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失恋と夏の、終わり

灼けたほおをつぅとつたって硝子色の粒が熱帯夜に混じって消えていく。

音をなくした線香花火の先がぽとりと落ちて砂まみれに灯る赤が色を失っていく。

最後だねとつぶやいた声が波音に混じって形を変えていく。

もう誰も見えない砂浜に、白黒のあなたが、ぼくの前で熔けていく。



夏も、もうすぐ、終わりですね。秋はいつ産声を上げるのでしょうか。季節の移り変わりが曖昧に感じるのは決して今年だけの特別な話ではなく、いつも私の夏はこれといって何もなく静かに過ぎ去っていきます。喧騒から離れた平穏な日々と言えば聞こえはいいですが、要は面倒くさがり屋なだけで、気付けば秋が始まっていて、ひどく感傷的になるわけではないものの、後悔がすこしだけ胸に兆します。「今年は夏らしいことができなかった」と悔やむ声がときおり目に入ったりしながら、私は今年も通常営業、特に夏らしいことはしていない。けれどつまらない夏だったかと言えば、別にそんなこともない。

学生の時も別に夏だからと言って、らしい、ことをしてたわけではなく、謳歌する彼らに加わることもなく、遠くからぼんやりと眺めているだけでしたが、夏休み、という明確な区切りがあり、別に夏らしいことをしていなくても、〈夏休み〉自体が夏らしいとも言えます。

でも……、そもそも、らしい、ってなんだよ、とも思ってしまいます。縁日に行って、海水浴して、花火して、かき氷食って……、と過ごせば確かに夏を謳歌している感じは出ているかもしれませんが、

すべての人が各々の夏のただ中にいて、その人だけしか味わえない夏を体験しているわけです。

そんな考えがふと頭に浮かびました。

私だけの(あるいはあなたにとっても)、夏が嫌なものでなかったなら、後悔などする必要などない。周囲の目を気にして、らしさ、に逃げるな、と自身に言い聞かせて、

今年は秋の産声に耳をそばだててみようかな、と……。

だって今年の夏も私にとって嫌なものではなかったのだから。私だけの夏に、感慨深げな、さよならを告げてみる。そんな夏との別れも悪くないのかもしれません。



導入の文章は、

twitterで書いた短い創作品にほんのわずかに修正を加えたものです。「色を使って、1ツイートで #失恋の終わり を表現してみよう」という思い付きの企画を投げた際の、サンプルみたいなもので、〈失恋〉と〈夏〉の終わりをテーマにして書いたものです。一ヶ月近く前に書いたものなのですが、せっかくなので、こちらにも置いておこうかな、と。

ただそれだけだと味気ないので、〈夏の終わり〉ですこし文章を書いてみました。風情も詩情もない(ツイートの創作品の内容にもちょっと反しているし……)、と思われたかもしれませんが、そういう人間なんです。

楽しむ、って、特別な世界を探すことじゃなくて、すこし見方を変えることだ、という想いが年々強くなっていく人間のとりとめもない話ですが、興味を持たれた方がいれば幸いです。

ちなみに上述のツイートのように私がたまに投げるお題(?)は別に期間を定めた格式張った企画のようなものではなく、自由に使ってもらっていいので良かったら、みなさんもやってみてください~。条件を変えてもいいですし、通知なども無理に付ける必要はありません。

他にもこんなお題(?)や企画(?)を投げたりしています(本人にあまり企画、という意識はない)。

1、座右のnoteをめぐる旅
2、趣味嗜好の分からない相手に小説をお薦めする時、あなたなら、どうする?
3、〈#noteと私〉で小説を一本書いてみませんか?
4、あなたの自信作をこちらに共有させてください

などなど、無理のない範囲で楽しめそうな方は、ぜひぜひ~。

お題とかって普段書けない(書かない)ことに挑戦できたり、気持ちの変化が起こったりして好きなんです。気が向いた方の創作のきっかけになったら、すごい嬉しいので、期間は一切設けませんでした。

もし良かったら~。



ちなみに〈夏の終わり〉をテーマにした小説も書いてます。

ではでは~。