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Q.読み書きが苦手なお子さんの支援方法について学校の先生とお話をしていた際に、「何かしらの支援はしたいけど、他の子と同じじゃないと文句が出てしまうから•••」と言われてしまい、結局何も変わらない状況が続いています。このような場合どんな伝え方をすればよいのでしょうか?

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A.学校の先生とのやり取りについての質問をいただきました。ありがとうございます。実はコメント欄に書いていただいた質問には、「また教室でできる支援方法があれば教えていただきたいです。」と続くのですが、その件は次の記事で書くことにいたします。ご了承ください。

さて、学校の先生と読み書きが苦手なお子様の支援方法について話し合いが持たれたけれども、先生は「他の子と同じじゃないと文句が出てしまうから•••」という姿勢で状況が変わらないとのこと。質問者様は学校を訪問することがある専門家の方なのでしょうか。この状況を質問者様は「なんとかしたい」と思っていることと想像します。私もなんとかしたいです。

もし私が質問者様に代わりその場にいたとしたら、まずは「その子に対してのアプローチを先生にしてもらいたい」という気持ちに蓋をすると思います。ここで大事なのは、「蓋をする」というイメージを持つことで、決して消去してはいないということです。

おそらく、その先生はまだその子に何かしらの手立てを講じられるような状態ではないのだと思います。それは決してその先生が指導者として未熟だということではありません。環境や関係性の要因が複数組み合わさり、結果的に今支援の準備が整っていないだけということだと思います。

ここで、その先生に「話の通じない人」「特別支援に理解がない人」「指導力がない人」などとレッテル貼りをしてしまうのは得策ではありません。人にはそれぞれ固有の型というのはなく、全てが環境との兼ね合いで生じていると考えることが大事です。

こういった考え方を持ったら真っ先に捨てた方がいいのは「相手の思考や行動に介入する」というアプローチです。それはなぜかというと、人は結局のところ他人の思考や行動に介入することは「できない」からです。あなたが誰かに「ああして、こうして」と言っても、「今は疲れているから」とか「気分じゃないから」と言って回避、抵抗されるだけです。

仮に相手があなたの言った通りに動いた、または納得した素振りをしたとしても、それはあなたの介入に従ったわけではなく「つべこべ介入してくる状況を終わらせた」に過ぎません。相談の場面だと「わかりました明日からやってみます」と言って実際にはやらないといった状況です。これ結構あります。

ではどうすれば?と思うかもしれませんができることはあります。それは「環境」への介入です。「環境」というのは介入可能です。自然や気候などの遥かに大きな環境への介入は不可能ですが、仕事量を減らすとか、家具のレイアウトを変えるなどの介入は可能です。

こういった「個人の思考や行動に介入するのではなく、介入すべきは環境」という視点を持ち、先ほどの相談の場に臨むとどんな展開になるでしょうか。試しに考えてみます。

•読み書きが苦手な子がいる
•まだ具体的な支援はできていない
•なぜなら支援をすると他の子たちから文句が出てしまうから
•先生との相談の場が設けられる
•先生から上記の状況について相談(情報提供)がある
•「介入すべきは環境」の原則に立ち、まずは「支援をすると文句が出てしまう状況」を変えてみようと提案する

こんな展開になるかと思います。ここまでは、先生個人の思考や行動に介入はしていませんが、ここから先生がどんな反応をするかが読めません。

ただ、結局今のクラスの状況だとその子に何か支援をするのはほぼ不可能なので、文句が出る環境を変えることを主訴にできるように促していって欲しいです。多分ですが、そんなに大変ではないと思います。ここまでの辻褄はズレていないので。

ではどんな風に文句が出ない状況にするの?という話ですが、ここでも「介入すべきは環境」の原則が働きます。子供たちの思考や行動(支援を受けている子がいることに文句を言う)に介入せず、子供たちの置かれている環境に介入しましょう。

ここで一度状況を整理します。なぜ子供たちは支援を受けている子がいることに文句を言うのでしょうか。これは文句が出るところから逆算で考えてみると見えてきます。

•支援を受けている子がいる状況に文句を言う
•自分は支援を受けていない
•支援を受けている子がいる
•課題が難しく、達成目標に到達できない、できなさそう
•達成目標が示される、又は自分の中に達成目標がある
•課題が提供される

こうなるかなと。まとめると、提供された課題に対して「難しい」と感じる子が、自分は支援を受けていないのにも関わらず、あの子は支援を受けている。「それはズルい」と感じ、文句が出る。ということです。

こう整理すると色々できる手立てが見えてきます。まず簡単なのは、「難しい」と感じた子は漏れなく全員支援を受けられるようにするというアプローチです。

例えばその支援のツールがひらがな表だったとしたら、教室の後ろに大きなひらがな表を貼ってしまえばいいのです。ひらがなが思い浮かばない子は全員後ろを向けば支援を受けられる状況にしてしまう。

読み書きが苦手な子にどんな支援ができるかは次の記事で詳しく書きますが、考え方は上の通りです。

ただ、このような支援は、「正解を導けた」「上手にできた」を目標にしているので、限界があります。その限界とは、支援を受けている子が「自分も〇〇さんみたいにヒントを見ないで問題を解きたい」と思ってしまうことによって訪れます。

このように、「よくできた」を達成目標にしてしまうと、能力によってできるできないが生じてしまうので、支援を受けている子が「支援を受けたくない」と思ってしまうことがあります。

じゃあどんな目標にすればいいのかというと、「昨日の自分を超える」です。周りとの横の比較ではなく、過去の自分との縦の比較です。

さらに言うなら「結果はどうでもいい」と思えるようになると二重丸◎です。

つまり「結果よりも過程(プロセス)が大事だよ、それも周りと比較してじゃなくて自分の中で成長を感じよう」ということです。

この評価軸を持っている集団は強いです。自分は自分、他人は他人という感覚が身につき、自分にできることをしよう、他人がしていることに文句を言うのはやめよう(必要ない)と思えるからです。

自己と他者の尊重とでも言うのでしょうか。そこの部分が集団で育ってくると、質問者様のお相手の先生が抱えるような悩みは生まれなくなります。

とは言っても、子供たちにプロセスの大事さを伝えるには、大人側の努力が必要です。つい、私たちは「よくできたね!」「上手!」「大正解!」などの「結果を褒める褒め言葉」を多用してしまいます。

これに変えて「ナイストライ!」「いい工夫!」「素敵な着眼点!」といった結果に辿りつくまでの「過程を褒める褒め言葉」を増やすことができると、子供たちは自然とプロセスが大事という思考になってくると思います。

いい結果が出たときは「努力が報われてよかったね」と過程である努力へのねぎらいを欠かさないようにするといいです。

まとめに入ります。クラス運営で子供たちの考えを変えたければ環境に介入することが大事という話でした。さて、ここではどんな環境に介入したか皆さんわかりますか?

ここで介入した環境は「先生自身」です。子供たちにとっての環境である「先生」が自分で自分に介入し、褒め言葉をはじめとした行動を変えてみる。そうすると子供たちは環境の変化に対応し、こちらがねらった思考の変化をしてくれるはず。こんなお話でした。

こういったことを先生にお伝えしていただけたらと思うのですが、最後に大事な話を付け足します。結局相談とは人と人との関わりなので、いい印象を相手にもってもらうことがかなり大事です。

印象とは五感からの入力、もっというと嗅覚、視覚、聴覚からの入力のフィードバックなので、嗅覚、視覚、聴覚に心地よい刺激を相手に与え、いい印象を持ってもらうことが肝心です。

・汗の匂いはしていないか、香水はきつくないか

・清潔感のある服装か、きびきびと動けているか、表情は暗くないか

・言葉遣いは丁寧か、誤解を招く表現はしていないか、相槌を打ちすぎていないか

このあたりを心得ていい印象を持ってもらいつつ、上述したことを伝えていただけたらと思います。

質問への回答は以上です。
この記事では、教育・心理・特別支援といったテーマを中心にご質問への回答をさせていただいております。
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