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ブラジル代表も育ててきたコリンチャンスの選手育成概論

※この記事は2014年にストライカーDXブラジル通信で書いた記事をリニューアルしたものです。

皆さんはコリンチャンスというクラブをご存知ですか?

2012年にクラブW杯を制し、欧州以外から世界一になった最後のクラブです。

2010年近辺のコリンチャンスの育成からは、ブラジル代表でもチェルシーでもレギュラーに君臨するウィリアンや、後のJリーグ得点王のジョーと、PSGの砦マルキーニョス、欧州が注目する次のスター候補生のマウコン、アーセナルの超新星マルティネッリなどが出ています。


今回はそんなコリンチャンス育成部門の、育成方針を紹介していきたいと思います。

コリンチャンスの育成部門にはU10〜U20までがあり、大きく分けるとU15以下とU16以上で責任者が違い、育成の仕方も変わります。

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過去に所属した初代ロナウド()

🌟「U15以下のカテゴリー」

まず、U15以下のカテゴリーでは、試合結果を上のカテゴリーに比べ、比較的重視しません。
また、体の小さい子や、フィジカル能力の低い子に関しても、忍耐強く成長を待ち、育成していきます。


最近の例としては、欧州も注目し、ブラジル国内でも次の世代のスター候補の1人とされる、コリンチャンス育成出身のマウコン選手。
彼がまだコリンチャンスU15にいた頃は、技術的には非常に優れていましたが、身体的な発達が他の子より遅く、苦戦する場面が多かったと育成のコーチ陣は口を揃えます。

しかし、17歳でTOPチームへ昇格すると、レギュラー選手の怪我を機に試合出場、良い意味で周囲の予想を裏切り、活躍。
今では次期ネイマールなどと呼ばれるまでになりました。

選手のポジションに関しても、あらゆる可能性がありますし、あまり限定的にはせず、柔軟に対応していきます。

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🌟「U16以上のカテゴリー」


U15以下と比較して、試合結果や大会成績を気にしだすのがこの年代からです。

体も出来上がってきて、TOPチームに上がる直前のこの年代では、結果の出せる選手、能力の高い選手はU20に進まず、U17あたりからそのままプロになる事もあります。
当然、TOPチームとの連携も強くなり、TOPチームとの選手情報の交換・話し合いは頻度が増します。


この年代からはビデオ分析を担当するスカウティング専門のコーチ部隊が本格的になり、毎試合欠かさずデータを取り、活かしています。

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TOPチーム監督。コリンチャンスを世界一に導き、現在はブラジル代表を率いるチッチ監督。

🌟「育成全体の共通点」


U15以下とU15以上の年代に大きく分けられるとは言っても、勿論同じ部分もありますし、連携は常にあります。

U10〜U20、TOPチームまでの一貫した育成計画があり、各カテゴリーのコーチがその計画に沿った上で、それぞれのコーチの個性・持ち味を発揮していきます。

連携面に関しても、上のカテゴリーのコーチが下のカテゴリーのチェックを行ったり、時には直接選手への指導をする事も珍しくありません。


また、全年代で練習中にGPSを装着し、走った距離などのデータを取り、まとめてあります。
通常のコーチ以外にも、フィジカルコーチ、メディカルトレーナーは常に帯同しますし、施設内にある食堂にも栄養士と料理人が常駐しています。
育成に必要な専門家達が揃っています。

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コリンチャンスは人間育成にも力を入れていて、子供にとっては、学校で過ごす時間が長いという事もあり、学校とも連携しています。

また、国際交流も大切にしています。
育成部門の指導者にはブラジル人は勿論、日本人、韓国人、アルゼンチン人がいますし、中国人の短期留学生を受け入れる事もあります。
今回の東京行きもそうですが、国際大会にも積極的に参加していきます。

もともと国として多人種・多文化な側面のある国ですし、こういった育成年代からの国際交流も経て、欧州を中心に世界中で活躍するサッカー選手が育つのかも知れませんね。

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レアル・マドリードでも活躍した"悪魔の左足"
ロベルト・カルロス

🌟「これから取り組んでいく事」


南米では子供のうちから選手に代理人がついている事が多いです。
代理人が親という事もあります。
サッカーにおいてビジネスは益々大きな部分を占める様になってきてきますが、コリンチャンスでは、より良い選手がいるのに、不当な理由で他の選手を優遇するということはありません。
また、その選手の未来は、その選手がどうしたいかを重視し、選手の判断に任せます。
ブラジル人が考える力が強いのは、このためかも知れません。

一昔前から日本では特に顕著ですが、最近ではブラジルでも、パソコンやゲームで遊ぶ子供が増えました。
とは言っても日本ほど裕福ではないし、税金の関係でPS4は約20万円!ブラジルの平均月収2〜3ヶ月分。
以前のブラジルと比べての話です。

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また都市部では、以前ならサッカーをやれたスペースに、今では建造物が立ち並び、ブラジル人の創造性豊かなサッカーの源ともされていた、伝統のストリートサッカーは少し減ってきています。
まだ見かける事もありますので、これも以前のブラジルと比べての話です。

コリンチャンスは総合型スポーツクラブになっているので、天然芝、人工芝のサッカー場以外にも、フットサル場、ビーチサッカー場もあります。
バスケ、バレー、プール、テニスもあります。
色々な形のサッカー、またはその他スポーツに関わる機会がまた増えていき、どんどん新しい創造性溢れるスターを生み出していきたいです。

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今回はここまで。
概論という事で、外に出せる大まかな情報のみとなっています。
また、少し古い情報でもあります事はご容赦願います。

※この記事は2014年にストライカーDXブラジル通信で書いたものを少しリニューアルした記事です。
最近のコリンチャンスはまた更に進化しています。

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