黄金のレガシーは誰にとっての黄金であるべきだったのか?(FF14クリア後の感想)
黄金のレガシーとは何だろう。
タイトルだ。パッチタイトルである。
これは、MMORPGとして今や世界中にプレイヤーを抱えるファイナルファンタジー14の最新パッチだ。
パッチとは簡単に言えば世界の拡張を意味する。
その最新版である。つまり、新たな世界がファイナルファンタジー14の世界に追加されることになったわけだ。
新しいエリアとは、単純に言えば新しいMAPであり新しいモンスターである。新しいコンテンツ(ダンジョンなど)が追加され、新しいNPCキャラクターが配置される。また、今回も新しいジョブ、プレーヤーが選べる新種族がそれぞれ追加された。
それらはただ単に追加または配置され、拡張されるだけではなく、それらを、結ぶ1本のストーリーが用意されている。これを我々プレーヤーはメインクエストと呼ぶ。これは拡張パッケージであるところの「黄金のレガシー」のメインコンテンツとなっており、それらを体験しながら、プレーヤーは新しい世界について理解を深めていく。そして、新しい世界を冒険している気分を味わうのだ。端的に言えば、拡張パッケージが担っている役割は、それ以上でもなくそれ以下でもない。これだけである。
つまり、何が言いたいか?と言えば、MMORPGであるこのファイナルファンタジーはたくさんのプレーヤーが存在する巨大な遊び場だ。一種のコミュニティ、またはメタバース、またはオンラインの遊園地と言って差し支えない。そこに新しいアトラクションの「黄金のレガシー」が追加された、という表現がしっくりくる。つまり、これまでなかった遊びが提供される期待感を我々プレーヤーに与えることで、長く遊んでいるプレーヤーも最近「暁月のフィナーレ(一つ前の拡張)」を終えたばかりのプレーヤーも、同時に新しい気持ちでこの世界を冒険できるというわけだ。だがしかし、ここに今回はやや疑問があった。いや、前からあったのだが改めて露呈した。それはなにか?端的に言えば、新シリーズ開幕である今回の「黄金のレガシー」は、誰にとっての「黄金」であり、「レガシー」だったのか?ということである。
本題に入る前に、過去の拡張パッケージの名前を羅列してみよう。ちなみにネタバレはしないつもりなので安心して欲しい。そういう話は私がするより大勢の適任者が他にいる。
・新生のエオルゼア
・蒼天のイシュガルド
・紅蓮のリベレーター
・漆黒のヴィランズ
・暁月のフィナーレ
これらはそれぞれ、以下のような意味合いが付与されている。(諸説ある)
・新生のエオルゼア 朝(白)
・蒼天のイシュガルド 昼(青)
・紅蓮のリベレーター 夕方(赤)
・漆黒のヴィランズ 夜(黒)
・暁月のフィナーレ 夜明け(白)
そして、今回はというと、まだ明かされていないので分からないが色で言えば金色である。
・黄金のレガシー ??(金)
新生から暁月は一日のサイクルを表していた。それはつまり、旧FF14の大失敗を受け、後任を任された吉田プロデューサーが、起死回生を訴えて生まれ変わらせてきた歴史だ。ファイナルファンタジー14にとってこれまで誰も見た事のないような新たな夜明けを作り出した10年だったと言っていいだろう。その10年を締めくくるという壮大なテーマのもと、暁月のフィナーレは、その名の通り「フィナーレ」を迎え、それらはプレイヤー達に熱狂的に指示されたことは記憶に新しい。というのも、それらの10年を作ったのはスクウェア・エニックスであり、第3開発事業部だが、それらを資金面や人気の面で支えたのは、紛れもなく10年共に歩んできたプレーヤーたちの存在である。それらの苦労を労(ねぎら)うカタチで終演した前回のパッチは、ひとつのゲームのクリア以上の感動をプレーヤーに与えたに違いない。それこそ、1プレーヤーに過ぎなかった自分たちが、このエオルゼアを作ってきたのだ、と。そんな先輩プレーヤーたちを我々後発組は、敬意と賞賛の意味を込めて「レガシープレイヤー」と呼んでいる。これはいまや過去の遺産となった旧FF14を体験した猛者たちに対する感謝の気持ちが込められていることは言うまでもない。
そんなエオルゼアに生きる人々にとって、レガシーとは勲章であり、たゆまぬ開発の努力の証でもある。つまりたくさんのユーザー達が声を上げ続け、それらに真摯に耳を傾けひとつずつ改善するという開発の地道な努力という双方の関係性があってこその今の10年にほかならないからだ。
前置きが長くなってしまった。そろそろ本題に入りたい。つまり開発とユーザーの蜜月が作り上げたこのエオルゼアはすでに完璧すぎるほど完成されていたのである。その中にさらに、何を追加するのか?この問題についてはおそらく開発も相当頭を悩ませたに違いない。なにせ、その答えが、ヒカセン(光の戦士の略語)たちへ感謝のプレゼントを渡すことだったからだ。
10年間のありがとう!の気持ちを込めて送られたもの。それは、2つある。ひとつはグラフィックアップデート。つまり、お世辞にも綺麗とはいえなかったグラフィックを大幅にアップデートさせ、画面の見栄えを良くした。そしてもうひとつが、着ている服の色を2色まで変更できるように仕様変更した(これまでは1色だけだった)。結局のところ、この2つを我々にプレゼントした格好である。
ここまで読んで「ん?」と思った人がいるかもしれない。10年のお祝いにプレイヤーに渡されたプレゼントはそれだけなのか?と。ここは誤解もありそうではあるから説明すると、最初に述べたように、各種いろんなコンテンツや、ジョブやキャラクターは追加された。それもプレーヤーに対するプレゼントといえばそうなる。だが、それらは、もう過去に何度ももらって来ており、正直当たり前になってしまっている感も否めない。つまり、お金を出して拡張パッケージを買ったのだからその対価としてそれらは単に購入したものであって、この先の10年を感じさせる「新しいなにか(もしくは期待値)」については、まだ明確な答えがもらえていないのが現状なのだ。つまり、何が言いたいかと言えば、運営もこの完成されてしまった世界にここに来てさらに何を追加すべきか?という問いには、まるで答えを出せていないのである。わたしは今回のパッチにテーマを与えるならば、「結論先延ばしパッチ(適当にお祭りムードを出そうぜ)」が、いちばんしっくり来ている。
いや何もここにイチャモンを付けている訳では無い。ただ単にそういう結論付けをされたパッチだったなという感想を述べたに過ぎない。事実、ぼくは黄金のレガシーというストーリーには感動させられたし(途中あれ?と思うところはあるけど)、夏休みを楽しんでね!という開発からのメッセージは痛いほど感じたので満足している。これで満足できない人達がいたとしたら、それはある意味で期待しすぎていたと言えるだろう。ファイナルファンタジー14はあくまで終わりのないMMORPGであり、10年も続く老舗ゲームなのだ。そこに革新性や驚きを求めてもそれは酷な話ではないだろうか。
ストーリーについては確かに細かく散文化されたショートストーリーが多く、それらを立て続けに見せられると、「あれ?この話なんでしてるんだっけ?」とはなった。それらはおそらく今後のパッチで回収される伏線なのであまり気にしてはいけないと思うが、どうしてもメインクエストに、サブクエストが挟まっているかのような違和感があったことは事実である。それらはもしかすると、メインクエストの脚本を担当した人の力量不足かもしれないし、またはメインクエストを早くクリアさせないぞという開発の強い意思でもあるだろう。ここは大目に見てこそ、我らエオルゼアの正しいプレーヤー像ではないだろうか。
そしてもう1つ気になったことを明記しておく。それはストーリーに絡んでくるインスタンスダンジョンのことだ。これはメインクエストを進める上で欠欠かせないアトラクションとなっている。過去作ではコンテンツが解放されると、そこでストーリーは中断され、同行してもらえるプレーヤーを自分以外に3人探さないと行けなくなる。ここがMMORPGの弱点でもあり、ある種の醍醐味でもあった。というのも、深夜だったり人気の無い時間帯だと当然人は集まらないし、ひとりで進めている人は友達を誘うこともできない……それを打破するためにパーティ募集があるわけだが、初心者にはそれを使うのもハードルが高い……。そこで生まれたのがコンテンツサポーターなるシステム。自分以外のロールをコンピューターに任せてひとりで攻略できるというスグレモノだ。2個前の拡張で追加されたシステムでレベリングに大変便利であるこのシステムだが、今回はそれがかなり全面に出ていたように思う。つまりどういうことかと言えば、楽しみのはずのダンジョンが、単なるイベントバトルになっているのではないかという事だ。他人との初見パーティバトルほど楽しいものは無い。それはMMORPGユーザーなら誰もが頷くはずの楽しみ方だ(1部は違うだろうけど)。それが、コンテンツサポーターありきになりすぎていて、面白みが半減……延々と詰まらないイベントバトルを進めさせられる苦行として存在していた。さらにいえば、ときおりウクラマト(今回の主人公の1人)を操作してボスを倒すイベントバトルがあるのだがそれがタンクロールを経験していても難しかったことだ。これはタンクロールをしていないユーザーにとってはかなりの苦行になるだろうし、そもそもアクションホットバーが意味することすらわからないままにバトルに放り出されるこのシステムにはそろそろメスを入れるべきかもしれない。また、これまでのイベントで多用されたミニゲームが今回も多数流用されていることにもやや飽き飽きとした気分にさせられた。仲間を連れて歩く、周りの人3人に話を聞く、尾行する、対象物の特徴を調べる…これらにどんな意味があるのかよくわからないのであるが、それらを延々と繰り返されてしまっていたことには「なぜこれを頑なにやらせるのか?」と勘ぐってしまったほとである。
つまり、これまで散々させられてきた同じようなコンテンツやプレイフィールを強要されたことで新大陸!と意気込んだ一部のユーザーからは「面白くない!」とレッテルを貼られた格好である。そもそもラストに控えるボスの存在も……まあ、これはネタバレになるのでここではあえて控えることにしておこう。
もしかすると、新生から続いてきたレガシープレイヤーの存在意義や意味はここに来て無くなってしまったと言えるのかもしれない。だから、黄金のレガシーを進めたくない、進める理由が無くなったと引退を決意したレガシープレイヤーも少なくなかった様に思うわけだが……。
つまり、第1幕が終わってしまい、エオルゼアに恩義を感じていたプレーヤーはその意味を失い、この世界を去っていった。そういう意味では、新しい理由が必要だったのである。それは、新たにファイナルファンタジー14を推す理由である。なにもその理由は何でも良かっただろう。だがそのひとつとして最も有力だったのは、新しいファイナルファンタジー14を見せること、だった。だが、それを今回は回避した。わたしが結論を先延ばしにしたと感じた最大の理由はここにある。
繰り返すがわたしはそれでもこの世界を愛している。この世界と共に歳をとって、普段から関わっているフレやSNSの仲間はこれからもずっと付き合いたいと思っている。そのための住民税だとしたら月額1500円は高くは無いし、2年ごとに来るパッチもこれからも楽しみにしたい。だが、私が今回指摘した点についてはとても大きな問題としてこれからも残るだろう。大人気MMORPGであるところのファイナルファンタジー14ももはや峠を越してしまったのだ。それは、盛者必衰の理(ことわり)なのである。
誰のための黄金なのか?
それは……
【注意‼️】クリア後のネタバレあります!
いえいえ、誰とかじゃないです。
それは今回の旅で得た
あの黄金に光るアーティファクト。
それこそが黄金のレガシー(遺産)。
すごくシンプルな答えでした。
むじかでした。
またね!
この記事が参加している募集
サポートいただけるかた、大募集です! 知りたいこと、ありませんか? わたしでよければ素敵なコトバを贈ります♪