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カメラは、撮る人を写しているんだ。

写真家のワタナベアニさんの『カメラは、撮る人を写しているんだ。』を読みました。シルキーな文体が心地良く、とろこどころスパイシーな笑いが散りばめられていて、滋味と滋養と含蓄の詰まった一冊です。

あの本を読んで、自分が今までに撮ってきた大切なものたちの写真を見直してみました。一枚一枚眺めていると、今までにそこには“わたし”は写っていないと思っていたのに、そのすべてに“わたし”がいました。

義母が亡くなり、数年前にひとりで暮らすお義父さんの近くに越してきました。たまに妻と義父と三人で食事をします。愛ゆえに二人はよくケンカするのですが、わたしはこの空間にいることが愛おしくて仕方がないです。二人のことを尊敬していますし、わたしにとって大事なものはここにあるのだと思わせてくれます。

この写真が好きで、PCのデスクトップはいつもこの二人がわたしを迎えてくれます。それから現像して写真立てに飾り、義父にも贈りました。その写真は、亡き義母の仏壇の隣に置かれています。ここには二人しか写っていないけれど、確かに、“わたし”がいて。

そのことに気付いた夜、わたしはひとり静かに泣きました。

カメラは、撮る人を写しているんだ。



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