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Cascade

締切に追われながら、書いては書き直し、また書いては書き直す。そうやって言葉を練り上げていく。

言葉というのは不思議なもので、たくさん書いていると次第にそこには書かれていなかったものが浮き上がってくる。それを掴まえては、言葉に落とし込み、きれいに並べて、また書いては書き直す。

僕は「説明書」をつくっているのではない。かと言って、「小説」をつくっているのでもない。よく考えてみると不思議な仕事だ。実際にそこにある言葉をまとめるだけなら僕じゃなくてもいい。そこにある言葉を、形を換えたり、新しい解釈を与えたり、別の意味を導き出したりしながら整えていく。練り上げた文章を介して、より深く読み手に「伝わる」ことが求められる。それができた時に、また声をかけてもらえる。

文章を書いていると、感じる力が上がってくる。言葉にして、文章にする。そうすると今まで見えなかった向こう側が見えてくる。「概念」を手にしたがゆえに人類がここまで進歩できたような。それのほんのささやかなスケールのことが起こる。言葉に落とし込むことで見えはじめる世界(外)。それと、形のないものに言葉を与えることで明瞭になる世界(内)。その両方の世界を行ったり来たりできるのが「書く」だ。

いずれ消すことになっても、誰の目に触れられないものでも、そこに並ぶ言葉には価値がある。「書く」ことには意味がある。奇跡のような一文は、いつだって陽の目を見ない言葉たちによって描かれた魔法陣から浮き上がる。それはまた、未来の瑞々しい言葉たちを引き寄せる。言葉たちは力を手に入れる。その光景は連なった小さな滝のように美しい。

仕事における密度の高い文章を書く時間が続くと、今のように何も考えずにとりとめなくつらつらと文章を書きたくなる。火照った身体を冷ますように。そういう時に、最高のアイデアが生まれることを、僕は経験の中で知っている。



「ダイアログジャーニー」と題して、全国を巡り、さまざまなクリエイターをインタビューしています。その活動費に使用させていただきます。対話の魅力を発信するコンテンツとして還元いたします。ご支援、ありがとうございます。