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コカイン依存症を治療できるかもしれない新しいアプローチ | MIT Newsから

A new approach to curbing cocaine use | MIT News

ムスカリン受容体刺激によるコカイン依存を解決する新しいアプローチ

コカインの使用により脳の報酬系自体が破壊され(正確には、ニューロンに存在する樹状突起の枝や棘の数が増加するなどの変化が起きる)、より多くのコカインを求めるようになります。

このことから、依存症の人が自らの意思だけでその渇望を克服することは困難であるとされてきました。

しかし今回のGraybiel研究室の研究で、ムスカリン受容体M4やM1を刺激することで、コカイン依存の問題を解決できる可能性が示されました。

依存にはドーパミン系が関わるが、ドーパミン系の遮断には副作用があった

慢性的なコカイン使用は、ドーパミンに対する回路の感度を低下させるため、かつては報酬を得ていた経験も喜びを感じなくなり、使用者はより多くの量の薬物を求めるようになります。

このドーパミン系を直接遮断する方法を取ると、不快で危険な副作用があり依存症の治療として有効ではないため、脳の報酬回路のバランスを回復させる別の戦略が模索されてきました。

依存脱却を促すムスカリン受容体M4とM1、それぞれのメカニズム

コカイン中毒になったラットに、ムスカリン受容体M4を活性化する化合物を投与すると、すぐに薬物の使用を減らし、代わりに食物を積極的に選ぶようになります。

治療期間中(7日間)この効果は高くなり、日に日にコカイン使用量が減少することを発見しました。しかし、M4活性化化合物の投与を中止すると、ラットはすぐに以前のようにコカインを求める行動を再開してしまいました。

M1の活性化は、異なる時間スケールで作用します。効果が現れるまでの時間はかかりますが、治療を中止した後も効果が持続する点が異なります。

また、シグナル伝達分子CalDAG-GEFIを欠損させたマウスにおいては、M1を活性化してもコカインを求める行動が変化せず、効果が無くなってしまいました。一方、M4の活性化に関しては、CalDAG-GEFIの有無にかかわらず、コカイン摂取量が減少します。

つまりCalDAG-GEFIは、M1が効果を発揮するためには必須となりますが、M4の効果には何の役割も果たしていないということです(この結果はCalDAG-GEFIが神経伝達や可塑性に関わっており、今後の治療法を考える際に非常に重要な要素になることを示唆している)。

ちなみにM4受容体は習慣形成に深く関与していることを明らかにした脳領域である線条体(striatum)に多く存在します。Graybiel研究室がこれを発見しました。

ムスカリン受容体M4とM1を組み合わせた、コカイン依存脱却戦略

M4受容体を活性化することで、薬物依存症の患者が依存症を克服できる可能性が示唆されました。さらにM1受容体の活性化も組み合わせることで、より強力な依存脱却戦略になる可能性があります。

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表紙はkalhhさんの写真です。


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