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スタートアップ創業者のキャリアとセーフティネットについて

スタートアップをやっていると、「リスクを取ってすごいですね」といったコメントをよくもらいます。おそらく失敗したスタートアップの話は表に出てこないので、「スタートアップの失敗=キャリアが終わる」みたいなイメージを持っている人が少なからずいるのかなと思います。

しかし、実際のところそんなこともないです。むしろ、僕の観測範囲でいくとスタートアップを創業して、やめる意思決定をしてからキャリア的に成功(何をもって成功というかは難しいですが)しているケースもたくさんあります。例えば、メガベンチャーに就職したり、別の成長するスタートアップで中核的な役割を担うなどです。

実は、Acompanyにもスタートアップの共同創業者やCxO(またはそれに近しいロール)を経験後、Acompanyにジョインして活躍しているメンバーが何人もいます。

なので、今回はスタートアップ創業者にとってのキャリアとセーフティネットについて記事を書いていきたいと思います。

この記事は、『アカンクリスマスアドベントカレンダー2023』の 11日目の記事となります。

創業者の価値

創業者の価値はとても高いと思います。新たな価値を創出するために不確実性に向き合い、とても多くの問題に対処し、物事をより良くするために行動をする。このような性質は多くの人が持っているものではありません。

採用を実施するイチ経営者の視点で、このような性質を持っている方は非常に魅力的です。これは僕だけの観点ではなく、おそらく他に同じように感じる企業はたくさんあります。なぜなら、このような人を採用しようとするとかなりの確率で他社と採用競合するからです…。

ただ、手放しに創業者だから素晴らしいというわけではありません。成功したスタートアップの創業者だから魅力的であるか?というこれも違います。

正直な話、会社が成長していても個人として魅力的かは全く別です。逆に、会社はうまくいかなかったけど、個人としてとても魅力的な方もいます。この魅力に感じる創業経験者には共通する特徴があります。

価値を最大化するためには?

起業を悩んでいる方とお話する中で、「キャリアが途切れてしまうから迷っています…」「学生のときに起業するとキャリアが作れないのが不安です」といったキャリアが途切れるリスクを不安に思っているという内容を耳にします。(僕も冗談交じりに「学生起業なのでキャリアゼロですw」とか言うのも多分よくないのですが)

ただ、個人的に創業経験というのはキャリアの一つだと考えています。メガベンチャー、外資コンサルに務めるなどと同じような粒度です。結局はそのフィールドで「何をやったか」が重要になります。当然、キャリア上素晴らしいと考えられている職場や職種には、チャンレンジの大きさや優秀な方々が集まる環境だったりするので「何をやったか」という観点でもチャンスが多いのは間違いありません。とはいえ、創業経験が劣るのかというと、そんなこともないのではないかと思います。

創業経験をすると、本当に困難な問題に立ち向かいます。自分のキャパを超えるような問題がどんどん降り掛かってきて、運にも味方された上でそれらを乗り越えることができた人が事業を成功に導きます。

Y Combinator CEOのMichael Seibelさんのインタビューでもスタートアップの平均的な結果は「死」であると述べています。そのくらいスタートアップを創業し、成功に導くことは難しいということです。

2つめのアドバイスは、これは99.9%の参加者が死ぬゲームなので、自分の同類と比較してはいけないということです。平均的な結果は「死」なんです。
起業家の多くは、こんな人たちです。
これまで素晴らしいコミュニティに身を置いていて、頭の良い高校に通い、平均以上の能力を持っていたことでしょう。それは素晴らしいことです。良い大学に行って平均以上の成績を収めたでしょう。これも素晴らしいことです。良い企業に入って、平均以上だったでしょう、うん、素晴らしい。でも、もしあなたが平均より少し上の創業者だとしたら、あなたの会社は死ぬんです。行き着く先は「死」。

なぜ日本のスタートアップからY Combinatorへの応募はほとんどないのか?―CEOのMichael Seibelに聞いてみた

なので、スタートアップの創業者たちがどれだけ素晴らしくても平均が「死」なのであれば、スタートアップ失敗経験のある創業者=マイナスと判断することはとても勿体ないことは容易に想像できます。むしろ、創業者の価値として述べたように、新たな価値を創出するために不確実性に向き合い、とても多くの問題に対処し、物事をより良くするために行動できるケイパビリティを持っているならば、非常に魅力的な人物です。

逆に言えば、スタートアップの成否ではなく、上記のような特徴を備えることこそが創業者の価値を高めるのだと思います。それを存分に鍛える厳しい環境に創業者はすでにアクセスできています。当然、価値の最大化という観点では自身が創業したスタートアップを成功させるキャリアが最高だと思います。

つまり、目の前の大量に降り掛かってくる難しい問題に対して目をそらすのではなく、真摯に向き合い、正しいと信じる行動を行うことこそが、創業者たちの価値を(結果はどうであれ)最大化する行動なのだと思います。

また、この行動を実行して来たかどうかこそが僕が感じている魅力に感じる創業経験者とそうでない創業経験者の差分です。つまり、創業者の本気の努力や試行錯誤は大きなセーフティネットになると思います。

ネクストキャリアについて

繰り返しですが、創業者の価値は高いと僕は思っています。なので、いくらでもネクストのキャリアパスが存在すると思います。僕の知人でパッと思い浮かぶだけでも、メガベンチャーのエンジニア、大手事業会社の新規事業担当、急成長スタートアップでマネージャーや執行役員など。

もちろん、すべての企業がうまくいかなかったスタートアップの創業経験者を評価してくれるかというと難しい部分もあると思います。しかし、Acompanyでも創業CTOが複数いたり、スタートアップでCxOクラスで活動してきて、Acompanyに正社員としてジョインして大活躍しています。なので、少なくともAcompanyは創業者を高く評価していますし、積極的に採用したいと思っています。

この話で印象に残っているのがキャディ 加藤さんの下記のツイートです。圧倒的な創業者数の差とエコシステムの成熟度の違いを感じました。

日本ではサクセスストーリーが取り上げられることが多く、まだまだそういったロールモデルに焦点が当たる機会は少ないのだと思います。しかし、今後はスタートアップの理解が進んだり、プレイヤーが増えたり、エコシステムが発展することで創業者たちが別の環境で活躍していく母数も増えていくことは間違い無いと思います。

終わりに

成功したスタートアップのサクセスストーリーは非常に多く、日々目にします。一方で、うまくいかなかったスタートアップ創業者のキャリアはあまり表に出ないし、不透明です。しかし、スタートアップ仲間やクライアント企業など、創業者たちの努力を日々目にしている人達からすると、めちゃくちゃ採用したい魅力ある人材です。よほど不義理を働いたり、ベストを尽くしていないような創業者でなければ、次のチャンスはいくらでもあると思います。

僕自身、創業してから暗中模索の数年間で今後どうなるのかを悩んだこともありました。同じように悩んでいる創業者の方々が目の前の挑戦に全力を尽くせば次に繋がるんだ、という安心感を少しでも持っていただければいいなと思いこの記事を書きました。

途中でも述べたように、創業経験者たちが二度目以降の挑戦の場としてAcompanyを選んでいただき、とても活躍しています。(メンバークラスから執行役員CTOに昇格してる事例も出ています)なので、たとえ挑戦がうまくいかなかったとしても、創業経験者の価値を本当に感じています。

もし、次の挑戦先や今悩んでいる創業者の方がいれば(めちゃくちゃ採用したいですが)フラットに相談やお話もできたらと思うので、ぜひTwitterなどから連絡いただければ幸いです。


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