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〈読む〉で広げる vol.3

〈読む〉を通して〈書く〉を考える。それはとても大事なことです。ラーメンズの小林賢太郎さんは「コントはお客さんがいてはじめて完成する」と言いました。いくら練習しても、そこに「観る人」がいなければ成立しない。舞台上で行われている営みと観客の脳内で起こる反応が結びついて、はじめて完成する。

それは殊に「文章を読む」ということにも当てはまります。そこにある文章は、それを読む人の脳内に広がる光景、余白を想像力が補うことで完成されるものです。それはつまり、作品の良し悪しの半分は読み手の味わい方が担っているということを示します。極端な表現を使えば、「〈読む〉によって作品の価値を引き上げることができる」ということです。

すばらしい読み手のすべてがすばらしい書き手であるとは言い切れません。ただ、すばらしい書き手のすべては、すばらしい読み手であることは確かです。つまり、読む力はすばらしい書き手の前提条件である。ぼくはそう思っています。

〈読む〉は技術です。高い意識を持って文章と向き合えば、磨くことは簡単です(それは〈書く〉よりもずっと)。そこに並んだことばの中から、美しくかがやく鉱物を採掘するように、〈書く〉につながる数々のヒントを発見することができます。それはどのような文章であっても───有名な作家の文章、あるいは、詠み人知らずの落書きであろうと。

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「繭が風を手に入れ、シルクとなった」 対話のこと、文章のこと、考えるということ。

「ダイアログジャーニー」と題して、全国を巡り、さまざまなクリエイターをインタビューしています。その活動費に使用させていただきます。対話の魅力を発信するコンテンツとして還元いたします。ご支援、ありがとうございます。