コンパウンドスタートアップにおけるBiz組織のポートフォリオの重要性について
初めまして。LayerXでパートナーアライアンスチームの責任者をしております東(あずま)です!
アドカレ5日目ということで、よろしくお願いします!
※この記事は8,000文字overで少し長めになっております。読了まで5〜7分ほどお時間を頂戴する可能性がありますのでご了承くださいmm
下記はこの記事の要点のみ抜粋しておきました↓
簡単に自己紹介を記載しておきます。
コンパウンドスタートアップの先駆けとして有名なRippling社には、元起業家が多いというお話がありますが、LayerXにも何名か元起業家が在籍しており、私もその一人でございます。
はじめに
コンパウンドスタートアップって何?という記事は、代表の福島の記事に分かりやすく記載されておりますので、こちらをご覧下さい。
(読んだ後この記事に戻ってきてくださいね??)
先にネタバレをしておくと、
この記事は、LayerXの野望を共に実現するべく、挑戦し続けてくれる仲間を集うためのものです。
壮絶なカオスを迎えている今のLayerXが抱えるイシューを共に解決してくれる仲間を募集中です。
そして、今回語るLayerXのBiz組織の根幹となる「ポートフォリオ」を作る中心に位置しているチームが、
我々「パートナーアライアンスチーム」ですよ!というお話です。
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LayerXの営業・マーケの現状
福島の記事から戻ってきて頂いてありがとうございます。
ここから本題に入ります。
この記事では、福島の記事の終盤に出てきた、「コンパウンドスタートアップの課題」の中の「営業・マーケ生産性の課題」について、言及していきたいと思います。
何が書いてあったっけ?という方のために、該当箇所のみ抜粋してきました。
↓
という訳です。
今となっては、有名なSaaS企業の事業責任者やマネージャークラスが在籍しているLayerXですが、その誰もが経験したことのないイシューが存在しており、この問題を解決するために日々奮闘しています。
また、記事内では、コンパウンドスタートアップとERPの違いについての言及がありました。
私は、元々ワークスアプリケーションズという大手企業向けのERPのセールスをやっておりましたので、両方を知る者として今回の課題を整理していきたいと思います。
(IT業界の偉人的な方々が沢山いらっしゃたので、その方の経歴で企業名を目にしたことがある方が多いかもしれません。)
営業・マーケの課題の整理
それぞれの課題の深堀に入る前に、コンパウンドスタートアップにおける「Biz組織の組成」の難易度の高さをイメージして頂きやすいように、いくつかの前提を記載してみます。
①数ヶ月に一回新しいプロダクトが生まれてくる
②プロダクト毎に、利用する人が違う
③プロダクト毎に、フィットしやすい業種が異なる
④プロダクト毎に、フィットする会社規模が異なる
一つのプロダクトをPMFさせ、THE MODELを使ってスケールさせるというSaaS Biz組織の鉄板の流れに乗せるべく、新たな検証チームが毎Qのように発生します。
その上でNRR最大化の施策も行うために、顧客データの統合という超ビッグイシューも発生します。
結局、「業種」カットの組織を作るのか、「従業員数」カットの組織を作るのか、「プロダクトカット」の組織を作るのか、どれがいいんですか?
少し考えるだけでもカオスです。それぞれメリットデメリットがあります。
(ちなみに、今のLayerXは毎Q組織の作り方が変わっています。カオス!)
この点、ERPはどういう営業活動になるか。
前提、ERPは会社の中の「基幹システム」という位置付けになるため、まずは「業種別のコア業務」を中心とし、そのコア業務を支える複数のサブモジュールを開発する、というアプローチが取られます。
そのため、ERPの営業が一番最初にターゲットにするのは、「コア業務を支える担当部門」になります。
コア業務さえ抑えてしまえば、後は全体最適を逆算し、各部門に対して付随するサブモジュールによる課題解決を行っていく流れになるという訳です。
当然マーケティング部門はコア業務を支える担当部門に対する訴求をしますし、営業組織はコア業務への理解が深い営業の育成、パートナー販売網の設計というアプローチを行います。つまり、ERPのBiz組織は「業種」を軸とした方向性で一致します。
(業種別基幹システムが多いのはそのためです。)
このように、ERPとコンパウンドスタートアップは、「複数の部門に跨るツール」という共通の特徴があるのですが、その開発戦略、営業戦略は大きく異なるのです。
以下では、コンパウンドスタートアップが抱えるマーケティング及びセールスの課題を、「戦略」「実行」「採用」という3つの軸で挙げてみます。
マーケティングの課題
【戦略】
・業種別に異なるチャネル戦略の立案
・会社規模毎に異なるチャネル戦略の立案
・「既存プロダクト」×「新規プロダクト」の訴求案の立案
【実行】
・各チャネル、各施策毎のKPI設計が複雑
・プロダクトtoプロダクトの訴求ストーリーの数が指数関数的に増加する
【採用】
・異なるチャネルの経験者を採用しなければいけない
セールスの課題
【戦略】
・業種別に異なる提案ストーリーの立案
・会社規模毎に異なる提案ストーリーの立案
・「既存プロダクト」×「新規プロダクト」の訴求ストーリーの立案
【実行】
・各種KPI設計が複雑
・商談時のヒアリング事項が流入施策によって異なる
【採用】
・新人営業マンのオンボーディングコストの肥大化
複雑性のハードルを超えたその先へ
ここまで、いかにコンパウンドスタートアップという考え方がBiz現場にカオスを生み出すかを語ってきました。
どう考えてもリソースの限られたスタートアップ企業が取るべき手法じゃないだろと。
でも、逆に思うわけです。
この問題を解決できた時には、「各部門の担当者に最高の体験を」届けることができるようになる訳です。
ただ業務が回るシステムではなく、その上で体験が良いシステムを、届けることができるんです。
これだけの組織的カオスを作ってでも、お客様に良いものを届けるんだという気概を持って経営陣、開発陣はプロダクトを開発しています。
であれば、我々はBizサイドが抱える組織課題に対しての問題解決の手法を作り上げようじゃないか。
「最高の体験を、正しく早く伝えることができる組織」
これを我々が作ることさえできれば、何も問題がないわけです。
LayerXは新しいプロダクトを今後も産み続けます。
当然今後も異なる業種業態、規模のお客様に対して、あらゆる手法を駆使して「正しく早く伝えるフローを構築すること」が必須になります。
これらのカオスを乗り越えるためにLayerXのBiz組織が常に意識して考えなければいけないのは、
「Biz組織のポートフォリオ」
という考え方だと私は思っています。
・今うまくいっているTHE MODELの仕組み
・今軌道に乗っている施策
・今うまくいっている組織体制
いずれも、それだけに固執していてはいけないのです。
うまくいった手法や型を広げる、いわゆるSaaSの分業モデルという王道パターンではこの会社のプロダクトを広げることができません。
常にポートフォリオを意識した上で、新しい手法や施策に投資し続けなければいけません。
(時にはROIに目を瞑らないといけない時も当然あります。)
だって、数ヶ月先には新しいプロダクトが出てきて、あらゆるチャネル、営業手法を検証してPMFさせなければいけないんですから。
Biz組織のポートフォリオの作り方
各業務の担当者の体験に拘り抜いたプロダクトが複数あるという前提をもとに営業戦略を描くと、
というサイクルが発生することが分かります。
このサイクルのことを、この記事では「ストーリー」と定義します。
当然このストーリー自体の数は、プロダクトが増える度に指数関数的に増加していきます。
新しくプロダクトが増える度に、マーケ戦略、営業戦略を練り、仮説を立てて、検証する、という方法を回し続けることによって、
「業種」カット、「従業員数」カット、「プロダクトカット」のいずれを取っても明確な「戦略とストーリー」が存在する
という理想を実現していく必要がある訳です。
しかし、ここで大きな障害が出てきます。
我々はスタートアップなので、「リソース」というキャップが存在します。
限られたリソースの中では、「生産性」が最も重要視されます。
本当にこれが一番良い売り方なのか?これが一番良いターゲットなのか?という疑問を持ちながらでも、現時点で生産性が高い方法を選択して走り続けるしかない訳です。
限られたリソースの中でも、最善の戦略とストーリーを追い求める方法は無いんだろうか。
一見矛盾する問題に対して1年間いろんな角度で考えてきました。
そこで出た結論が、
「生産性の観点で選択できなかった」手法に対して、「アライアンス」というソリューションで全て実現する
という考え方でした。
お客様に体験を提供する上で、いろんなことを考える中で、各部門が諦めざるを得なかったパーツがいくつもあるはずです。
直販部隊は「生産性の最大化」を追い求める組織である。
それとは別に、「顧客体験の最大化」を追い求める考え方を実現する。
直販×アライアンスという手法でBiz組織をポートフォリオ的に設計しておくことで、今後のプロダクト群の拡張時に一早くスケールさせられる座組みを作ることが、コンパウンドスタートアップには求められるのでは?という仮説です。
では、生産性と顧客体験の2軸で組織のポートフォリオを組むとどうなるか。
整理してみたいと思います。
営業戦略の大枠を整理する
このように、「生産性の最大化」と「顧客体験の最大化」で整理することができます。
右側の枠に入っている事項に対して、「社外のリソース」をお借りして実現可能性をアライアンスで模索していく必要があります。
レガシーSaaSのアライアンス戦略の方法として、
「銀行さんとかお客さんいっぱい持ってそうだし紹介してもらおう!」
「大きい代理店さんから抑えたら広くお客さんに紹介してもらえそう!」
「SIerさんと提携したら、大手企業も紹介してもらえそう!」
みたいな、パートナーさんの特性から逆算して戦略設計をするケースがよくあります。
この方法を否定する訳ではありません。むしろ、トップラインの最大化を目指す際には必要な考え方だと思います。
しかし、我々はコンパウンドスタートアップであり、単一プロダクトのトップラインの最大化を主とするのはプロダクトの構想と外れてしまいます。
コンパウンドスタートアップにおけるアライアンスでは、目の前のパートナーさんがどうか、からスタートするのではなく、
「顧客体験の最大化」から逆算した際のハードルを越えるためのポートフォリオを設計する、という視点からスタートする必要があるのです。
逆に言うと、型化による生産性の最大化ができている領域は、自社だけでアプローチする方が健全だったりもします。
業種×従業員規模別にPMF状況を整理する
続いて、業種×従業員規模別に、PMF状況及びストーリーを整理します。
一例で上記の図のような整理になった場合、
直販部隊が考えるべきは、「建設業」「情報通信業」「運輸業、郵便
業」等、型が確立されているマーケットに対していかに効率良くアプローチできるか、と言う観点になります。
そして、それぞれのストーリーに適した営業資料やWPを用意するなど、「型に投資する」アクションが必要です。
(実は、私自身が今取り組んでいる内容として、「業種」と「従業員数」を入力したら、それぞれにフィットした営業資料を作ってくれる自動化ツールを作ってみよう、みたいなことをやっています。趣味で。Bet Technology!)
では、ポートフォリオ的思考だとどういう考え方になるか。
答えは、空き枠を埋めるべく、業種に知見のあるパートナーさんのお力を借り、ストーリーを確立する。みたいなアクションがアイデアとして出てきます。モノによっては、他のプロダクトとの連携をすることでマーケットを開拓する選択肢もあるかもしれません。
また、今回のケースでは、空き枠が多いため、TAMを計算しながら優先順位づけを行うことが推奨されそうです。
このような考え方を組織全体で持っておくことで、プロダクトが出るたびに業種×従業員の観点で状況を整理し、ストーリーの見直しや新たなストーリーの開拓を常に模索することができるようになります。
プロダクト別にPMF状況を整理する
前述のPMF状況では、業種×規模毎のストーリーによって整理しました。
大枠の考え方は↑と大きく変わらないので、割愛します。
ポートフォリオに基づくアクション設計
整理をした後には、実際にアクションをしていきます。
一例で、会社のイシューを定義してみましょう。
・「エンタープライズのお客様の割合が低い」
というイシューを定義して思考実験をしてみます。
・エンタープライズのお客様への提供
こちらは、自社のBiz組織ではこれまで実績がなく、型化されたものがないため、「顧客視点の最大化」の観点から設計していく必要がありそうです。
そして、業種ですが、500名以上のストーリーが固まっている業種を軸に作って行った方が良さそうです。
500名以上のストーリーが存在する6つの業種で過去商談の失注分析をすると、どうやら「製造業」からは、問い合わせが随分多いが基幹システム(ERP)との連携が上手くいかないことが失注理由の80%を占めているようです。
ここで考えられそうなのは、
・ストーリーが作れさえすれば、過去の問い合わせが多かったので生産性の最大化から逆算して「掘り起こし施策」を行えそう
・連携が上手くいってないのであれば、SIerのパートナーさんと連携して、技術的な支援をサポートしてもらおう
・事例ができれば、これをコンテンツ化して広告運用しよう
・売上最大化のタイミングでは、BDRで業種×規模に特化した商談を多く創出しよう
あたりのアクションが設計できそうです。
このように、Biz組織がポートフォリオ化されたコンパウンドスタートアップでは、全ての業種×規模のお客様に対してのストーリーを構築することができると言う理想形を体現することができると考えています。
この視点で常に自社の事業を整理し、ポートフォリオをバージョンアップし続けることで、あらゆる組織間カオスは整理しやすくなると考えています。
これらを整理しておけば、自社の営業マンが何を理解しておかなければいけないか、何を強みしておかなければいけないか、といった所も同時に整理していくことができます。
逆にこの考え方がなければ、何から何をキャッチアップしなければいけないか、と言う定義ができないため、いつまで経ってもオンボーディングの終わらない会社になってしまう危険性もあるのです。
最後に
これまでの内容をまとめると、
・コンパウンドスタートアップのプロダクトはユーザー体験が最高
・知ってもらえれば良さが伝えられる
・しかし、お客様に知ってもらう難易度がめちゃくちゃ高い
・生産性だけじゃなく顧客体験の最大化を考えないとダメだ
・でもリソースのキャップもあるしどうしよう
・じゃあBiz組織をポートフォリオ化して考えよう
・顧客体験から逆算したアライアンスを設計しておこう
・イシューに対してのアクションを複数選択できるようにしておこう
と言う内容でした。
今後も新しいプロダクトを生み出し続ける弊社では、3年後を見据えてBiz組織をポートフォリオ化して構築することができる人材をどれだけ採用・育成することができるか。
ここが本当に重要で、尚且つ難易度が非常に高い話だと思っています。
当然ですが、自社のメリットだけを追う訳ではなく、パートナーさんにとってもメリットのあるwin-winの座組みを一つ一つ構築していく必要があるため、かなり難易度が高いミッションを担って頂く必要があります。
この記事を読んで頂いて、このカオスすぎるコンパウンドスタートアップのBiz組織に飛び込んでみたくなった方、ぜひ一緒にこの問題を解決しましょう。
半端じゃない難易度のイシューをどっさりお渡しできると思います。
再掲ですが、
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それでは、またどこかでお会いしましょう!!
さようなら!
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