見出し画像

ことばと目を獲得する

「ことばにする」ということは大切で。

普段、自分がどういうことを考えているのか。あるいは、大切にしていることは何か。それらをことばにして、説明できるようにしておくことは大事だと思うのです。表現や創作に関わっている人なら、特にね。

「ものづくり」は、つくり手の思想や哲学が反映されます。反映されていないものはつまらない。ぼくはそう感じます。そこにはつくり手の正義や美意識が息づいていて、呼応したり、共鳴したり、受け手との対話がはじまります。

では、思想や哲学はどのように養われていくのでしょうか。それが「ことばにする」ということです。「もの」に魂(思想、哲学)を込めるためには、言語化がキーになるのです。だから、ものづくりに関わる人は、言語化の訓練をした方がいい。本気でそう思っています。

文章なら文章、音楽なら音楽、料理なら料理……「つくる」を分析して、ああだこうだと語ることは野暮ったく感じますよね。でもね、この「言語化(ことばにする)」というフェーズは、思想づくりには不可欠です。あるまとまった期間、「ことばにして理解する」という体験を経なければ、思想は育ちません。誰かに教わった公式ではなく、自分の中のロジックを生み出すのです。それが「ことばを獲得する」ということ。

粘土をこねるように、ロジックを練り上げ、思考をクリアにする。そこで培養された思想が、肉体や精神と紐づくことで、ようやく「目を獲得する」ことができます。

同じ世界に生きて、同じ景色を見ていても、感じ方は人それぞれ違います。

少し大げさな喩え話ですが、ただの人がリンゴの木を見ていても万有引力を発見できません。あるいは、ただの人が時計台の針を眺めていても相対性理論のヒントを得ることはできません。何かを発見する人には、同じ世界が異なって見えるのです。

「ことばを獲得する」ことで、ようやく日常の物事がロジックと結びつきます。言い換えると、自分の中でロジックを確立させなければ、それが周囲の物事となかなか結びつかない。

良き作家は、文章以外の世界から優れた文学を発見します。良き音楽家は、音楽以外の世界からリズムとメロディを導き出します。良き料理人は、優れた料理以外の世界からインスピレーションを受けます。

つまり、ことばを獲得することで、世界を見る目を獲得できます。その瞬間、生きている全てが表現の対象となるのです。

普段考えていること、大切にしているもの。それらをことばで説明できるようにしておいてください。それだけで、世界の見え方が変わります。問いの立て方が変わります。魅力的な人と、豊かな対話を育むことができます。

ダイアログ・デザイナー(対話をデザインする人)として、磨いておかなければならない力だと思っています。



「ダイアログジャーニー」と題して、全国を巡り、さまざまなクリエイターをインタビューしています。その活動費に使用させていただきます。対話の魅力を発信するコンテンツとして還元いたします。ご支援、ありがとうございます。