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現場で気づいた膝の怪我の原因

これまでのnoteでもお伝えしていますが、クリニック勤務時代の私は前十字靭帯再建術後(以後ACLR)の患者様を毎日の様に担当し完全復帰までのfollowや再受傷予防について日々考えていました。

女子バスケットの現場に行っていたこともあり、膝の怪我を減らすことは至上命題でした。

ある日、院長から兵庫の隣である大阪の高校バスケ部で、最近前十字靭帯損傷の選手が多いから一度練習に見に行って何が原因か調べてこい。

そのように言われ、練習見学に行くことになりました。

大きな怪我の原因には様々な要素が関係します。

ハインリッヒの法則のように1つの重大事故の背後には29の軽微な事故があり、その背景には300の異常が存在する。

まさに前十字靭帯損傷はじめ、多くのスポーツ外傷・障害の背景にはこのような数かぎりない要因があると私は考えています。

その中で筋力が弱い事や関節が硬い事はひとつの要素ではありますが、絶対的な要素ではありません。

現にスポーツ現場に行っていると、医療現場で遭遇する受傷選手よりも筋力が弱く、関節の硬い選手ばかりだからです。

ではなぜある高校で他の高校よりも受傷が多いのか。
(年間2,3例が3年連続くらい、インターハイ出場狙うレベル)

これについて一定の答えを持って帰らなければいけないとその時の私は感じていました。

その時すでに股関節を使う重要性について選手や多くのコーチに伝えていた私は練習に行ってすぐに1つの要因に気づく事になりました。


それはコーチから練習中何度も発せられていた次の言葉です。

『膝曲げろ!!』

『膝が曲がってない!!』

1日の練習の中で数十回も聞きました。

結果的に行われる動作が同じでもティーチングや提示する部位によって選手の使われる筋肉や、普段の意識の向き方が変わってくるのです。

ディフェンスの構えが良くても膝を曲げるように指示を常に受けている場合には選手は《膝》を曲げようと意識します。

股関節や他を意識して結果的に《膝》が曲がるのとは大違いなのです。

膝が曲がってない原因が膝以外にある場合、

『膝を曲げろ!!』

はマイナスの提示やマイナスの学習となる可能性が大いにあるのです。
(指導や学習がパフォーマンスの低下に結果的に繋がること)

野球の投球フォームで肘が下がっている選手に

『肘あげろ!!』

と同じ現象ですね。

肘が下がる原因を解決しないと肘をあげようと意識すると三角筋や他の部位へ余計な力が入って結果的にフォームが崩れたりすることがよくあると思います。

バスケットにおいても膝は股関節と足首との中間関節であり、
股関節を曲げると自然に膝は曲がります。

もっというと股関節が硬い選手が重心を落とそうとすると膝だけを曲げて構えるために膝関節前面への負担がかなり増加してしまうのです。

その時、すでにその高校の先生と面識があったので経緯を説明し膝を意識させすぎる弊害をお伝えしました。

その上で、

『股関節を曲げろ!!』

『腰をおとせ!!』

『重心を低く!!』

など他のティーチング方法をご紹介し検討していただけるようになりました。

もちろん障害発生の原因は多岐に渡りますが、膝の怪我を繰り返す選手の中には膝を意識しすぎてしまうという要因があります。

その要因の背景には環境因子としてコーチからの指導方法のような、一見医療現場では知り得ない部分もある。

そう痛感した瞬間でもありました。

ということはリハビリ期間中に膝の位置や使い方を指導しすぎることはセラピストもマイナスの提示をしているかもしれない。

そのような視点を持つだけでひとつの要因が解消されるのです。

それから医療現場に戻った私は、今まで以上にリハビリ期間中には限りなく早期に違和感のない膝を治療によって獲得し。

膝を意識しなくてもよい身体環境を作ることこそが再受傷を防ぎ、パフォーマンスアップのキーワードになると感じ指導するようになりました。

女子高校バスケの後にサポートするようになった実業団女子バスケチームでは股関節の重要性をコーチも深く認識してもらえ、練習中も股関節を使うよう頻繁に指示してもらえるようになりました。

その結果、新人選手の場合、練習合流早期から股関節がちゃんと使えていないと怪我するから練習させられない。

そう怪我もしていないのにトレーニングを個別で指導するような流れにもなったのです。


現場と医療期間を繋ぐ役目として活動を開始していた当時の私にとっては、コーチや選手出会う全てが教科書でした。

その経験を共有することこそが今の私の使命であると感じています。

そんな事を書いている本日は、大阪でJARTAスポーツ障害・循環アプローチのセミナーでした。

膝を意識する弊害と膝を意識せずに結果的に膝への負担が軽減する為の思考と実践方法についてお伝えしてきました。

スポーツ現場だけでなく、こういった思考をアウトプットする貴重な機会を通して新たな気づきを日々いただいています。

今日もまた、ふとしたきっかけで自分の身体環境を向上させるヒントを受講者の方からいただきました。

本当に感謝しております。


こういったnoteでの発信も、色々な新たな視点が増える為のきっかけになればと考えています。

引き続きお付き合いいただければ幸いです。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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