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クライアントワークのすゝめ

こんにちは、グッドパッチの酒井です!本日は第3弾です。このnoteを書くきっかけは、学生インターンに参加した時に、学生の方からもらったこの質問です。

「自社プロダクトやサービスを持っているメーカーやサービス事業者ではなく、デザイン会社やコンサルティングファーム等、クライアントワークを行う会社で働く面白さって何でしょうか?」

確かに、学生の皆さんはもちろん、自社でプロダクト・サービスを展開している会社で長く働かれている方にとって、クライアントワークという仕事はなかなかイメージしづらい部分もあるかと思います。そこで、本日は、クライアントワークの醍醐味について自分なりの想いや考えをお話をしたいと思います!

クライアントワークの定義

本noteで、クライアントワークという場合、ざっくり、
「クライアントから依頼を受け、一定の期間の中で、無形か有形か問わず、何らかの助言や成果物を提供することで、対価を得る仕事」を指しています。

クライアントワークという言葉ですが、投資活動等を除き、ほぼ全ての会社がB2Bであれ、B2Cであれ、モノやサービスの提供を通じて、クライアントから対価を得て、事業を行っているため、ほぼ全ての仕事がクライアントワークとも言えます。ただし、ここでは、自社でプロダクトやサービスを展開しておらず、クライアントから依頼を受け、プロジェクトベースで仕事を行うことを前提としており、コンサルティングファームやデザイン会社、制作会社、開発会社、更には弁護士、公認会計士、税理士等のいわゆる士業をイメージしていただければと思います。

ちなみに、グッドパッチではクライアントワークのことを、デザインパートナー事業と呼んでおり、案件やプロジェクト(コンサルの場合、案件やプロジェクト、他にもエンゲージメント、ジョブ等いくつかの呼び方があります)という言い方をしています。なお、やや宣伝っぽくなりますが、グッドパッチは、Strap(オンラインホワイトボード)、Prott(プロトタイピングツール)等、いくつか自社サービスも展開しており、クライアントワークと自社サービスを両輪でやっています!

クライアントから声がかかるタイミング

そもそもクライアントから外部パートナーに声が掛かるタイミングとしては、どういったケースが多いのでしょうか?

一例を挙げると、
・未来を見据えた中期的なコーポレート・事業戦略・指針を策定したい
・組織や人材が急速に拡大する中で、ビジョン・ミッション・バリューの策定・浸透を図りたい
・優秀な人材獲得や従業員のモチベーション・リテンション向上のために、組織・人事設計を見直したい
・既存業務・ITシステムを見直し、業務効率化やコスト削減を図りたい
・ブランドリニューアル伴い、既存サービスのアプリのUI・UXやコーポレートサイトを一新したい
・買収・資本業務提携あるいは、企業・事業の再生・売却を検討している、買収した子会社のPMIを進めたい 等

少し視点を変えて、事業のライフサイクルの中で見ると、
・新たな事業・プロダクト・サービスを検討している(0→1)
・始めたばかりの事業・プロダクト・サービスのを素早く成長曲線に乗せたい(1→10、10→100)
・踊り場に差し掛かった事業・プロダクト・サービスの再成長を図りたい(100→101)等

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クライアントや案件により声がかるタイミングは様々ですが、このようにクライアント内で重要な意思決定を伴う節目やその前後でお声がけいただくことが一般的です。また、その背景には、ケイパビリティやリソース、タイムライン等の観点から、クライアント単独では課題解決やゴール達成が難しいため、外部パートナーの力と一緒に解決を図りたいという意向があります。

クライアントワークの面白さ

1. とにかく打席に立つことができる

上記のような変革のタイミングは、クライアント内でそう頻繁に発生するものではなく、1つの企業に所属した場合、1人の担当者としてこうした打席に立てる機会はそう多くないと思います。実際に、私が新卒で入ったメーカーでは、自身の実力・経験不足もあり、なかなかこうした打席に立つことができませんでした。

しかし、クライアントワークそのものを生業とする場合、実力や実績次第では、何度もこうした打席に立つことが可能です。

クライアントから依頼を受けて、仕事をしている外部パートナーが、「打席に立つ」ということに対して、少し違和感を持つ方もいらっしゃることあるかもしれませんが、クライアントワークを行う上で、やはりこれぐらいの覚悟とコミットメントが必要だと考えています。

最初は、ピンチヒッターとして打席に立つことになるかと思いますが、コンスタントに結果を出していく内に、気づいたらクライアントと混合チームを編成し、スタメンで2番打者を張っているみたいなイメージです! 
もちろん、毎回クライアントと一緒に打席に立つわけではなく、コーチやGMのような役割を担うこともあったり、その役割は、クライアントや案件により様々です。

ちなみに、グッドパッチでは、「クライアントから、自分たちの事業やサービスが乗っ取られるんじゃないかと心配されるぐらいコミットする」という伝説的なパワーワードがあり、Slackにも「圧倒的当事者意識」という強めのスタンプも存在しています、笑

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Source:集英社 荒木飛呂彦先生作 
ジョジョの奇妙な冒険[カラー版]PART3 スターダストクルセイダース 13巻 ダービー・ザ・プレイヤーその⑧より抜粋  

当然、クライアントワークという仕事の性質上、その道のプロフェショナルとして、価値を発揮し、成果を出すことが強く求められ、プレッシャーもかかり、時としてシビアな局面も少なくありません。また、最初は短距離走を1本走っていたつもりでも、気づいたら短距離走を休みなく何本も走り、結果として、全力で長距離を走る形になり、怪我や故障が起きることもあります。(グッドパッチではこうしたことはありませんので、ご安心ください😸!)

ただし、こうしたプレッシャーを乗り越えて、成果を出し、打席に立ち続けることができれば、個人としてもメキメキと成長することができ、クライアント、更にはエンドユーザに価値を還元することができます!

2. 様々な業界・企業・人と仕事ができる

<以下引用>
この仕事の醍醐味は一つの事業だけではなく、色んな事業に関われるということだ。デザイナーとしては、自分のポートフォリオが増えるし、自分の中で様々な事業のパターンを貯めることができる。自分は元々好奇心が強いタイプなので、一つの事業だけをやり続けるのは厳しいと思ってた。だから、色んな事業に関われるクライアントワークは性に合ってたし、楽しかった。(中略)他の会社の文化に触れられるのも醍醐味だろう。Goodpatchでも過去長くコミットした案件にコミットしたメンバーはGoodpatchの社員でありながらも半分クライアントの社員にも近い感じになっていたと思うので、そこの文化も学べるし2度美味しいのだ。

グッドパッチ代表の土屋のnote「Goodpatchがクライアントワークを続ける理由」にもある通り、様々な業界や企業、人と仕事ができることは、クライアントワークの魅力の1つです。

新しい案件で業界やクライアントが変わる度に、
「こんな業界構造になっているのか!」
「ここまで徹底してサービスを作りこんでいるからこそ、これだけのユーザ数を獲得できているのか!」
「これだけの大きな規模の会社なのに、新しいことにチャレンジできるカルチャーが根付いているなー」 等 

常に発見や学びが多いです。前回のnoteでも触れましたが、好奇心が旺盛な方には、クライアントワークは向いていると思います。

私自身、これまで幸いも素晴らしいクライアントに恵まれ、案件でご一緒させていただいた方とは、案件を離れた後でも、「最近どうですか?」と定期的に連絡し、食事に行くこともあり、いい刺激をもらっています!
自ら能動的に働きかければ、こうした外との接点・繋がりをつくりやすい環境があるのも、クライアントワークの魅力の1つだと考えています。

3. またクライアントと一緒に仕事ができるのが嬉しい

個人的には、クライアントワークの魅力はこれに尽きる気がします。デザイナーにせよ、コンサルタントにせよ、クライアントワークをそれなりに長く仕事としている人は、案件でのデリバリーはもちろんですが、提案活動や案件づくりが一番好きという方も多いと思います。クライアント対して、提供できるモノやサービスを持っていない故に、ヒトや会社としての実力・魅力がダイレクトに反映される仕事でもあります。

当然、クライアントの期待を超えるパフォーマンスを出し、また一緒に案件をできることは容易ではありません。私自身も、あまりnoteでは話せないような泥臭いこと、時にはクライアントとぶつかること、想定外の自打球やデッドボールを受けることもあり、綺麗事ばかりではありません、笑

しかし、クライアントと同志的な関係性を築き、こうしたハードルを乗り越え、再びクライアントから声をかけてもらい、次のプロジェクトもご一緒できることは、クライアントワークの醍醐味だと思います!

余談ですが、まだ若手コンサルタント時代に、「最後は人間力だ」とパートナーから言われたことがあります。「人間力」という言葉は抽象的ですが、趣旨としては、クライアントに信用されるためには「人間力=信頼力」が必要で、いくら正しいことを論理的に滔々と説明されても、信用できない人の言葉ではなかなか動いてくれない。特に、案件が厳しい局面だと、この差が顕著に出てくるという内容だったと記憶しています。

ちなみに、グッドパッチでは、「信頼の初速」という言葉が使われており、案件の早い段階でクライアントと信頼関係を構築できるよう、時間をかけてキックオフや認識合わせのミーティングを行うこともあります。

5F

これは、グッドパッチに入社し最初の案件のキックオフの際に、クライアントから言われた言葉です。「グッドパッチさん、今後、プロジェクトを進めて行く上で、一緒にこのルールを大事にしていきましょう!」と、この5Fのコンセプトについて教えてもらいました。

5Fとは?
1. Flat
2. Frank
3. Flexible
4. Fun
5. Fairness

・スピーディになっても良いので、走りながら考えるスタイル
・強い当事者意識となり、パワフルに、やんちゃになって一緒に取り組む
・起業家精神で皆がフルに力を発揮する

この5Fですが、正直、これまでのコンサル時代の案件では、あまり意識をすることがありませんでした。とりわけ、もちろん、ファームや担当者のスタンス、クライアントや案件により濃淡はあるものの、依然、コンサルタントにとって「クライアント=お客様」というマインドは根強く、なかなか5Fを実践することは難しい印象です。また、お互い良い緊張感を持たせるために、一定の絶妙な距離を保っていた部分もあると思います。

当然、5Fにも一定の緊張感は存在していますが、クライアントと外部パートナーという関係性を超えて、いいものを作りあげ、そして成果を出すために、一蓮托生でOneチームでやっていきましょうというスタンスが色濃いと思います。

また、「走りながら考える」ということに関しても、コンサルタントの場合、どちらかと言うと「走る前に考える」ことを重視する場合が多く、特徴的だと思います。これは、どちらがいいとか悪いとかいう問題ではなく、時と場合による、どちらも重要でバランスが大事、としか言いようがありませんが、特徴の1つだと考えています。

最後の「起業家精神で皆がフルに力を発揮する」についても、とてもユニークだと思います。少し余談になりますが、「起業家精神」について、グッドパッチの同僚のしゅんすけさんがTwitterで過去、こんなことを言っており、改めてその重要性を認識しました。

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少し脱線しましたが、5Fは、とても素晴らしいコンセプトで、まさにクライアントワークを仕事とするパートナーとしては理想の姿だと考えています。(ちなみに、このクライアントは誰もが知る大企業です。)

業者・先生・アベンジャーズ問題

正直、このパートは書くか迷いましたが、5Fとはやや対照的な姿として、クライアントワークでよく起きがちな問題について少し触れたいと思います。

業者問題
これは、外部パートナーが基本的に受け身の姿勢で、クライアントから言われたことをただやるだけの御用聞き、いわゆる業者さん、ベンダーさんになっているケースです。当然、クライアントから言われたことをやることも重要ですが、それだけでは、信頼されるパートナーになることは難しいでしょう。恐らく、なかなか人工ビジネスから抜け出せず、依頼事項やタスクがどんどん積み上がっていく一方、最後はコスト勝負となり、結局疲弊するだけという結末が待っているかと思います。
なお、ここでは説明のため、業者さんやベンダーさんという言葉を使っておりますが、他意はありません。これはとても根深い問題ですが、自戒の意も込めて。

先生問題
これは、外部パートナーがクライアントの置かれている個別の状況や文脈、背景等をしっかりと考慮せず、自分たちが持っている専門的な知識や知見、ノウハウを一方通行的に提供し、立場が逆転した傲慢な先生スタイルになってしまっているケースです。当然、専門的な知見やアドバイス自体に価値があると思いますが、多くの場合、クライアントから「で、結論は何なんでしょうか?」、「それをうちにあてはめると、どうなりますでしょうか?」等、質問をされても、なかなか噛み合わず、結局、信頼されるパートナーになることは難しいと思います。
なお、こちらも先生という言葉に他意はありません。これもとても根深い問題なので、この辺に留めておきます。

アベンジャーズ問題
上記の2つと少し毛色が異なりますが、これはクライアントが「外部パートナーに任せれば、何とかなるだろう!」と他力本願的なスタンスをとっているケースです。こうした期待は大変ありがたい反面、外部パートナーも、決してアベンジャーズではないので、プロジェクトの成功にはクライアントのコミットメントと協働が欠かせません。これは、案件開始前の期待値設定の問題でもありますが、時折起きることもあります。

最後に

最初の学生の方の質問に少し戻ると、正直、両者を行ったり来たりすることは一般的ですし、クライアントワークをやっている会社も、自社プロダクトやサービスを持っている会社も、どちらもそれぞれ面白く、魅力的だと考えています。メーカーやサービス事業者も、自社のプロダクトやサービスに対して、中長期的にコミットできる点はとても魅力的だと思いますし、クライアントワークを生業としている会社も、これまでご説明したようなたくさんの魅力があります。

自分の適性や今後の目標・キャリア等を考えて、ベストだと思う選択にチャレンジすることが重要だと考えています!
これに関連して、私が好きな「好きなようにしてください」という楠木健さんの本を紹介しておきます。

ちなみに、私は野球はド素人です。

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Source:集英社 荒木飛呂彦先生作 
ジョジョの奇妙な冒険[カラー版]PART3 スターダストクルセイダース 13巻 ダービー・ザ・プレイヤーその⑧より抜粋  



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