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いつかすべての高校生・大学生に。始まりの話、その6。保護者・先生の弊害。

「進路は決めたい。
 だけどわからないから、わかったときのために全部を勉強しておく。」

自分がやりたいことを探求することと、日々の宿題やテストの準備を天秤にかけた場合、後者を重くとる人が圧倒的に多いです。将来、どこに行きたいかわからないけど、どこにでも行けるように保険に全力を注ぐ、そういう人がたくさんいます。でも、そういう人はそこにばかり時間を使っているから、そのままで高校2年生になり、高校3年生になり、結局、自分がやりたいことは何なのかわからないまま進路を決めなきゃいけなくなってしまうのです。

また、学生本人の可能性を狭め、また縮こませていると思うのは、やはり保護者と先生の干渉です。「親に聞いてみないと」「先生がこういうことを言った」という言葉を、これまでに何度も聞いてきました。干渉が強すぎると、学生は徐々に自分で決めることができなくなります。親や先生も決して、「〇〇しないと〇〇しないぞ」と条件をつけているわけではありませんが、具体的に「こういうことを望んでいる」「こういうことはしないでほしい」と言われているケースはあって、故に、自分が本当にやりたいことを言えない子もあれば、言ったけど否定されている子もいます。今でも「公務員になりなさい」「地元に残りなさい」と言われる学生は多いです。


軽薄な進路指導

また、学校での進路相談で「自分の強みがわからない」と相談した生徒がいたとします。先生から「なにに楽しさを感じるのか」と聞かれて、「ディベートやディスカッションなど人前で話すのが好きです」と答えると、「人前で話すのが好きなら、弁護士はどうだろう」と返ってくる。学校の先生に言われたら「じゃあ弁護士だな」と思ってしまう学生もいるわけです。しかし、先生の言う「弁護士」は法廷での「弁護士」を想定していて、極めてドラマの影響が強すぎる。いまは、企業の法務部もあるし、弁護士にもたくさんの役割・領域があって、法廷に立ち弁論を交わすのは、たくさんの弁護士の仕事のなかのごく一部でしかない。本当に弁護士として活躍しているのはどういう人か、弁護士という職業に相性のいい人はどういう人かをつゆほども知らない先生が、学生の真剣な進路指導に対して、自らの発言の影響力の強さに無自覚なままに答えている、ということが、実際に起きています。

先生に言われてから自分で弁護士について調べてみて、弁護士という職業に興味を持って、法学部への進学に気持ちが向かえるなら、それはいいことです。しかし、この情報化社会で、その選択に対する根拠がもっとなければ、学生たちはそんなに簡単に絞れません。また、親や先生に言われたからというのは動機としては強くないので、うまくいかないときに、わたしは何のために頑張っているんだろうと気持ちを生みかねません。


大人のせいにできる子どもたち

これまでに印象的だったのは、ある高校1年生の女の子。自分のやりたいことを見つけて駆動していきたいという思いは強かったけど、毎週、毎週、お父さんや先生のアドバイスに翻弄されて、いつも父親や先生の「こうやったほうがいい」「こうやるべきだ」がネクストステップになっていました。

もともとは、やりたいことを見つけたいと言って1on1 collegeに入ったのだから、自分がやりたいことをやってほしくて、いまやりたいことはなにかと聞くと、きちんと自分の考えは出てくるのですが、彼女は結局やらなかった。彼女は、親や先生にやれと言われたことをやることに抵抗はある、とはいえ自分の選択が間違っていたらどうしよう、とずっと葛藤していました。

最終的に彼女が選んだのは、「わたしは人に言われたことをやります。なぜならば、それで失敗したら人のせいにできるから」という答えでした。

その答えは彼女の成長にとってもポジティブではないと伝えたけど、それでも、自分が何かを追求する方向性や進学、重要であればあるほどそれらすべての選択において選択を誰かに委ねたいという結論に至った。何ヶ月も一緒に葛藤をしてきた上での結論だったのでとやかく言わなかったし、双方合意の上で彼女は1on1 collegeを退会しました。

その経験を通じて、1on1 collegeはどんな環境であれ自分でやりたいことを決めていきたい人、自分でハンドリングしていきたい人にとっての場所なのだなと痛感しました。
ただ、あれほど語ったことはきっと彼女にとってもよかったはず。もう1年くらい会っていませんが、たまにどうしているかなと思い出します。今なら、彼女のその意思すら個性と捉えて尊重できるとも思い、悔いが残ります。


(続く)

※これは、高校生・大学生のパーソナルメンター「1on1 college」がどうやって生まれたか、インタビューしてもらった内容を文字におこしたものです。

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