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ラブレターは100万人のこころに届かなくてもいい

最近、好きな人にラブレターを書いたのはいつですか?

コミュニケーションの力を磨きたい人へは、好きな人にラブレターを贈ることをぼくはおすすめしています。ラブレターは、「伝わること」について考えるための純度の高い訓練になります。

ぼくはダイアログ・デザイナーという仕事をしています。ダイアログ・デザイナーとは、ダイアログ(=対話)デザイナー(=デザインする人)。つまり、対話をデザインする人です。

インタビューやファシリテーションだけでなく、対話のある「場」もデザインします。人が集まって語り合うイベントや、文章によるコミュニケーションを伴う企画などをしつらえる。「ダイアログ(=対話)」的なアプローチで価値を生み出します。

対話について考えることは、ことばの領域でコミュニケーションについて考えることと同じ意味です。コミュニケーションでは「伝わる」ということが重要になります。「伝える」と「伝わる」は似ていますが、考え方は異なります。コミュニケーションは、「伝える」よりも「伝わる」を考える必要がある。

たとえば、ラブレターで「好きだ」や「愛している」を何十、何百回と書き連ねるとどうでしょうか?受け取った相手は「こわい」と思うのではないでしょうか。自分の想いだけを伝え続けても、表現が間違っていれば伝わらない。

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「伝わる」について考えた時、自分の想いを一度脇に置くことになります。そこから、相手のことを知る努力がはじまる。それが対話のはじまりです。

どのようなことばを選べば考えが伝わるのか、どのような表現にすれば想いが伝わるのか。それは相手を知らなければ形にできません。相手の文化や思想を知り、趣味嗜好に関心を抱き、何に喜び、何に慈しみ、何に悲しむのかを想像する。それを前提に、自分の考えや想いを融け込ませていく。

あなたの書いたラブレターは100万人のこころに届く必要はありません。あなたの想う一人のこころにだけ届けばいい。

これはどういう意味なのかというと、「人はそれぞれ違う」ということです。その人が歩んできた歴史、置かれた環境、持っている知識量、重んじている美意識は異なります。だから、一人ひとりに伝え方を変えていかなくてはいけない。一通のラブレターが多くの人のこころに刺さる必要はないのです。伝えたい人にさえ、伝わればいい。

一人について真剣に考えること、想像すること。それは別の誰かについて考えること、想像することにもつながります。コミュニケーションは技術です。訓練で磨くことができます。

まずは、好きな人にラブレターを書いてみてはいかがでしょうか?


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【音声配信をはじめました】



「ダイアログジャーニー」と題して、全国を巡り、さまざまなクリエイターをインタビューしています。その活動費に使用させていただきます。対話の魅力を発信するコンテンツとして還元いたします。ご支援、ありがとうございます。