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2022年12月の記事一覧

高野和明『踏切の幽霊』(文藝春秋)【読書メモ】

高野和明『踏切の幽霊』(文藝春秋)【読書メモ】

 一九九四年の終わり、元新聞記者で現在は女性誌の取材記者をしている松田は、下北沢の踏切で撮られた心霊写真を取材することになり、やがて知るそこで起こった事件に足を踏み入れていく。ということで本作は妻が死んだことをきっかけに、ぽっかりと心に穴の開いたような気持ちで日々を過ごす記者を主人公にした、ファンタジックな雰囲気の現代サスペンスです。ファンタジックな雰囲気、と書きましたが、内容はかなりシリアスで、

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フランシス・ハーディング『カッコーの歌』(光文社)【読書メモ】

フランシス・ハーディング『カッコーの歌』(光文社)【読書メモ】

※ネタバレには配慮しますが、未読の方はご注意を。

 真を得た(あるいは知った)偽りが、真実を取り戻そうとする物語。本書を読み終えて最初に浮かんだのが、この言葉でした。本来共鳴するはずのなかったふたつの魂に触れて、二重の意味でそんなふうに感じてしまいました。ちょっと分かりにくいですよね。すみません。ネタバレの問題もあり、曖昧な表現しかできないんです。

 舞台は20世紀はじめのイギリス。気が付くと

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