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B2Bマーケティング 3つの新戦略仮説

0.はじめに

元ネスレ、WeWork、リチカCMOの田岡です。現在は、大企業・スタートアップを中心に、10社ほどでマーケティング戦略・実行伴走・組織づくりのご支援をしております。

今回は、B2Bマーケティングについて、書いていきたいと思います。前職のSaaSスタートアップでB2Bマーケティングに携わる中で、また様々な企業のご支援をする中で、これからのB2Bマーケティングの戦略に新しい考え方が求められているように強く感じていました。

まだ、多くの企業で検証できているわけではありませんが、今までいくつかの企業でB2Bマーケティングに携わってきた中での経験から、これからのB2Bマーケティングに必要な戦略についての仮説を書いていきたいと思います。

1.B2Bマーケ、頭打ちになってませんか?

B2B企業の多くが抱える問題、それはマーケティング効率が頭打ちになってしまうというものです。皆さんもこんな課題ありませんか?

B2Bマーケティングの課題
・デジタル広告で、成果が出なくなってきた
・ホワイトペーパーやセミナーのリードが受注につながらない
・認知広告を打ちたいが、どうして良いかわからない
・認知施策をどう効果測定するか、成果が出るか自信がない
・CPAやCACを下げる方法がなく苦戦している

かつて私もこうした課題を抱えていたマーケターの一人です。

2.B2Bマーケティングの新戦略仮説

私も同じような課題を抱えている上で、何とか成果向上をできないかともがき苦しみ、突破口を模索してました。今回はその中で考察し、検証しつつある仮説についてシェアしたいと思います。まだ仮説なので、様々な方のご意見をいただきながら、ブラッシュアップできればと思います。

まず、そもそもB2Cマーケティングにはない、B2Bマーケティングのもつ原理とは何でしょうか?
前提となる3つの原理があると考えます。

B2Bマーケティング 3つの原理
1.領域の専門性

B2Bでは、各領域で専門性が高く、
顧客が課題を正しく理解することが難しい
2.購入機会の限定性
B2Bでは、顧客の購入検討期間が長く、
ビジネスサイクル(*)に依存するため、
購入タイミングが限られている
(*会社の決算、予算見直しなどにより検討する可能性など)
3.意思決定の合理性
B2Bでは、顧客は「売上を上げる」or「コストを下げる」
そのROIと確からしさで意思決定する

こうした原理から、B2Bマーケティングでは、本質的に3つの戦略領域が重要だと仮説を立てました。

B2BはB2Cより、顧客にとって意思決定が難しく合理的でタイミングが分からない。だからこそ、企業には短期でなく長期視点でアセットとして投資していくマーケティングが求められます。

そして何に対して、アセットとしての投資をすべきか?顧客には課題啓蒙すること、自社には顧客からの信頼を醸成すること。そして、顧客と自社の接点を最大化すること。それぞれに対する領域を定義してみました。

それぞれについて、以下で具体的に説明していければと思います。

戦略仮説1.課題啓蒙 

「原理1.B2B領域は、専門性が高く、顧客が課題を正しく理解していない」という前提に立ったとき、まず顧客が潜在的に抱える課題に気付いてもらう必要があります。まさに潜在的な課題を定義し、顕在化させることで、新しいマーケットを創出することができます。
もちろん、課題を認識しない状態でも問い合わせなどは、一定発生すると思います。しかし、顧客課題を正しく認識していない場合、自社にとって解決できる課題を持っていないケースも往々にして考えられます。
では具体的にどう啓蒙していくのが良いか?

課題を啓蒙するためには、①コンセプトを人が語り広めていく「キーワード」、②コンセプトの内容を構造的に定義する「コンテンツ」が重要だと考えます。

顧客に何か新しい概念を届けるとき、それをだらだらとそのまま説明しても、うまく届きません。特に多くの顧客にその概念を届けたい場合は尚更です。だからこそ顧客が課題を端的に想起・認識できるコンセプトを「キーワード」として設定する必要があります。もちろん「キーワード」倒れでは意味がありません。「キーワード」が意味する具体的な内容についても、体系化、構造化して持っておく必要があります。これが「コンテンツ」です。

例えば、良いキーワード例として、「ダイレクトリクルーティング」や「運用型TVCM」といったものが挙げられると思います。

こうしたキーワードは、今までの「常識」を変える「提案」を内包しています。

例えば、ダイレクトリクルーティングは、
採用はエージェント経由で行うもの→採用は企業が直接行うもの。
運用型TVCMは、
TVCMは出して終わり(運用できない)→TVCMは運用できる。
良いキーワードは、こうした2項対立を持っていることが多いと考えます。

参考) 良い「コンセプト・キーワード」例
・ダイレクトリクルーティング

[今までの常識 (Pre Perception)]
採用はエージェント経由で行うもの
[これからの提案 (Post Perception)]
採用は企業が直接行うもの

・運用型TVCM
[今までの常識 (Pre Perception)]
TVCMは出して終わり(運用できない)
[これからの提案 (Post Perception)]
TVCMは運用して効果を最大化する

新しいマーケットを創出するには、こうした「キーワード」「コンテンツ」を定義し、課題を啓蒙する活動を一気通貫して継続的に行い続けていくことが重要です。

戦略仮説2.接点最大化

「原理2.B2B領域は、タイミングが限られている」であれば、企業からすると、いつ顧客が購入検討してもらえるか分かりません。もちろん購入検討のトリガー*となるイベントを抑えるなど方法はありますが、多くの業界にとっては実質かなり難しいと言えます。

購入検討のトリガー例
・不動産における現オフィスの契約更新タイミング (契約)
・産業医における従業員50人を突破するタイミング(法律)
など

むしろ重要なのは、顧客が課題に直面し、購入検討した時に、「xxならxxサービスを検討しよう」と想起されることです。この状態を達成するためには、企業としては自社の戦略ターゲットにおいて、できるだけ多くの顧客と頻繁に接点を持っておくことが求められます。

接点の最大化=「接点の量」 × 「接点の質」

「接点の量」についてはリードやハウスリストの数と想定できます。厳密には戦略ターゲットのリード、ハウスリストです。

一方で、「接点の質」についてはあまり言語化されてこなかったと思います。接点の質は、顧客視点で考えると、「意味のある接点、すなわちビジネスにとって有益な接点」であると言えます。先ほどもあった通り、B2CではなくB2Bの顧客が求めているものを考えると、顧客のビジネスにとって有益な機会、情報、ネットワーク、学び・気づき、こうしたものを提供できているかが重要だと考えます。

「接点の質」= 顧客にとってどの程度有益なものを提供できているか?


戦略仮説3.信頼醸成

顧客がB2Bサービスを導入するのはなぜでしょうか?本質的に考えると2つの理由しかないと考えます。

顧客がサービスを導入する理由
1.コストを削減できるから
2.売上・利益が増えるから

もちろん社員の工数削減なども1に内包されます。セキュリティなどリスクを最小化するものも1に含まれると考えます。
ただし、これだけでは即導入とはなりません。1もしくは2の効果が、どの程度確からしいかということも重要です。

「成果が出る & 確からしい」この状態をいかに作れるかが重要です。この状態を敢えて表現するとすれば「信頼」と言えます。すべてのマーケティング活動を通じて、この信頼をアセットとして積み上げていくことこそが重要だと考えています。

信頼される理由例
・成果がでるロジックが確からしいから
・導入後、継続して機能する可能性が高いから
・過去(前職なども含め)導入し成果が出たから
・同様の事例で成果が出ているから
・信頼できる専門家が保証しているから
・担当者が信頼できるから

これら3つの新戦略を、よりシンプルに捉え直すと、以下のような構造になります。顧客課題を啓蒙する。自社の信頼を醸成する。顧客と自社の接点を最大化する。

「課題啓蒙、接点最大化、信頼醸成」の3つに対して継続的に投資し、アセットとして蓄積することが重要だと考えます。

3.マーケファネル→ビジネスファネルへ

これら3つの戦略は、必ずしもリード獲得、商談獲得といった上流のマーケティングファネルだけに効くものではありません。セールスにおいても、カスタマーサクセスにおいても、極めて重要な考え方です。例えば、カスタマーサクセスにおいても、顧客が課題を正しく認識すること、サービスの成果について信頼していることは、LTVを上げる上で大切になってきます。

裏を返せば、これらの施策はマーケティングファネルだけに効果をもたらす考え方で行っていては、大きな機会損失があると言えます。むしろビジネスファネル全体に効果をもたらすことで、ROIを最大化していく発想が重要です。

前提の考え方
× 「リード・商談獲得」だけを効率化する
◯「リード・契約・継続」の全ファネルを効率化する

ここで重要になってくるのは、組織とKPI体制です。マーケティングチームが各レイヤーでどのKPIを持つのか?少なくともマーケティング全体を見る責任者はビジネスファネル全体について考える必要があり、またそのためのKPI設計を行う必要があります。


4."The Model"との関係性は?

B2Bマーケティングというと、誰もが知っているのが、「The Model」のフレームワークです。この3つの戦略仮説(敢えて「Theree Model」と呼びます)は、このThe Modelのファネル全体を進めるエンジンの機能になります。マーケティングチームが、Three Model の「3つのエンジン」をうまく機能させることで、ビジネスファネル全体の効率を飛躍的に上げていくことができると考えます。

"Three Model"に対する継続的施策をしながら、"THE MODEL"でゴール・現状の把握をしていく。

「THE Model」×「Three Model」このモデルを作ることが重要です。

"The Model" × "Three Model"



5.B2Bマーケティング 4つの新主戦場

では、これら3つのエンジンを機能させるために何をすれば良いでしょうか?今までには無い、今までより圧倒的に重要になる、4つの領域があると考えます。

1.(新)コンテンツマーケティング

コンテンツマーケティングと聞くと、もう一般化した概念かもしれません。ただ、実際多くのコンテンツマーケティングが、マーケティングのリード獲得のみを対象にしたSEOなどを実施している企業が非常に多いかと思います。こうしたコンテンツで確かにリードは獲得できるかもしれませんが、本当にそのリードから受注できているでしょうか?実際、オーガニック検索やリスティング広告経由のリードより、商談率や受注率がかなり低い場合が多いと考えます。

コンテンツマーケティングの考え方を変えてみましょう。商談設定率を向上させるコンテンツとは?受注率を向上させるコンテンツとは?

受注率を1%でも上げるための課題啓蒙、信頼獲得のためのコンテンツを実現できた方がよりビジネス全体に大きな成果をもたらすはずです。
また、実際そのようなコンテンツの方が、契約につながる顧客をリードとしても獲得できる可能性が高いと考えます。

例えば、商談が設定できない、受注できない理由を分解してみます。その際に大きくは「顧客が課題を十分に重要or緊急だと認識していない」「顧客がサービスによるインパクトと確からしさを認識していない」に分類できると思います。それぞれの要素をより確からしいものにするコンテンツは、うまく活用することで受注率向上に貢献することができます。

単なる“集客”ではなく、課題啓蒙&信頼醸成し、リード→契約の効率を改善するコンテンツマーケティングがこれから重要になってきます。

参考になる施策を紹介できればと思います。

良い施策例
WACUL "TECHNOLOGY & MARKETING LAB"
私が愛読しているWACULの"TECHNOLOGY & MARKETING LAB"はまさに、マーケティングに関する様々なファクトを世に繰り出すことによって、マーケットにおける信頼を醸成している素晴らしいアクションだと思います。(内容もためになるものばかりなので、マーケターの皆さんは必読です!)


2.コーポレートブランディング

B2BはB2Cよりも営業やカスタマーサクセスにおける顧客接点が長い、カスタマーサクセスまたそれ自体がソリューションになっていることから、営業やカスタマーサクセスを含めた社員のビヘイビア(言動)自体が商品・サービスであるととらえらえます。としたときに、ブランド全体が目指す方向性に、彼らのマインド、ビヘイビアがあっている必要があります。

また、B2BはB2Cよりも、社員自体がSNSやリファラルなどを通じてビジネス貢献できる度合いが高いと言えます。だからこそこうした活動自体もいかに仕組みを組みながら接点最大化を実現していくかも重要になってきます。

こちらも参考になる施策を紹介できればと思います。

参考)良い施策例
for startups ヒューマンキャピタリスト

厳密にはB2Bではありませんが、コーポレートブランディグから社員一人ひとりまでブランディングしている素晴らしい事例として for startupsヒューマンキャピタリストをあげたいと思います。(ぜひ詳細はWEB、SNSなどで確認してみてください。)


3.ステークホルダーリレーション

基本的に「人」が信頼するのは、「モノ」ではなく「人」である。この原理に立ち返ると、信頼性を獲得するために、どのような人を巻き込むかという観点は非常に重要になってきます。

経営層として、必要なステークホルダーを社外取締役として巻き込むという方法もありますし、専門家や専門機関との連携ということも考えられます。いずれにしても重要なのは、単に認知獲得を目的とした短期的なインフルエンサー施策ではなく、信頼獲得を目的にした中長期でのステークホルダーとの関係値構築であるということです。

参考になる施策を紹介します。

参考)良い施策例
GrowthX
マーケティング人材育成サービスであるGrowthXは、経営層や社外関係者含め、マーケティングの最前線で専門性高く活躍されている方を中長期で巻き込みながら、信頼性を獲得している素晴らしい事例だと考えます。(あまり細かく記載すると野暮なので、ぜひ詳細はご自身で確認してみてください。)


4.マーケティングイネーブルメント

1-3に共通するのは、マーケティングファネルだけでなく、営業やカスタマーサクセスまで含めたビジネスファネル自体の効率を最大化するという考え方です。この時に大きな障壁になってくるのが、ファネル全体の管理です。つまり、リード獲得から受注・継続まで、マーケティング、セールス、カスタマーサクセスが、一気通貫したデータ・ファクトを持っておく必要があるということです。
今まで、特に外資系を中心として、セールスイネーブルメントという組織が浸透してきましたが、セールスイネーブルを内包するビジネス全体をイネーブルメントするマーケティングイネーブルメントが求められると考えます。

いかがでしたでしょうか?

冒頭にも記載した通り、これらはすべてまだ仮説にとどまっているもので、再現性高く実現できいるものではありません。様々な方からご意見を頂きながら、また自社やご支援先でも活用しながら、再現性の高い仮説を作っていければと思います。


是非、Meetyで、B2Bマーケティングについて、ディスカッションしましょう!!よろしくお願いいたします。


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