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マーチンの音の秘密(考察)

 マーチンのギターはやはり独特の存在感がある。D-28に始まり、アコギを弾き始めたことがある人はもちろん、ギターを知らない人でも一度は聞いたことのあるメーカーかもしれない。

 実際、マーチンのギターは何がすごいのか。他のギターと弾き比べてみないと何ともいえないのだが、私が思うには、音に圧倒的な存在感がある。具体的には倍音が多く、音の成分が多いと言えばイメージしやすいだろうか。それゆえに同じコードをジャーンと弾いたときも、マーチンを弾いたときはしっかり前に出てハリのある、少しリッチな感じのする音が出ると思う。数年前にモデルチェンジして、チューニングするときに回すペグのパーツが変わったため、そこを境に音のキャラクターは変化しているが、音のリッチさはやはり健在である。(ちなみにモデルチェンジ以前は中低音がしっかり前に出るサウンドだったのに対し、現行モデルは煌びやかな高音をより感じやすくなっている)

 では、その違いは何から生まれるのだろうか。最近聞いた話を文章に起こしてみる。あくまで考察の範囲を出ない話なので、面白半分で読んでほしい。他の多くのメーカーと違うのは、トラスロットと呼ばれる、ネック内部に入っている鉄の棒の長さだ。湿気や乾燥のため、日によってコンディションが変わってくるアコギ。もちろんネックも反ったりする。弾きやすいようにネックを調整するために、鉄の棒が入っているのだ。通常アコギは高音部のフレットがボディに食い込むようにネックが接合されているが、最終フレットのあたりまでトラスロットの棒が入っていることが多い。しかし、マーチンのギターでは、ボディとの接合部までしか棒が入っていない。それゆえに箱の振動が変わり、倍音の成分が変わるというのである。
 そのほかには、ブレーシングと呼ばれるアコギの箱部分の内部に接着されている支え木の接着剤がほかメーカーと違うとのこと。マーチンのブレーシングは、日本の高湿度環境下ではほかメーカーより剥がれやすい。それだけ絶妙な貼り付け具合なので、倍音も変化するのかもしれない。あとは、表面の塗装成分もほかメーカーとは多少異なってくる。こういった少しずつの変化が、マーチンの独特のサウンドを生み出している可能性は高い。

 特にブレーシングの話を聞くと、マーチンのギターは他のメーカーより壊れやすいんじゃないかと感じるかもしれない。確かに、日本の高湿度環境下ではネックのハイ起きや、ブレーシングの剥がれは起こりやすいのかもしれない。一方で、乾燥にはとても強く、アメリカではやはり高品質で耐久性のある、信頼のおけるメーカーとして第一線を張っている。そもそも日本がギターにとって落差の激しい地獄のような環境なので、どうしてもマーチンサウンドが欲しいということであれば、目を瞑るほかないのかもしれない。

 まだ弾いたことない人は、ぜひ店頭で試奏してみてほしい。思わずニヤッとしてしまうようなリッチなサウンドに酔いしれることだろう。

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