「今を生きる」実践的な方法

「今ここ」を生きる。
これについて「ぼけと利他」、その他の書籍と自身の経験から着想を得たので書き残しておきます。
「ぼけと利他」の中では、村瀬さんがお年寄りと「今ここ」の時間を共にすることの重要性を解いていきます。
それはすごく大事だなーと思ったのですが、では、「実践的に今ここを生きるとはどうすれば良いのか」ということを考えました。

まず「今ここ」とはいっても、時間の範囲があります。今の1秒なのか、1分くらいの間なのか、状況によって「今ここ」の範囲は変わると思います。
そう考えた時に、「計画すること」と「今ここを生きること」の違いがわからなくなってしまいました。

村瀬さんは、何もかも最初から計画を放棄して、ことに臨むのは違う、と解きます。ということは、多少計画があって、その中で、揺れながら状況を見て臨機応変に変えていく、言うなれば、予見を持ちつつもリアルタイムの対話(doとフィードバックの応酬)をやめない、ということだと思いました。

多少時間に余裕があるときは、「予見」について考える時間をとることができます。切羽詰まっているときは、一瞬で物事を決定しないといけない時もあるでしょう。その場合は、do優先で後でフィードバックして悶々とすることになると思います。

「今ここ」を生きることができると何が良いのでしょうか。自分の主観としては、「生きている感じが得られる」ことだという気がしています。しかし、単純に「よし、今ここを生きよう」と決意したからといってできるものではありません。

もっとプラグマティックな実践方法を考えた時に、ある現象に対して、自分がどう感じたか、最初にどう思ったか、を大切にすることが第一歩だと考えられます。
自分に嘘をつかずに自分が感じたことをまず受け入れることによって、初めてそこから考え出すことができます。

で、大事なのは、最初にどう思うか、というのは、その人の経験・身体依存だという点です。今までの生活経験、人間関係の歴史、体調、さっき見たもの、とかいう無限のパラメータが合わさって、「最初に感じるもの」が出てききます。

ここで一つ視点を変えます。私はプログラマなのですが、「プログラマー脳」という本を読んでいます。そこには、長期記憶、短期記憶、ワーキングメモリの重要性が出てきます。またチャンク化という用語が出てきます。まだ詳しく読めていないので推測が入りますが、チャンク化というのは、経験を一つのまとまりにして、思い出しやすくすることで、日々のその繰り返しが、経験値になる、ということだと理解しています。

ここで重要なのは、日々の経験がチャンク化し、長期記憶に移行することによって、その人が、ある現象に対して「初めに感じること」、スキーマ療法的に言えば、「自動思考」に当たるものが変わるということです。(スキーマ療法も、その人が生き抜くために獲得してきた経験則みたいなものを「スキーマ」と呼び、「チャンク化」と似たような概念だと考えています)

また「ぼけと利他」の話に戻りますが、村瀬さんは「多幸感に包まれた深いぼけに接することがある」とおっしゃいます。それはその人の体に蓄積されてきた「チャンク」「スキーマ」が、体を通じて介護者に伝わっていることだと解釈できると思います。その人自身の人生の多様さを感じられる、という点において非常に幸せなことだと思います。

この「多幸感」は「ぼけた人」にとっての「今ここ」に通じているのではないでしょうか。では、私はまだぼけていない(と思っている)のですが、これを「今ここを生きる」に応用できないでしょうか。

私自身のチャンク化された経験、または、形成されたスキーマが、物事の最初の印象を作ります。それに加えて、対応可能な時間幅というパラメータが存在し、同じ現象でも対応可能な時間によって出てくる第一印象が異なってくるでしょう。いやもしくは第一印象は変わらないかもしれないけれど、sの先、どれだけ自分の論理空間を目一杯広げて、対応できるかは変わってくるのだと思います。

私が考える「今を生きる」はこうです。
何か現象に遭遇した時、一番初めに思ったことを捉える(それは複数あるかもしれない)、次にその捉えたことを組み合わせ、目一杯論理空間を広げ、それをもとに思考を積み重ねる、その結果出てきた言動が、その時に出てきたリアルタイムな対話である=「今ここを生きる」ということです。

「今」とされる短い時間の中にどれだけ現象を多面的に捉えられるか(目一杯論理空間を広げる)が個人の人生の主観的な豊かさにつながっていくのではないかと思います。

悶々と考えることは、決して無駄ではなく、その後のその人の感じ方を変える、重要な時間だと捉えることができます(迷わずに考えろ、という言説もありますが、ドライ過ぎてあまり僕は好きではありません)

とここまで、書いて急なのですが、私は「今」の多様性が少ないです。
というのも、私自身ADHDと診断され、短期記憶やワーキングメモリが少なく、現象に遭遇した短い時間の中で、引き出された経験をもとに考えるための記憶容量が少ないのです。もし短期記憶・ワーキングメモリの容量が多ければ、もっと、「今」が他面的に捉えられて、多様な生を感じることができるのかもしれません。

私は「今」を多様にしたいと考えています。
そのためにプラグマティックな方法を考案するために、ここまで書いてきました。
結果としては、
自分が感じたことをそのまま受け入れる(人の目を気にしない)
それをもとに許された時間で言語で考える・論理空間を広げる
その結果を出力する
またフィードバックを得る

この繰り返しです。
これが今を生きるということ、というのが今の僕の結論です。
これは、確定的な結論が出ない中でも生き続ける、ということです。
確定的な結論が出てしまったら、それはリアルタイム性のない計画の支配性・もしくは計画を放棄した上から目線(byぼけと利他)に安住・思考停止してしまっている、ということになると思います。

もし「許される時間」が長い(=「今」のスパンが長め)のであれば、詰将棋のように、じ〜っくりと考えて、いくつも答えを持ってるということが重要なのかもしれません。

これは多分普通の人がやっている事項なのだと思います。
僕は、ADHDという特性からもあるように、人とのコミュニケーションにおいて苦労してきました。だから、普通の人の皮を被りたいのです。だから、普通の人になる訓練法を自分なりに考えだしたのでした。

先ほど書いた、実践法と現状を比較します。
何かの現象に遭遇する
モヤっととしたものが体の中に発生するか、何も思わない
その場しのぎの対処をする
後で悶々として悩む

これは頭使えてないと僕は思うんですよね。
でも僕は手で思考するタイプなので、解決策の一つとしては、常にメモ帳を持ち歩いて、出来事に遭遇したら、それを言語化し、それをもとに考えることで、何か生まれるのかもしれません。(読んでいないですが、だからメモの魔力、とかが売れるのかもしれませんね。)

僕の目的は、今を多様にしたい=生きている間を持ちたい、です。
そう、僕は裏を返せば生きている感が乏しいのです。
毎日仕事が終わると、なぜか頭が働かず、多様性の乏しい容態に陥っています。スピードを求められる、ということもあります。
しかし、仕事で刺激を受けて、仕事が終わったら元気になっているのが僕の理想です。
でもそうはなっていない。

ここからは仕事論。

今度は仕事でやっていることを洗い出します。
プログラマなので、コードを書いているのか、と思われるかもしれませんが、ほとんどの時間をコードを読んで理解することに費やしています。すでに出来上がったシステム、というのは、いろいろな意図があり、コードがそこにその文法で書かれている理由・背景というのが存在します。何かの修正を行う際、それを汲み取って、追加・修正をしなければなければなりません。そんなことをずっとやっています。
だから頭の働かせ方としては、文章のロジックとそれがそこに書かれている背景を読み取る、ということです。人の頭の中をずっと理解しようともがいているわけです。こう考えたのかもしれない、ああ考えたのかもしれない。とやっています。
そこに自分のエゴは入ってはいけない、という抑制意識が常に働いています。だから、自分の感じた第一義、というものを大切にできていないのかもしれないです。そして、疲れて、自分を見失っているのかもしれません。

人の考えを読み取った上で、自分はこう考えるよ、というのを出していくのは、まだの段階なのかもしれません。守破離でいうところのまだ守なのかもしれません。修行としては一番苦しい時代ですね、きっと。ここをクリアすれば、ある程度、他面的に捉えらえるようになるのかもしれません。もう少し、仕事は踏ん張りどころということで…

今度は子育ての話。
今までの話を踏まえると、自分の子供には、自分か感じたものをそのまま受け取る素直な感性を持って欲しいという気になります。そのためには、子供が言ったことを、やったことをまずそのまま受け止める、ということが必要かと。大人の世界のロジックを覚えていってもらうことも大切です。子供本人がどう考えたかを大切にすること、大人の世界との折り合いをつけること、その二つを接続すること、ができていければと思います。

今ここを生きる、からだいぶ発展しました。
プラグマティックな方法を考えたつもりですが、これに固執してもまた、今を生きることにはなりません。生きる上で、一つの方法ではないと思うからです。また変化していくことになるでしょう。それでこそ、今を生きる、問うことになります。
また書きたいことが溜まりに溜まったら書きたいと思います。

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