「なぜ車輪動物はいないのか」から考えるドローンの未来

「なぜ車輪動物はいないのか」

この問いは「ゾウの時間、ネズミの時間」という名著の3章で表題として使われています。

ASIMOくんをはじめ、ロボットは生き物を模した形をしていることが多いのですが、物理的に効率よくエネルギーを発揮しようとすればむしろ、生き物に“似てしまう“という必然性を孕んでいるようです。

そう考えると生き物からヒントを得ることなく、ピュアに発明された車輪が私たちの移動手段のスタンダードになっていることはなかなかに凄いことなのですが、逆を言えばこれだけ効率よく移動を可能にしている車輪が生物界で見られないのはなぜか、という著者の問いは鋭いわけです。

少し考えてみれば分かるように、凸凹やぬかるみだらけの自然の中にあって車輪は使い物にならず、自然界からはこのような進化圧がかからなかったため、というのが1つの答えとして提示されています。

つまり、車輪は舗装あってこその移動手段なわけですが、これから先、人口減による人手不足がとりわけ深刻とされる土木の現場は益々逼迫してゆき、保全が難しくなっていくことが指摘されています。

現時点でさえ「ミッシングリンク問題」として通行が途絶える箇所が全国に点在しているくらいなので、断絶予備軍を含めると補修が需要に対してビハインドを取り続けることは容易に予測ができます。

一方で、既にいくつかのドローンメーカーでは人が乗って実証実験を進めているわけですが、こうして開発競争が進み、バッテリーの発電能力など諸々の問題が解決されるようになれば、空で移動をした方が安くつく時代が来るのではないかと思います。

空の移動手段では離陸地点から着陸地点まで、大気中のインフラ整備にコストがかかるわけではないからです。
たまに飛行機の窓から夜の地上を眺めたとき、街灯と自動車の灯りから道が読み取れることがありますが、あれが日本中を隈なく巡っていることを思うといかに人手が掛かっているか、畏敬さえ感じることがあります。

現段階では断然車の方が移動効率が良いわけですが、車と燃料にかかるコストだけを見るのではなく、道路舗装にかかっている、そして今後どれほど掛かってくるのかを考えれば、線形的にメンテナンスの必要がない空の移動が割安となる未来は、そう遠くないのではないでしょうか。


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