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「メルカリの"やばい"データマーケティング」 レポート #b_academy

Guest Speaker
株式会社メルカリ
US mercari Business Intelligence team Manager
野中 翔 さん


Chairman
オイシックス・ラ・大地株式会社
CMT
西井 敏恭 さん

プレビュー

「後発ながら国内No1、世界でも有数のフリマアプリに成長し、
取引高1,444億円※に達し、なお躍進を続ける「メルカリ」。
メディアでは華々しい成功が取り上げられますが、その実現の過程には、徹底的にユーザー目線に立ったUI/UXやテクノロジーの開発、そして先行する競合に打ち勝ち、ユーザーを獲得し、アクティブ利用させるため日々データと向き合い続けるグロースハックがありました。
当セッションでは、メルカリの日米両国での成長を牽引するデータサイエンティストの野中氏を迎え、同氏が携わるユーザー数拡大、各種KPI改善、CRM構築を振り返り、メルカリを業界No1にしたマーケティングにおける”データの使い方”を余すとこなく伝えます。」

メルカリについて

野中さん「GMVは約3500億円。手数料は10%なので、売上は掛け算すれば出るくらいの規模。今後としては、AIなどの先端技術を導入してより使いやすくする。また、車などの特定のカテゴリーの売買にはハードルがまだまだあるので、特定領域にも力を入れていく。
今後については、全体としては、メルカリIDを通したエコシステムを構築する。将来的には信用スコアの可視化もやっていきたい。
海外展開としては、海外のローカルにあうようなUIを作っていく。知らない人も多いので、もっと行動をサポートするデザインや遷移を追求していきたい」

西井さん「FacebookやGoogleとかだと、グローバルの仕様をローカル化している。それだとうまくいかない例もあるなとは思う。メルカリは全然違うプロダクトにしている。その辺りも聞いていきたい」

グロースハックとは?

西井さん「早速聞きたいのは、野中さんにとってグロースハックとは?」

野中さん「汎用的な完全にとどまらない。サービスに特化した、持続的に成果を上げ続けられる、仕組みづくり」

西井さん「ABテストとは何が違う?」

野中さん「ABテストは必要ではある。どういうABテストをするかを考えること。仮説立案から検証まですべて。たとえば、Dropboxの事例は有名。友達を紹介してくれたら、容量をプレゼントしますよ、という施策。Dropboxのサービスの特性を活かして、持続的に成長できる仕組みを作ることができた事例」

西井さん「かなり広いですね」

野中さん「UIだけに止まっちゃうと、小さくまとまりがちなので、広い視野で見ることが大事」

西井さん「オイシックスでもやっているが、難しいなという印象。コツは?」

野中さん「目線を高く持つこと。UI担当だと自分を思っちゃうと、UIの案しか出てこない。友達に配る、とかはでてこない。メルカリのあるべき姿から全体的に考えられることが大事。LTVとCPAによるUnit Economicsが成り立つことが大事で、その内訳を考える工夫が面白い」

メルカリにおけるデータアナリストとは?

野中さん「データアナリストはプロダクト側にいる。PMやデザイン、エンジニアなどと一緒に働く。メルカリのデータに関することは全てやる。いろんな部署から呼ばれたら、担当がアサインされて担当する。各部門の意思決定をサポートする。アナリストの目標に、各部署の意思決定の数は目標に入れているくらい、意思決定に対して影響を及ぼすことが大事だと思っている。なので、RやPythonを使って作業もするが、分析の設計をしたり、意思決定のサポートをするためのデータの見せ方を工夫したりする方に時間をかけている。」

西井さん「部署は横断?」

野中さん「横のナレッジ共有のためと、横断にしていると、メンバーがいろんな業務に関わって飽きないというメリットもある。メンバーとしては、もともとデータアナリストだった人もいるし、マーケや経営企画の人もいる。ビジネス理解が重要」


野中さん「おっているKPIは、GMV、STR、LTVと一般的。難しいのは、SellerとBuyerが両方ともいて、かぶる部分もあること」

西井さん「ECならシンプルだが、フリマだと確かに難しそう」

野中さん「1トランザクションに2ユーザーが絡む。1トランザクションあたりのコストをSellerとBuyerのどちらにつけるのか。それを、施策のタイミングやフェーズによって変えていく。とくに、同時にいろいろなキャンペーンやテストを繰り返しているので、全体としてバランスを取るようにごにょごにょ計算している。マーケ施策全般にインパクトするので結構大事」

野中さん「PVは資源。売られそうな商品を早く見せて、早く買ってもらう。残ったPVで違う商品を見てもらって、買ってもらう機会を増やしたいと思っている」

メルカリで扱うデータの例

野中さん「ログはかなり細かいところまで全部とっている。BigQueryを使っているが、SQLの書き方気をつけないと延々に処理が終わらないこともあるくらい、たくさんとっている。外部のデータとしては、NPSなどのアンケートや、配送状況データもとっている」

西井さん「データを取る基準は?」

野中さん「取れている状態で、使えないデータが多い。IDの設計とか。その設計にはデータアナリストがPMっぽい動きで動いて直していったりする。基本的には、データは全部残す。レコメンドや意思決定にほぼ全てのデータは使えると思っている」

メルカリデータチームの成果例

野中さん「クーポンの事例はわかりやすい。10000円に1000円使ってもらう施策であれば、さらにアドオンする必要があって難しいが、そこはかなりPDCA回した。新規ユーザーのCVは、行動ログからボトルネックを分析して洗い出した。リピート購入率も1年かけて2倍になった」

3つのシーンから振り返るメルカリ流データマーケティンング


ダウンロード・インストールへのデータ活用について

オンライン:ユーザー行動データからクリエイティブの最適化
オフライン:獲得向けのCMだったら、アプリの行動データやCVしなかった人の行動履歴を分析。特定の行動でストップした人にアンケートを送り、その結果をもとにマーケチームに提案するなど

西井さん「CMも新聞もやってますよね?」

野中さん「マクロの売り上げや数の成長も分析するし、ミクロの施策別の分析もする」


西井さん「オンラインで、既存アクティブユーザーの施策は?」

野中さん「完全新規獲得向けのクリエイティブの最適化の提案もする。CPIで最適化させるか、購買まで見るか、などいろいろと配信方法はあるが、そこのKPI自体の最適化も提案する」

西井さん「次は、CV(初回購入や倍角)」

もっとも効果的な施策は?

野中さん「まずは、Sold商品の表示、非表示。次に、検索UI、三つ目がデータを活用したクーポン施策」

野中さん「実際の例。めっちゃ細かく見る。たとえば、キーワードサーチして、そのあとどんな商品見て買ったか買わなかったとか。Soldout商品を出すか出さないかを見てみたら、出した方がCVR高かった。条件の横ずらしをしてみたりもした。例;ナイキと検索した人に、ナイキがなかったらアディダスを出す、など。結果的には、Soldout商品があった方が、出品も増えて、結果的に購入も増えるということがわかった。Soldout商品を出さないでください、という問い合わせもきたが、実際にやってみたら数値的は違った。データアナリストの存在意義を出せた案件でもあったかなと思う。分析結果を共有するシートの作り込みも力を入れる。「いいね」ができるようになっているので、どういう分析が参考になるかがわかるので、だれにどんな分析が役立つのかがわかる」

西井さん「二つ目は、検索させるUIについて」

野中さん「”検索してもらうための”UIを設計をすること。買うためには検索してもらう必要がある。でもADから入ってきた人だと検索しないで離脱しちゃう人もいる。とりあえず検索してくれ、という検索条件をだしてみたり、おすすめ商品を出してみたり、『こういう検索条件で検索されています』と候補をたくさん出してあげたり。最終的には、検索条件候補を出してあげるのが良かった。検索すること自体ではなく、検索するための言葉がわからなかったんだ、ということがわかった。
UI改善をしていると、CV最大化というゴール一つでも、ある人はクレカの入力よくしましょう、ある人は検索よくしましょう、などいろいろと餡が出てくる。そこをデータをもとに整理してあげる役割でもある。結果的には初回アクセスユーザーのCVRが2倍改善した」

西井さん「日本との違いは?」

野中さん「まずは認知が違う。サービスやその仕様の認知度が違うので、設計としての前提が変わる。正直、今のJPのデザインを全く知らない人に見せても使いづらいかもしれないが、それはこれまでの認知の積み上げの結果。USでは全く状況が違うので、そこを分けて考えるのが大事」

西井さん「Sellerには安くしてもらいたい?」

野中さん「売れるかどうかはimpと購入開始、購入終了までのCVRと分解できる。impは検索側のマーケットプレイス運営側の問題なので改善するところ。ちゃんとPVを差配してあげる必要がある。購入開始率は、価格の問題が大きいので、値下げしてください、ということになる」

データをフル活用したクーポン施策

野中さん「まず、段階的に割引率があがるクーポン。これはJPでもずっとやっている。1回目は5%OFF、2回目は10%OFFで購入的な、ちょっとソシャゲっぽい取り組み。取りっぱぐれない仕組み。複数回やることを前提としているスキームを作った」

「二つ目は、特定のsellerとbuyerの組み合わせのみ使えるクーポン。メルカリとしては、同じ5000円払ってsellerとbuyerに両方取ることができると、とてもお得。たとえば、sellerとbuyerの両方アクティブになりうる人に対して、クーポンを訴求する。すると、sellerとしてもbuyerとしてもアクティブになるので、一気に効果が高まる」

「次が、将来購入するかどうかを予測しながら、配布を最適化させること。もともと1万円分買う予定だった人にクーポンを配っても、無駄になってしまう。機械学習を用いて、その人がいつまでにどれくらい買う確率があるかを予測して、それに基づいてクーポンを発行する対象や金額を決めていく。結果として予測が外れることもあるが、外れた場合はアルゴリズムを変えて取りっぱぐれがないようにPDCA回す」

「4つ目は、sellerにもbuyerにもなってもらわないといけないという部分。buyerとsellerの両方やっている人をoverlapperと読んでいて、LTVがかなり違う。buyerに出品、sellerに購入を促すのはメルカリの成長のキモなので、わりと大事な部分」

西井さん「メルカリ以前、以後でここは変わった部分ですよね。普通のECにはなかった部分。」

野中さん「ここがうまくいっているからこそ、大きくマーケコストを踏むことができる」

「最後に、特定のリスティングをみている人にのみクーポンを発行すること。特定のカテゴリに興味のある人だったら、大きい金額を踏める、とかの場合もある」

「クーポンの配布金額、数、回収率(ROAS)などを一覧にして管理している。月に2~3つくらいは新しいテストを行なっている。overlapperになってもらう分析も細かく行なっている。sellerからoverlapperなるため分析、buyerからoverlapperになるための分析。また、カテゴリごとに需要と供給をマッピングしたり。カテゴリごとに俯瞰すると、どのカテゴリが需給バランスが悪く、どのカテゴリのsellerまたはbuyerを増やすべきかを分析する」

最後に、CRMの話

買うだけじゃなく初売却のためのPV配布最適化

野中さん「一回だけでなく、もっと買ってもらうには?まずは、PVの配分をLTVをみながらかなり細かくみている。impからの無駄なPVを減らすために、検索順位を変更したり、レコメンドを最適化させたりしている。これができたのは、そもそもスクロールごとに細かくimpを取れていたりとか、エンジニアと細かくデータ取得の部分を開発したから」

売ったら買っていただく売上金利用促進

野中さん「分析軸は、カテゴリとブランドの両方を見る。特にアパレルや家電などだとブランドは大事。サイズや色などのもっと細かい軸は、カテゴリごとに分析する」

LTV最大化のためのレコメンド

野中さん「同一カテゴリ内でレコメンドをずっと作っていたが、複数カテゴリにまたぐレコメンドをしたら、その方がLTVが高まった。そういった仮説を立てて、分析して、実証していく」

Q&Aセッション

Q1.施策の着眼点やアイデアはどうやって得る?

野中さん「仮説をリストアップするための調査分析と検証するための調査分析は分けて考えると良い。アンケート調査みたり、app storeのレビュー見るとか、ヒアリングするとかはもちろん大事。あとは、データをそもそも整理しておくチームもあるので、そこも大きいと思う。知りたいと思った時に調べられる状態にしておくこと」

Q2.「3つのシーン」以外でデータアナリストが関わるシーンは?

野中さん「経営層と一緒に、GMVの予測をしたりもする。たとえば、季節変動を予測したり。季節ごとに上下があるなら、なぜそれが起きたのかまで分析する」

Q3.グロースハックを実現するにはどんなことが必要?

野中さん「視点を高く持つことは大事。単純にABテストではなく、永続的にユーザーを獲得し続けられる仕組みを作ること」

西井さん「それをチームに浸透させるには?」

野中さん「まずは、自分が視座を持ってレビューをすること。それによってメンバーも意識してくれるようになってくれているとは思う」


ほったの所感

ビジネスに活かすためのデータ分析をここまでのレベルでできている会社ってほとんどないと思う。ビジネスやマーケティング担当、プロダクトマネージャーが「ここの数値を分析して意思決定できたらいいのにな」と思いつくことを全て分析しているレベルの細かさ...。

データ分析チームとして、「ビジネスをのばすための意思決定する」ことにこだわり、視座を高く持つことの重要性を改めて感じた。



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