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西澤作品をできるだけ読んでみる15  『必然という名の偶然』

 今回紹介するのは、

『必然という名の偶然』(実業之日本社文庫 2013)          ――シリーズ探偵はお休み中、大胆不敵な人気シリーズ番外編!

 親本は2011年に刊行されました。

 ※ネタバレはしないつもりですが、未読の方はご注意を!

 本書は『腕貫探偵』から続くシリーズの第三短篇集にあたるのですが、本書にはシリーズ探偵である〈腕貫〉さんは登場しません。文庫解説でも番外編という位置づけで本書の解説を書いていますが、《このシリーズを《腕貫探偵》を主人公(狂言回し)にした連作と見るか、櫃洗市を舞台にした連作と見るかで、本書の位置づけも微妙に変わってくるはずです。前者の流れで言いますと、《腕貫探偵》シリーズの番外編。後者だと『モラトリアム・シアター』の予告編に当たります。》という前置きをしています。

 物語がリンクしている一作目「エスケープ・ブライダル」と最終話「エスケープ・リユニオン」を挟んで、独立した短編が四作品並ぶ本書は舞台と一部のシリーズキャラクターが重複しているだけで、シリーズ前作を未読でもまったく問題の無い内容になっています。

 探偵が不在なので当然と言えば当然なのですが、安楽椅子探偵の魅力が大きなウェイトを占めていた『腕貫探偵』と『腕貫探偵、残業中』の二作に比べて、本書ではその要素は薄めです。その代わり前二作ではあまり見られなかった大胆な仕掛けの作品も収録されているのが、特徴的です。前二作では〈腕貫〉さんが大胆な推理を披露しても、本書のいくつかの作品にあるような驚かせ方はあまり無かったように思います。

 女運の悪い友人の結婚式で明らかになる意外な真実を描いた「エスケープ・ブライダル」や、ある法則に貫かれた死は偶然なのか、という「必然という名の偶然」などが特に印象に残りました。

 ぜひ、ご一読を!