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【自治体の皆様へ】日々情報が変化する事態において、市民へわかりやすい情報発信をするための3つの心得

日々刻々と状況が変わるコロナ時代を迎える中で、政府のみならず、県や自治体もその対応に追われる毎日を送っているものと思います(日々お疲れ様です)。

行政の情報発信については、部署毎の縦割りになっていて、それぞれが1枚のページを自治体ホームページ内に持っていて、そこにPDFがペタッと貼ることで「情報発信しています」ということで広報完了ということになっている。例えばこちら。

FireShot Capture 074 - 自治体・医療機関向けの情報一覧(新型コロナウイルス感染症)|厚生労働省 - www.mhlw.go.jp

いくら自治体向け、専門家向けとはいえ、具合が悪くなる文字量。いざこのページにリーチしたところで、どこに、何の情報があるのかわかりません。もっともユニバーサルでなければならない行政のウェブデザインだけが、世の中のウェブデザインから取り残されているという悲しい事実にぶちあたります。

今回、2015年から2018年まで内閣広報室に出向をしていた経験が、今また皆さんに役立つのはと思い、少しまとめてみました。私が着任して1年経った2016年4月に、熊本地震は突然訪れました。1つ目の地震のときはちょうど室の歓迎会をやっていたのを覚えています。緊急対応のスタッフが1名、2名と慌ただしく帰り、その日の夜から、室は不眠不休の日々がスタートしました。

広報スタッフとして僕が携わったのは、以下3つです。これはいまだに官邸の中に受け継がれているようで、これまで特に災害の時にアクティブになっている体制ですが、まさにコロナウィルスは東日本大震災を凌駕する国難で、かつ日々刻々と事態が変化しています。今こそ、災害時と捉え、対応を進めるべきです。

0:外出時でもアクセスできるリモート体制を構築する

これは当初から整備されていた体制ですが、室には「日直」があり、24時間緊急事態に駆けつけられる状態を作っています。かつ駆けつける時間さえない時は、その場で作業ができるスーパーリモート体制が整っていました。北朝鮮がミサイルを打った時も、災害の状況に変化が会った時も24時間対応できる体制で、かつリモートも可能という状況をまず作ることは緊急事態においてこそ力を発揮します。

「通勤を控えてほしい」とお願いをする行政側が、緊急事態宣言がでた今も通常出勤(あるいは時差出勤)を行なっていると聞きます。行政に必要なのは、令和時代に合わせたリモートワーク整備を。人の振り見て我が振り直せ。こうしたリモートワーク体制がある中で、緊急事態に対応しているということが前提にある中で以下3点を形にしました。

1:一元化した情報をニーズに合わせてカテゴリ化する

FireShot Capture 073 - 令和元年台風第19号等で被災された皆様へ - 首相官邸ホームページ - www.kantei.go.jp

まず当時やったのは、情報の一元化です。各部署がバラバラに収集した情報をバラバラにあげるのではなく「ここを見れば全て必要な情報がまとまっている」というポータルページを作ることです。各部署から情報を吸い上げ、正確で迅速な情報を発信することが肝要です。通常にない情報連絡網を構築となるのですが、これがまた企業以上に行政では難しく、トップのリーダーシップにかかります。トップの強いオーソリティさえあれば、指示に従順なのは行政のいいところでもあり、すぐ形になります。

現在、自治体のページを覗くと、多くの自治体がコロナウィルスに関する情報を1つのページにまとめているところまではいたっているようです。対策本部が出来上がり、特設ページを設けて、情報をまとめている。しかし、ここからが問題で「時系列順」に縦にズラ〜〜〜〜〜っと更新してしまうのがほとんどなのです。

FireShot Capture 075 - 新型コロナウイルス感染症について(詳細情報) - 長崎県 - www.pref.nagasaki.jp

長崎県の情報も、この画像は全体の10分の1程度。縦にズラ〜〜〜〜〜〜っと情報が掲載されています。これでは見つけたい情報を見つけるストレスが止まりません。これを「わかりやすくまとめています」と広報しているのが現状です。

最新情報が更新されているのはもはや当然。人々がこのホームページにたどり着いたのにはワケがあります。そのワケとはどういうものか。「休業手当」なのか「家賃保証」なのか「罹患したと思ったらどうすればいいか」なのか。目的別にカテゴライズしてこそ、ユーザーストーリーベースのホームページになります。冒頭の「台風19号」の情報ページにはファーストビューからスクロールしてすぐに「住まい」「お金」「医療・健康」・・と色で分け、タブ画像を用意。文字ではなく画像で「一瞬でわかる」工夫を用意しています。ちなみに、熊本地震当時、このカテゴリの別を作り、実際に分類するのに徹夜しました。相当苦労する作業でしたが、その苦労が、国民の皆さんへの理解に繋がるので、とても達成感のある作業でしたし、一方でこれでわかるのかと不安もありましたが、今も続いているならば、少しは当時の苦労も報われます。

FireShot Capture 076 - human pictogram 2.0 (無料人物 ピクトグラム素材 2.0) - pictogram2.com

わかりやすいホームページを作るには、ピクトグラムの活用が有効です。行政には「画像は著作権がある、お金がかかるから使えない」という誤解がありますが、今やインターネットにはフリー素材があふれていて、それを利用するだけでも、サイトは劇的に見やすくなります。当時利用したのは、こちらのサイトです。ぜひ利用規約を確認した上で、活用してみてください。HUMAN PICTOGRAM2.0 http://pictogram2.com/

2:紙に落として配布できる仕組みをつくる

情報を一元化し、カテゴリ化しオンラインで発信する。ここまで行けば一旦はゴールです。オンラインにアクセスできる人たちはここにさえ来れば、ある程度わかりやすく情報を収集きる。自治体のウェブサイトでできる限界と戦いながら、最低限のデザインを施すだけで、喫緊の情報収拾を救えるとすれば、できることはやったほうがいい。ぜひ多くの自治体にトライしていただきたいです。

ただし、実際にはオンラインにアクセスできない人がいて、オンラインではなくオフラインにメインの情報源がある方々も自治体内にはたくさんいることを忘れてはならないのも、自治体広報の難しいところです。新聞や、回覧板、チラシやポスターの方が普段目に入る方々もいらっしゃいます。オンラインだけで伝えたい情報を伝えるのは難しく、特に地方はその傾向が強くあります。熊本地震の際は「避難場所」にどうやって情報を届けるかという課題がありました。テレビを置いてデジタルサイネージにしながら、各避難場所に掲載されている避難場所に掲示、配布できるオフラインの情報発信まで構築してあげることも、行政の緊急事態広報に不可欠なことを忘れてはいけません。

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当時作ったのは、現地で印刷して配布できる冊子型PDF。表紙があり、目次があり、中身がある。ホームページの内容を、冊子で配れるようデザインに落とし込みました。全部Keynote(要はパワポ)で作っています。画像は確か全て上記のHUMAN PICTGRAM2.0にお世話になったと記憶しています。色分けもホームページと同じにしています。こちらの制作も一人で背負ってしまったので相当時間がかかりましたし「フォントの優しさ」「フォントの大きさ」「色使い(この色使いはユニバーサルか、みたいな質問を此の期に及んで突っ込んでくる方がいらっしゃったりして試行錯誤しながら)」には気を使いました。また、yahoo 電子書籍に無料掲載するなどもトライしました。最新情報はオンラインですが、携帯電話の充電もままならない場所においてオフラインは重宝します。

FireShot Capture 077 - 熊本地震被災者の皆さまへ 政府応援情報 政府からのお知らせ - 首相官邸ホームページ - www.kantei.go.jp

さらに、毎日熊本の避難場所に届く「政府からのお知らせ」もあえて、学級通信のような形で「ちょっと古くつくる」ペラ1のポスターも制作しました。見慣れているデザインで、何の情報が政府から届いているかわかる形で発信する。こちらはデザインは二の次で、避難場所に届けたい情報を届けること優先で発信しました。当時現場でご覧になった方もいらっしゃるかと思います。

なお、ここで大切なことを1つ思い出しました。行政あるあるのNGパターンなのですが、こうした「すぐ読んでほしい」内容を住人の皆さんに広報するときは「何を言いたいのか」「何をして欲しいのか」を明確に書いてください。

NG: 臨時休業期間終了後の学校の対応について

(↑何を言いたいのかわからない)

例:臨時休校期間終了後もご家族の判断で通学しなくてOKです

(↑つまり言いたいのはこういうこと)

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つくば市は日英で何を言いたいかを明確に示しているいい事例です。こちらが今市内に掲示されているようです。赤字と黒字で緊急感も伝わります。とにかく伝えたいことは明確に。

3:SNSで災害専用のアカウントを作り、発信する

最後に、こうした情報はSNSで発信する専用アカウントを設けることをお勧めします。当時はTwitterをそのメインにしましたが、今はLINEも重宝します。

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首相官邸では専用アカウントを設けて、官邸からの情報を迅速に発信。長崎県は医療政策課が日々情報をアップデートしています。またLINE社が各自治体にサポートアカウントを提供しているようです。こういったプッシュ型の情報発信もするところまで構築して、ようやく広報体制が整ったと言えるかと思います。

情報をまとめるプロフェッショナルが必要

ただPDFを、ホームページの奥底に格納するのではなく、どうやってまとめて、どうやってリーチするか、まで情報発信のルートをデザインすることが、広報のあるべき姿です。市民目線に立ち、市民の悩みに合わせた広報をデザインするには、それなりのセンスが必要で、行政内にこういったセンスを持つ人は多くありません。もちはもちや。無理をせず、プロフェッショナルに頼むことも生産性をあげる上では大事な判断かと思います。多くの自治体には、広報アドバイザーが外部から入っているので、ぜひ今こそそういった外部アドバイザーを駆使して、正しい情報を、正確に、そしてわかりやすく届けることに務めてもらいたいと思います。何か不明点あれば、お問い合わせください。


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