"Da 5 Bloods"
スパイク・リー監督の最新作である"Da 5 Bloods"を見た。
ちなみに邦題は"ザ・ファイブ・ブラッズ"で、黒人英語等では、"The"は"Da"と発音するらしく、あえて原題では"Da"としたのだろう。
原題の方が邦題では伝わらないニュアンスがあったので、以下でもあえて原題で書いていく。
先月からNetflixで配信されている映画で、配信当初から気になっていたのだが、
2時間半という長尺がネックで見ていなかった。
しかし、いざ見てみると2時間半なんてあっという間だった。
Marvel Studioの"ブラックパンサー"でお馴染みのチャドウィック・ボーズマンや、"LEON"のジャン・レノなんかも出ている。
あらすじは以下の通り。
しかし、この映画の話をする前には、スパイク・リーの話はしなくては。
彼の作品の多くは人種差別について描かれている。(僕は彼の作品を全て見たわけではないのだが。)
また、映画の中で、実際に撮影されたキング牧師のスピーチや、黒人のデモの様子の映像が流れることもある。
"Da 5 Bloods"も例の通りだ。
そのようなことがあり、彼の映画は非常にメッセージ性が強い。
彼の作品は色々あるが、"Da 5 Bloods"の一つ前の "BlacKkKlansman"は2019年度のアカデミー賞にて3部門でノミネートされ、その中の1つの脚色賞も獲得している。
この映画も黒人差別について描かれていて、
よく見ると原題の"BlacKkKlansaman"に含まれているKKKが登場し、これもまた実際に撮影されたデモやスピーチの様子が流れる。
これは現在だとAmazon Primeで視聴可能。
話を"Da 5 Bloods"に戻そう。
この映画はベトナム戦争が世に残したものを、黒人の視点から描いている。
ベトナム戦争をテーマにした映画はたくさんある。
"プラトーン"等の戦争映画はもちろん、"タクシードライバー"なんかではPTSDについて描かれている。
これらの映画のほとんどは白人の視点で、黒人の兵士はあまり登場しない気がする。(記憶だと、フォレストガンプのババしか思い出せない。)
「じゃあ実際黒人はどれくらいいたの??」って話になるのだが、アメリカ全体で黒人の割合は10%ほどだが、ベトナムに行った兵士の30%は黒人のようである。
アメリカ人の間ではこれが周知の事実であるのかもしれないが、僕にとっては初めて知ることであった。
また、劇中では"地獄の黙示録"を意識している(気がする)。有名なBGMも流れるし。
"地獄の黙示録"もベトナム戦争をテーマにした映画で、これは、戦争がいかに人を変えてしまうか、ということがテーマになっている。
スパイクリーがこの映画をどう認識しているかは知らないが、似たような感じになっている。
"Da 5 Bloods"と"地獄の黙示録"と根底にあるテーマは同じで、そこに黒人ならではの視点を加え、"地獄の黙示録"とは違って誰にでもわかりやすくしたような感じ。
黒人アメリカ兵とベトナム娼婦の子どもが"ゴキブリ"と呼ばれ蔑まれた話なんかはこの映画特有だろう。
最後に、この映画はGeorge Floyd氏が亡くなったことによるBlack Lives Matter運動の最中に配信された。
意図していたことではなかったと思うが、この映画の中でも様々な人物が人種差別について訴えている。
ベトナム戦争は1975年に終結したが、現在とあまり状況が変わっていないことを残念に思う。
スパイクリーの映画を見たことがない人はぜひ一度見てみて欲しい。
Black Lives Matterという言葉をたくさん聞いた今だからこそ、見て欲しい映画のうちの1つだ。
もちろん、ただメッセージ性があるだけではなく、ストーリーも面白いものになっていると思う。
"地獄の黙示録"を見たことがある人はそれを意識したような演出を楽しめると思うし、画角なんかにもこだわりが出ている。
劇場ではなくNetflixでのみ配信というのはネックかもしれないが、これはベトナム戦争を語る上で外せない映画となるだろう。