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Finatextの10年を振り返ってみる

この記事はFinatextグループ10周年記念アドベントカレンダーの27日目、最終日の記事です🎉 昨日はCFOの伊藤さんがAppleの金融業参入の衝撃と分化していく金融サービスの担い手という記事を公開しています。

Finatextは2023年12月27日で設立10周年になりました。あまりにも実感なさすぎてスルーしかけましたが、節目ということもあるので、Finatextグループ10周年アドベントカレンダーの最終日の記事として、どんな10年だったか振り返ってみたいと思います。

泣かず飛ばずからの1年からのかろうじての離陸

最初の1年は本当に泣かず飛ばずでした。仕事はなくて時間は無限にあったので、創業メンバーで毎日のように一緒に晩御飯を食べてました。神保町の飯屋はほぼコンプリートしました。中でもトンカツのいもやは僕の中で一番美味しかった記憶があり、何か良いことがあったらお祝いでみんな食べに行ってました。なので2018年に閉店した時は本当に悲しかったです。
 
もちろん賃料を払うお金もないので、他社のオフィスの会議室を間借りしたり僕の自宅で仕事したりしてました。最初に借りた九段オフィスは、男女共用の和式トイレ1つしかない、会議室すらないところでしたが、引っ越し初日に「もう自分たちは全てを手に入れたのではないか?」と錯覚するくらい嬉しかったのを覚えています。

37度ある真夏の炎天下、引越し代をケチるために手搬送して死にかけました

その後、かなりの試行錯誤を繰り返し、2014年10月に大手ネット証券との協業案件をついに実現します。そこから少しずつ業界で知られるようになっていきました。スタートアップブーム、かつオープンイノベーションが流行り始めたタイミングいうこともあって、その後も大手金融機関との協業をいくつかさせていただき、少しずつビジネスが拡大していきました。
 
当時は半端ないエセ感のある白ぶちメガネをかけて、大した実績もないのに今よりもさらに自信満々でピッチしていたので、あらためて振り返ると結構やばいやつだったなと思います。協業を決めてくれたパートナーの皆様の懐の深さには感謝しかございません。

ベンチャー同士のM&Aから、拡大路線へ

そこから2016年夏には、日本のベンチャーにしてはめずらしいM&Aを経験し、データ領域に事業を広げていきました (これは別に詳しくnoteを書きましたのでぜひご覧ください) 。かなり苦労はしましたが、なんとか事業をターンアラウンドさせて売上も利益も拡大させていくことができました。同時に体重も0.1トンを突破することになりました。みなさんに伝えたいのは、深夜にコンビニご飯を日常的に食べるようになると一瞬で体重は増えるということです。

渡辺努先生の最高の笑顔の写真が奇跡的に撮れました

2018年には根本から金融をアップデートしていきたいという思いから、現在の最注力事業である金融インフラストラクチャ事業に参入することになりました。これも振り返ってみると、証券の基幹システムをクラウドベースでイチから作ろうとするのはかなり無謀だなと思います。無知だから、後先見ずに突っ込めたんだろうなと。創業メンバーのエンジニアを筆頭に、多くのメンバーのがんばりでなんとか出来上がったのは、本当にすごいことだなとしか言えません。

同時に、今までは利益を当然出すことが当然だった日々から、おもいっきり投資モードになりどんどん赤字も拡大していくフェーズに突入することに。時代はスタートアップの黄金期。ユニコーン、デカコーンというフレーズを毎日のように聞く日々だったので、Finatextグループもその恩恵にあずかり、無事に資金調達をしておもいっきり拡大路線に舵を切っていきました。

第一子の誕生からの人生最大試練

証券インフラの第一号のパートナー案件の開発が着々と進んでいる中、2019年6月に長男が産まれました。まさに公私ともにどんどん行くぜ!と思っていた矢先に、妻が重度の産後うつを発症しました。トップとして第一線で働くことができなくなる事態になりました。慣れない子育てと、妻の看病、そしてトップとして第一線にいれない苦しみから一時は代表を辞任しようかと真剣に考えたこともありました。全体会議で涙をこらえてメンバーに対して申し訳ない気持ちを伝えたことを昨日のことのように覚えています。間違いなく人生で最大の試練だったかと思います。

でも自分が第一線にいられなくなったことで、もともと頼もしかったCFOや事業責任者のメンバー達が、さらにがんばってくれてサポートをしてくれました。その甲斐もあって、妻の病状も徐々に回復し、その経験を活かして保険インフラの第一弾の商品である母子保険をローンチすることにつながりました。妊婦さん向けの保険で、当時は日本で初めて産後うつも保障するという特約を入れたのは自分自身の経験を強く反映してのものです。

コロナ危機から空前のDXブーム。組込型金融の盛り上がり

妻の体調が少しずつ良くなってきた2020年3月から、今度はコロナ危機が世界を覆います。一番最初の緊急事態宣言では、これからの世の中どうなってしまうのだろう?とかなり不安になったのを覚えています。まったく外出ができなかった2020年5月のゴールデンウィークに集中して、逆にコアメンバーみんなきっと予定がないということで、これを機会とばかりに会社のビジョン、ミッション、そしてカルチャーをあらためて話し合ってフィックスしよう!となりました。その時に、定めたビジョン、ミッション、カルチャーは今も変わらずFinatextグループのセンターピンとなっています。

コロナで対面での顧客接点が持ちづらくなったこともあり、逆に日本ではDXの動きが一気に加速しました。その流れを汲んで、欧米でトレンドになっていたEmbedded Finance(組込型金融)の概念が、黒田・日銀前総裁がFIN/SUMの基調講演で触れたことをきっかけに一気に日本でも脚光を浴びるようになりました。大手の金融機関が新しくデジタルブランドを立ち上げたり、非金融事業者がフィンテックサービスに参入したりといった動きが、日本で盛り上がりまくりました。

当然、金融サービスを立ち上げるにはそれを支える基幹システムが必要。ただ、従来のSIerが作ったシステムだとどうしても採算が合わないし、導入スピードがあまりにも遅いし、リリース後のPDCAも柔軟に行えません。そこでクラウドネイティブでモダンなアーキテクチャで金融インフラを提供していたFinatextへの注目度が一気に上がっていきました。日本を代表する金融機関や事業会社から、新しいブランドではあるもののインフラレイヤーでの協業を実現することにつながりました。とにかくタイミングが良かったの一言につきます。日本の成長企業に対する市場のセンチメントもかつてないほど良かったこともあり、Finatextホールディングスは2021年11月16日に上場承認を受けることになるのです。

忘れもしない上場日

そして、2021年12月22日に東証マザーズ上場を果たします。創業者にとって本来はとてもめでたいはずの上場初日。しかし、Finatextホールディングスは上場初日にストップ安で終えるという想像しうる最悪の資本市場へのデビューとなりました。信じてついてきてくれた投資家の皆様には今でも申し訳ない気持ちでいっぱいです。いまだにこの日が夢に出てくるくらい悔しかったのを鮮明に覚えています。一度失った信頼は簡単には取り戻すことはできませんが、絶対に信じてくれた投資家に報いると心に誓った日でもありました。

平和不動産様のKABUTO ONEにて

翌年の2022年から新興企業に対する市場環境はどんどん厳しくなっていき(本来あるべき姿に戻っているだけという話かもしれませんが)悔しさを噛み締める続ける1年となりました。1290円の公開価格から一時は約1/4になるまで株価も下がり、それをみて取引先も不安に感じたり、社内でもなんとも言えない空気感が漂うようなそんな厳しい年になりました。もちろん株価というのは外部評価でしかなく、本質的な事業価値を反映しているわけではないものの、モメンタム(この会社キテるかどうか?勢いにあるか?)というのは事業展開においても社内の雰囲気的にもとても大事なことであり、意味で資本市場に評価・注目され続けるというのはとても大切なんだなと上場して初めて腹落ちすることができました。

唯一救いだったのは、上場後のFinatextグループの業績は順調に拡大していったという点です。市場を含む外部の評価というのはコントロールできませんが、自分たちできることは顧客に向き合うことでより良い成果を出し、従業員を幸せにして、誠実に投資家と対話しつづけることだと吹っ切ることができました。そんな自分の心境を投資家も察してくれたのかはわかりませんが、それくらいから株価も底を打って少しずつ回復してきました。12月27日時点ではまだまだ公開価格とは距離があるものの、現実から目を背けずに向き合い、どれだけ時間がかかっても必ずや公開価格に戻せるように全力をつくす所存です。

捨てる神あれば拾う神ありな10年間とこれから

ざっと振り返るとそんな10年でした。まさに捨てる神あれば拾う神あり。パッとしないこともあれば、アゲアゲなときもあれば、大変な事態になることもあれば、真っ青になるようなやばいイベントももりだくさんな10年。きっと、次の10年も同じように良い時も悪い時もある感じになるんだろうなと思います。

まだまだスタートラインにすら立っていないつもりなのですが、ここまで来るのに一番大事なことってなんですか?ってよく聞かれる時に僕が絶対に答えているのは「運」ということです。元も子もないように聞こえますが、特に初期のスタートアップが頭一つ抜けるためという文脈で言うと、運が90%を占めてると言っても過言ではないと思っています。Finatextがここまで来れたのもすばらしいメンバーと取引先と投資家に恵まれたおかげであり、それは運以外のなにものでもありません。ただ、運は少しだけ呼び寄せることができると僕は10年間会社をやってきて学びました。

創業してから上場するまでの10の学びでも書いたのですが、運というのは平等なように見えますが、後ろ向きな人には絶対にきません。というか後ろ向きな人は来てもスルーしてしまっていると思います。悲観は気分、楽観は意志なのです。Finatextも数々の絶対絶命か!?!?みたいなことがありました。でもその時でも腐らず、痩せ我慢でもいいので前向きに構えていると思わぬ方向から福が訪れたりしました。これからの10年も、どんなことがあっても前向きに仕事し続けることができればきっと困難も乗り越えられると確信しています。

ちなみに10周年を迎えるこのタイミングでグループでちょうど300人になりました。映画「300」は僕がもっとも好きな映画の1つでもあり、300人のスパルタの精鋭達が100万人のペルシア軍に降伏せずに果敢に挑んでいくストーリーが厨二病かもしれませんが本当に大好きです。Finatextとかぶるなと思うんですよ。なかなかそう簡単に切り崩せない、金融の基幹システムという巨大なマーケットに自分たちが技術の力で果敢に挑む。結束が固く、ツヨツヨな仲間達とともに。

あらためて、一緒についてきてくれたメンバー達。実績が少ない弊社を選んでくれた取引先の皆様。そして、Finatextが日本を代表する会社になるかもしれない!と信じて投資してくれた投資家の皆様。本当にありがとうございました。これからのFinatextの10年にもぜひ期待してください!


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