。
介護の仕事も、この世から介護を必要とする人がいる以上、継続的にサービス利用できるようにすることが必要です。

そのために必要なのは、利益が出る仕組みです。

働けば働くほどお金が減っていき、いつか貯金が底をついて破産してしまうようでは、安定して質の良いサービスを提供し続けることはできません。

よいサービスを継続的に提供するためには利益を出す、つまり売上から経費を引いてもお金が残る仕組みにしなければなりません。

利益を出し、お金を貯め、よりよいサービスをしていくために投資をすることが必要です。

仕事の目的を果たすことと収益性の両立

仕事の目的を果たすことと収益性を両立させるためには、介護の知識や技術以外にも、ビジネススキルが必要になります。

ここでいうビジネススキルとは、ビジネススクールで学べるような経営理論などです。

ビジネススクールでは批判的思考をはじめ、定量分析、人材マネジメント、財務会計、管理会計、ファイナンス、経営戦略、マーケティング戦略、オペレーション戦略、組織行動学、リーダーシップ論などを教えますが、これら全てのことが介護の仕事をよりよくするためにも有効です。

しばらくブログから遠ざかっていましたが、ビジネススクールで学んだことを介護業界の言語に翻訳し、発信していきたいと思います。


介護サービスの会社を経営しながら、経営学を学ぶため大学院に通っています。起業前の13年間は特養で働いていました。介護現場と経営と経営学、時々雑感を書いています。記事は無料ですがサポートは大歓迎です(^^)/