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VUCAで、コロナで、漠然とした不安の答えがある場所

今本屋でもAmazonでも売れてる本の1つ、『2025年を制覇する破壊的企業』(山本康正)を、著者の元同僚という知人の紹介で読みました。コロナのせいもあるのでしょう、書店には"未来予測系"の本が溢れていて、「2040年の〜」「2030年は〜」という書名や特集が並んでいますね。




本書が教えてくれること、教えてくれないこと

すごくおもしろかったのは、VCでGoogleでハーバード&東大修士でウォール街まで経験している筆者が描く、5年後の生活・はたらき方です。まさにSFなんだけど、それでも想像できちゃう。本書はそこから始まって、GAFA筆頭に各社がどんな技術とサービスで、どんな未来をもたらすか、大胆に具体的に記述してあります。加えて、

①トレンドとしてのまとめ
②激変する業種
③必要なスキル

と続きます。怖いと思ったり、不安になったり、便利になるなーと感じたり。多少のズレは起きるでしょうし、今回のコロナみたいな事件や天変地異もあっておかしくないですが、ともかく概ねこういう風になっていくのでしょう。そんなことが想像できる本でした。


教えてくれるのは、どういう社会になりそうか、ということですが、
一方で教えてくれないのは、その社会でどう生きるか、ということです。


未来のことはわかりません。しかし、VUCA(Volatility/変動性、Uncertainty/不確実性、Complexity/複雑性、Ambiguity/曖昧性)で、コロナで、日本の閉塞感と経済の行き詰まり、かつインターネット、特にSNSで情報が錯綜するこの2021年は、より一層、何かと漠然と不安になりやすい傾向があるように感じます。

「今のままの会社でいいのだろうか」
「この職種は10年後に存在するのか」
「このスキルで通用するのか」

関心が高いだけに、露骨に煽るようなものもあるでしょう。とにかくそういう時代なのかもしれません。そんなようなことを、本書に触れて感じました。


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近未来のメガトレンドに適応するべきか

いやいや、深く考えなくても、本書のように未来を示してくれるものがあるのだから、それに適応すればいいんじゃないかと、そういう意見もあるかもしれません。現に文中では、2025年に必要なスキルとして、

1. 英語
2. ファイナンス
3. データサイエンス
4. プログラミング
5. ビジネスモデルが読める

の5つを挙げています。とても参考になる指摘だと思います。


とはいえ。まあ、そうだよね、っていう5つですよね。言わずもがな。
つまり、これらのスキルにおいては民間のスクールや公教育などにも反映され、マジョリティが獲得します。それぞれのスキルにおいて点数がつき、受験勉強のような"偏差値的な戦い"が強いられます。処理能力を磨かなくてはなりません。

これからの時代で"偏差値的な戦い"に臨んだ際、これまでなかったきっついことが2つあります。

1つは、これまでは東大を頂点としたヒエラルキーでしたが、グローバル化した社会では、東大生すら"そこそこ"です。上には上が、つまりMIT、スタンフォード、ハーバード、ケンブリッジやオックスフォード生レベルとしのぎを削る世界になります。彼ら/彼女らとの比較で、一定のレベルに至らなければ、いくら需要がある領域だとしても、価値を発揮することは難しいでしょう。

もう1つは、AIです。GAFAの1つに勤める知人の話が印象深いのですが、GAFAで活躍するレベルのビジネスパーソンすら、年々AIに仕事を奪われているとのことでした。数年前に人間がやっていた仕事をやらなくなり、どんどんAIが担う領域が広がっているようです。もしかしたら前述の「必要なスキル」の賞味期限は、生鮮食品レベルかもしれません。
GAFAなどまさにそういったことを感じられる最前線なのでしょうが、とても生々しい話で、衝撃的でした。


不安な未来に備えるにしても、本書で示された道はなかなかの"いばらの道"のように感じます。それでももう我々には、意を決してこの戦いに加わるしか、道はないのでしょうか。



不安を解消する受け皿が日本にない

本来、キャリアの不安を解消する然るべき手段は、上司との1on1ミーティングや、転職エージェント/ヘッドハンターへの相談なのでしょう。しかし残念なことに、ほとんどの場合において、彼ら/彼女らはその役割を果たせていません。


なぜか。


原因の1つは、聴き手の「スキル不足」です。
具体的には、聴くスキル(傾聴力)の欠如です。特に上司世代に多いですが、学生時代から長らく上位下達の文化で育ち、おそらく聴いてもらった経験も乏しいのでしょう。1on1ミーティング、あるいはコーチングなどは重視されて久しいですが、いまだにGoogle検索には悲しいかな「1on1 話すことがない」などが挙がります。

もう1つの原因は「利害の不一致」です。
上司やエージェントは、相手方に望んでることがあります。自身の予算や目標があり、その達成と、不安の解決が必ずしも一致するとは限りません。具体的には、上司は業務遂行の話に、エージェントはえてして本人の意向より、クライアント企業へのハマりやすさ/決めやすさで、いかに効率的に転職を成功させるかに集中します。


繰り返しですが、本書が示してくれることもありました。でもそれはあくまで社会の変化についてであり、その社会でどう生きるかという不安は、このVUCAで、コロナで、日本の未来が明るくなくて、漠然とした不安が生まれてしまったとしても、それを解消する手段が今社会にないのかもしれません。



結論:答えはあなたの中にしかない

どうやらまだまだ社会は変わる。
5年後の社会のことはなんとなく想像できそうだ。

故に、適応するためのキャリアは描ける。
しかし、本当に今から新キャリアに備えるのか。
あるいは、果たして本当にその新キャリアで自分は通用するのか。

そして、こんな不安を誰にも相談できないのか、、、。



ということを、ここまで綴ってきました。

こんな時代に、答えはどこにあるのか。それは、もうあたなの中にしかないと思うんですね。数年前のベストセラーのタイトルのようですが、「どう生きればいいか」の答えを、この時代に、他人に求めるのは終わりにした方がいいんじゃないかということです。

もちろん、これは学習を否定するものではありません。学習はすべて参考情報であって、それによって自ら決める方針や戦略も研ぎ澄まされるでしょう。


バブルが崩壊して20年以上、正解を失った日本は、いまだに「答え探し」をして、道に迷っているのかもしれません。それは国家だけでなく、そこに生きる大人たち・学生たちひとりひとりもです。でも、いつまでやってるんだと。笑 もう2021年です。


これからは、どうやって自分で決めるか、どうやって心の声を聴くか、という時代になる。この未来の予言書を読んで、改めてその思いを強くしましたし、それを実現するための装置でありたいと、決意を新たにしました。大人向けも始めます。



冗長にはならないつもりですが、長いですね。
読んでいただき感謝です。少しでも何か気づきを生めたら、それほど嬉しいことはありません。

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