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皆、企業に甘えすぎていないか?

 長期投資による世の中づくりを考えるにあたり、3者の登場人物をイメージしてもらいたい。『投資家・生活者』、『運用会社』、そして『企業』だ。“運用会社”は我々の存在を示したいだけであり、これが仮に『投資家・生活者』と『企業』の2者のみでも成り立つはずだ。

長期投資であなたも社会も豊かになる仕組み

 『投資家・生活者』は個人であり一体不可分。そんな個人が資産形成を望むにあたり、頼りになるのが『運用会社(投資信託)』の存在だ。小額から投資ができ且つファンドを通じた分散効果を狙えること、銘柄選定および相場ウォッチなどプロの目利きを利用できること、分別保管で資産が守られることなどメリットはたくさんある。

 『投資家・生活者』から委託された資金は、『運用会社』を通じて『企業』等へ投資される。投資手法は様々だが、本来はより成長の見込める企業に投資するのが王道だろう。なお少々難しい言葉に触れるが、一般的に投資は流通市場(セカンダリー)で行われる。端的に言うと、既に発行された株式(株券)は売買おいて元・株主から新・株主の手に渡るだけであり、発行体である企業には資金は届かない。中古車市場と同じイメージである。ただし、ここでは上場の本目的である発行市場(プライマリー)を想定して話を進めることとする。

 『運用会社』から『企業』へ渡った資金は企業価値向上のため、研究開発や設備投資、または販路拡大など様々なことに費やされる。結果、企業は将来に付加価値の高いモノ・サービスを供給でき、消費者である『投資家・生活者』に選ばれることとなる。また『投資家・生活者』は『企業』の供給するモノ・サービスを購入することで生活を成り立たせている。成熟国家日本では、水を飲むのに井戸を掘ることもないし、東京から大阪に行くにも歩いていくことはそうそうない。必ず企業のモノ・サービスを利用する。

 そう、この『投資家・生活者』と『企業』の間を行ったり来たりしているのが“経済であり社会”だ。こここを膨らませていくことが将来の豊かさにつながり、この豊かさからのリターンが『運用会社』を通じて『投資家・生活者』に還元されていく。これが投資の本流である。言わば、豊かな将来社会を創造することを皆で目指し、それを分かち合うのが投資である。

株式市場が調達の場から還元の場に

 そんな本流が、いや起点が狂っている。
『投資家・生活者』は確かに最初に資金を拠出するのだが、『企業』を通じて将来を育むという志向はない。『運用会社』選びから“儲け”を最優先とし、対『企業』においては“還元”を先に求めるようになった。育んだものを分かち合う、ではなく、企業の虎の子の資金を資本政策の名の下に要求するのだ。それでも企業は将来の価値を上げていかなければならない。苦しい道である。

 更に“経済・社会”に見られる状況は、値引き・お得である。いかに努力して開発したモノであろうと、心を込めて生み出したサービスであろうと、『投資家・消費者』は安さばかりを気にする。デフレマインドからの脱却は我が国の最優先課題だ。さらには『政府』からの賃上げ要請と来たものだ。無論これも単一で見れば否定はできない。賃上げ資金が国内消費にまわれば経済は強くなるのは必至、やるべきだろう。こうして企業は、投資家、生活者、そして政府からもお金を支出することを求められているのだ。

 この異常事態にメスを入れられるのは個人である『投資家・生活者』だ。自分やその家族が住む将来をより良いものに育むべく、『企業』に応援投資をしてもよいのではないだろうか。そして良いモノ・サービスを値引きなど当てにせず買ったらどうだろう。賃上げの流れや将来の投資リターンを考慮すれば、今こそ踏ん張り時だ。将来は今以降からしか創れないのだから。

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