澤上龍|さわかみ投信代表

日本初の独立系直販投信、さわかみ投信の代表です。長期投資家目線で毎月一度ほど投稿してい…

澤上龍|さわかみ投信代表

日本初の独立系直販投信、さわかみ投信の代表です。長期投資家目線で毎月一度ほど投稿していきます。 小説『儲けない勇気-さわかみ投信の軌跡(幻冬舎)』2019年出版。人の志を応援し世を面白くするのが自らの志です。

最近の記事

運用成績こそ最強の広告

 ファンドの広告、認知促進活動には様々な手法がある。しかし断言する。最強の広告要素は運用成績であるということを。無論、一発当てたい人は短期間の成績を、お金の不安を解消し人生に自信を持ちたい人は長期の成績をと指標とする運用成績は人それぞれだろう。そのような適正性はさておき、誰しもに共通して言えるのが「運用成績以上の説明材料など存在しない」ということだ。 運用成績とは何?  運用会社は受益者から預かった資金に対し株式等への投資運用指図を行う。目論見通り株式等が値上がれば基準価

    • 運用をやめて、投資をしよう パートⅡ

       前回、“投資が単なる金融商品となり、もはやコモディティにまで堕ちた”と述べた。個人投資家が気にするのはリターンのみ。金融業者が競うのは手数料の引下げのみ。なぜかって? 金融商品に特徴や差異を求めなくなってきたから。その結果、金融業者から商品の説明はされなくなり、代わりに“長期・つみたて・分散”といった『個人投資家のとるべき手法・心構え』がキラーワードとなった。“長期・つみたて・分散”は確かに有効だが、それを言い出した時点で金融業者、そして金融商品の存在価値は危うい。いずれに

      • 運用をやめて、投資をしよう

         ESG投資がふるわない。国連による原則論の提唱が06年だったと記憶しているが、それ以降35兆ドル規模まで成長したものの、足元では米国を中心にESG投資からお金が流出している。いや、否定的な発言さえ飛び交っているのだ。いったい何が起こっているのか? 自由と責任の相反  E=環境・S=社会・G=企業統治に配慮した企業への投資は、投資家の社会的責任を果たす“望むべき投資手法”だと考えられる。それが否定される理由は、投資に政治色がつくやらウォッシュ問題やら以前に、そもそも一般的

        • 自由の国・ニッポン

           誰にでも夢を掴むチャンスがある国・アメリカ。自由な権利と平等な機会を拠りどころに“成功の夢”を抱く精神こそ、アメリカ国民が建国以来ながく信奉してきたアメリカン・ドリームだ。桁違いの成功者が生まれるアメリカ。日本から見ると羨ましく感じるだろうか。ともあれ事実、個人も法人も規格外のビッグになれるのが自由の国・アメリカである。先日、そんなアメリカの地にて世界スポーツ界の史上最高契約金を決めたのは日本人・大谷翔平氏だった。 自由と平等こそがアメリカン・ドリームのカギ?  自由と

        運用成績こそ最強の広告

          暴落という名のオオカミが来るぞ!

           「オオカミが来るぞ!」と何度も叫んできた。しかし、なかなかその姿を見せない。不安の中にいる人々の共感が得たいから? それとも単にオオカミ少年の如く愉快犯? いや違う。事実、オオカミは姿を見せていないだけで、すぐそこにいるのだ。 オオカミはまだ来ない  リーマン・ショックの傷を癒し景気浮揚を狙うための緩和政策はずいぶんと長く続いた。いよいよ出口を模索しようという段階でパンデミックが世界を止めた。人類は苦しみつつも戦い抜きそれを制した。結果、緩和の出口を探る機会を逸した。

          暴落という名のオオカミが来るぞ!

          PBR改善は投資家が意識すべきこと

           東京証券取引所(東証)によるPBR改善要請も手伝い、株価に動きが生まれているようだ。いわゆるオールドエコノミーを中心としたPBR1倍割れ企業に対し、東証が具体的な改善策を明示するよう求めたのが発端。企業側のアクションに先行して株価が反応している様は、日本株式市場の再評価という側面のみならず、東証の確固たる姿勢も背景にあるだろう。 PBR1倍割れということは?  PBRとは“株価純資産倍率”のことで、純資産=株主資本、つまり株主の持ち分に対して株価がどの程度に評価されてい

          PBR改善は投資家が意識すべきこと

          金融機関は目先の損を取れ

           銀行、証券、そして投資信託のような金融業者はリスクを毛嫌いする。本来、金融業者はリスクとどう向き合うかが生業のはず。しかしそのような金融業者が本業であるリスクをなかなか取らない。顧客のお金を預かっているという性質上、リスクを回避し安定を選ぶ癖が染みついている。いやむしろ、そういう姿勢こそが是とされてしまっているようだ。  例えばあなたが事業を始めたとしよう。運転資金の調達方法としてすぐに頭に思い浮かぶのは銀行借り入れだろう。しかし、いざ銀行に赴いたところで、希望通りの金額

          金融機関は目先の損を取れ

          結婚相手をどう選びますか?

           投資信託(ファンド)の本質的な説明など無理である。企業投資も同様。例えば、“企業を応援する気持ちで”というフレーズを用いるが、そんなもの説明できるわけがない。なぜなら、応援したい気持ちは自分自身にあり、企業の何らかの要素に惚れ込み、または支えたいと思っているからだ。それを他人が易々と理解できようもない。  結論から言うと、応援投資もファンド選びも“相性が合うか”“共感できるか”という価値観の世界。すなわち、自分自身に価値観がなければ話が始まらないのだ。 どんなファンドを

          結婚相手をどう選びますか?

          投資信託のライバルとは

           「投資信託(ファンド)のライバルとは?」と問われたらどう答えるだろうか。まずは大分類(対象資産や国別)で区分し、その先でアクティブ型・パッシブ型と括っていくだろう。しまいには販売会社を経由するタイプ・しないタイプ(直販)と分けられ、モノによっては類似するファンドは5~6本まで絞られる。無論、比較要素は期間、規模、分配金方針など様々あり、実際のところ一つとして同じファンドはない。ただし個人投資家の立場から見れば、類似する数本程度をテーブルの上に並べ、どのファンドが良いか吟味す

          投資信託のライバルとは

          日経新聞の取材より

           日経新聞より取材を受けた。テキストでの取材のため、そのまま本誌に転用した。取材の背景にはセゾン投信の人事が関係しているのかもしれないが、それには言及せず。よって下記は純粋に直販投信として思うところを述べた。 御社は国内で最も知名度のある独立系運用会社だと思いますが、改めて直販を重視される理由を教えてください。  最重要ポイントは受益者との連携性。暴落時には事前に見定めた企業に対して応援買いがベストだが、個人投資家は“損切り”といった一般論もあって売り過多となる。つまり運

          ダイナミックプライシングから考える

           先月、タクシーにダイナミックプライシングが導入されるとの報道を見た。「ああ、やっとか」と思うと同時に、ふと海外のお土産屋が脳裏を過った。 定価制の是非    かつて日本は世界に先駆けて定価制を取り入れたと学んだことがある。三井高利の越後屋(現・三越)は呉服市場への参入が後発だったこともあり、知恵を絞って後発の不利を補った。それが定価制で、庶民が安心して店内で買い物ができるようにとの配慮だったはずだ。綺麗な反物に魅せられ、いざ価格を聞いてビックリ、がなくなったわけだ。越後屋

          ダイナミックプライシングから考える

          今後の日本経済に期待できませんが

           最近、様々な人との会話で行き着くのは、「日本にはリーダーが必要だ」である。現状の延長に光を感じられず、痛みを伴ってでも革新を求めなければならないといった危機感なのだと思う。  昨今の日本の風潮は全体納得を土台とした柔らかいものであるし、事実、そういった背景を踏まえた制度が増えてきている。“個人の選択肢の充実”や“弱者救済”、“富の再分配”など一見してどの各論も間違っていない。しかしながら、制度解釈の甘さが権利主張に繋がり、延いては“強い日本”から遠ざかっている感が否めない

          今後の日本経済に期待できませんが

          伝えることの重さ

           先日の社内の投資哲学腹落ち会(仮称)にて、「株主の圧力によって企業の意思表示が弱まっているのでは?」という話が出た。筆者は「むしろ世論が企業のみならず株主にも影響を与えているのでは?」と意見を差し込んだ。つまり、「株主に対する責任を果たすにはROEはXX%以上、●●は必須、◆◆も意識せよ」といった海外の常識や学者の理屈がメディアを通し、市場の“べき論”として形成されていることへの懸念だ。  それら“べき論”には一理あるものの、しかし企業は多種多様。業種、ステージ、状況など

          象を評す

           それは壁であり、蛇であり、樹であり、扇であり、そしてロープである。評価する各々にとっては正しく、しかし本質を見誤ってしまうのが“群盲象を評す”という諺だ。“木を見て森を見ず”とも表現できるが、つまり物事を多面的に捉える重要性を説いている。  この直喩は何にでも当てはまる。例えば情報だ。瞬間的な情報だけでは誤った判断に陥る可能性が高い。その情報の脈絡というか、背景を捉えてこそ“情報”は生きる。情報が変化の兆しだとするなら、実態がどの方向に進むのかを思考すべきなのだ。また人を

          非財務情報に投資価値はあるか?

           およそ9年前、企業のCSR担当者が集まる会に講師として呼ばれた時のこと。30名程度の前で、長期投資家の視点から次のようなことを話した。  「持続性のある本業は自ずとCSRの要素を含んでいる。CSRは本業と切り離して考えるものではない。100年企業になるためには、本業が世の中に求められ続けることが必要だ。故に本業が社会課題を解決しているかどうか考えるべし。言わば、CSR部門がなくなることがゴールかもしれない」。 企業におけるCSRとは?  “社会に対する良いこと”を専門

          非財務情報に投資価値はあるか?

          上場ってなんだ?

           かつての日本は上場を誉と考えていたようだ。自ら創立した企業を上場させることを夢見て、または上場企業に勤めることに憧れて。  「お前と違って俺は一部上場企業の部長だぞ!」と、品川付近の電車内で喧嘩相手を侮蔑する騒動を見たのは2年程前のことだったろうか。「ちなみに、どちらの企業ですか?」と声をかけそうになった。侮蔑された相手がキレて殴りかかろうとしたとき、上場企業のおぼっちゃんの「殴るのか? 録画してるからな!」で相手が萎えて騒動はおしまい。時代錯誤の割には最新の喧嘩回避術に