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負けてはいけない、負かしてもいけない

「対話」は共同作業です。

手と手を取り合って二人で一つの関係性を築く行為。言わば、互いが調和してゆく“アンサンブル”であり、対立構造にはなり得ません。負けてはいけない、負かしてもいけない。そのことを念頭に置くと、心構えにおおらかさが現れます。

公平な感覚でことばを送り合えるといいですよね。関係性に極端な偏りがない方が望ましい。崇め過ぎることもなく、ないがしろにすることもなく。自分のことも、相手のことも、尊重する。お互いの「大切にしているもの」に敬意を込める。そう、相手だけではなく、自分にも敬意を忘れずに。それがなければ、紐の切れた風船のように、相手のことばに流されてゆくだけになってしまいます。

自分の価値観をぞんざいに扱わないこと。相手の価値観を丁寧に扱うこと。対等な関係性を築くための姿勢です。人は「大切にしているもの」を傷つけられると、果てしなく報復できます。“自分のこと”以上に、冷徹になれます。たとえば、家族、パートナー、友人、憧れ、仕事、思想、宗教……冗談でも軽んじた発言をしてはいけません。言及するのであれば、「絶縁する」という覚悟を持ってからにしてください。

「尊重する」とは、相手を褒めることではありません。「ないがしろにした時に、二度と戻らぬ形になる」という覚悟を持つことです。それを踏まえて、もう一度言います。負けてはいけない、負かしてもいけない。

関係性が深まると、ついついそのことを忘れてしまいます。

距離の近い存在ほど、相手の不完全な部分に苛立ちを覚えてしまうのが人間です。パートナーの未熟さを責めてはいけません。二人の課題だと思って、取り組む姿勢が大事です。相手の間違いや愚かさを指摘し合うのではなく、共同作業で乗り越える。互いが力を合わせて、一つの関係性を築くことが理想の在り方だと、わたしは思うのです。相手の課題は、同時に二人の課題でもある。相手の喜びは、二人の喜びであり、相手の悲しみは、二人の悲しみとなる。

恋人や夫婦といった親密な関係は、こよなく対話的です。二人で一つの“関係性”という物語を紡ぐ。なんと愛おしい行為でしょう。



「ダイアログジャーニー」と題して、全国を巡り、さまざまなクリエイターをインタビューしています。その活動費に使用させていただきます。対話の魅力を発信するコンテンツとして還元いたします。ご支援、ありがとうございます。