年老いた脳も鍛えることはできるのか?
脳卒中患者のリハビリに見る脳の可塑性(かそせい)
神経出血や血栓によって脳の特定部位に永久的な損傷を受けた脳卒中の患者さんは驚くべき脳の回復力を見せます。
このことは、脳損傷後にリハビリテーションを行ったラットとそうでないラットを比較した実験でも、リハビリテーション群の方が大脳皮質の運動野において、より複雑な運動パターンが出現することからも証明されています。
90日間のジャグリングトレーニングで脳の体積が増加する
平均年齢60歳の健康な被験者が3ヶ月間ジャグリングの練習を続けたところ、技能習得に関係した脳の領域(hMT/V5=視覚野の中側頭領域)の灰白質に変化が見られました。
また、左側の海馬と両側の側坐核で、一過性の灰白質増加もありました。側坐核は報酬に関わるドーパミン経路に含まれる点も興味深いところです。
コンピュータートレーニングで改善する認知力
NIH(アメリカ国立衛生研究所)も支援する、米国内の6つの施設の健康な高齢者2,802人を対象とした研究において、トレーニングを6週間、そして1年後・2年後・3年後・5年後・10年後に、認知及び機能に関する多くの測定が行われました。
コンピューターを使ったスピードトレーニング群では、対照群と比較して認知症のリスクが29%減少しました。戦略的記憶トレーニングおよび推論トレーニング群では認知症リスクに対して対照群との有意な差はありませんでした。
スピードトレーニングでは、視覚的注意スピードと正確さを向上させるために設計された、分割注意と選択的注意の両方の訓練を含む、高度に特殊なタスクでトレーニングを行いました。
スピードトレーニングは、低学歴な高齢者やMCI(軽度認知障害)にも有効なことが分かってきています。ちなみに低学歴であることは、後の認知症リスクを高めることも知られています。
【龍成メモ】
ジャグリングの研究の最後に「加齢に伴い、人は能力を維持するために、やるべきことを減らすのではなく、やるべきことを増やさなければならない」とあります。
一方「60秒間ジャグリングする」というタスクを高齢者群はわずか23%しか達成できませんでしたが、20歳群(これとは別の研究)では達成率は100%です。
高齢者が新しいことに取り組む際には当然、前ほどは上達が早くないかもしれませんが、続けることが重要なようです。
Mihai ParaschivによるPixabayからの画像
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