澤上龍|さわかみ投信代表

日本初の独立系直販投信、さわかみ投信の代表です。長期投資家目線で毎月一度ほど投稿してい…

澤上龍|さわかみ投信代表

日本初の独立系直販投信、さわかみ投信の代表です。長期投資家目線で毎月一度ほど投稿していきます。 小説『儲けない勇気-さわかみ投信の軌跡(幻冬舎)』2019年出版。人の志を応援し世を面白くするのが自らの志です。

最近の記事

未来について語ろう

 投資とは未来に対して行うものだ。決して過去を変えることはできず、また過去に投資することもできない。それにもかかわらず、投資について語られる際は過去を意識する人が極めて多い。無論、過去には実績という紛れもないファクトが存在し、検討材料に値することも確かだ。しかし過去がそのまま未来に引き延ばされることはなく、現在以降については誰にとっても全く新しいのだ。 客観の過去と主観の未来  物事を検討するにあたり過去は客観、未来は主観で考えるのが健全だろう。変えられない過去は様々な視

    • 投資家も責任を果たそう

       新NISAに伴って資産運用が若年層に広がる流れは望ましいことだ。ただし“投資”の意識は薄いと感じる。「資産さえ増えれば何でもよし」とは言わないが、投資先企業に対する責任感はなく、そして意識づけの方法も整備されていない。  この先、投資家が企業そして社会を壊してしまうといった懸念を抱く。社会を壊すとは極端な物言いではあるが、しかしながら現在はその道のりにある。ではどうすれば健全な道に修正できるだろうか。常識という蓋を外して発想を飛ばしてみたい。 投資家だけが優遇された資本

      • ニュー・エコノミー下で米国成長株は永遠に

         米国市場を見ていると、“ニュー・エコノミー”なる論がITバブル崩壊と共に消えていった過去を思い出す。オールド・エコノミーと対比するニュー・エコノミー、その顛末は次の通り。  1990年代後半、IT技術の発展でサプライチェーンのような「生産~在庫~販売」の最適管理が可能となった。その結果、見込生産~過剰在庫などのロスが生み出す景気循環(キチン・サイクル)が消滅すると考えられた。しかし直後に起きたITバブル崩壊により、90年代に続いた景気拡大が終焉、この論理は間違いだったと忘

        • アセット・アロケーション無効化の現在と復活の今後

           バラ撒かれたマネーが過剰流動性を生み出し、実体経済から金融経済が切り離される。この流れは数十年も続いており、リーマン・ショック時の各国中央銀行が顕著で、金融の力で経済を支配することに憂いを感じなくなってしまったようだ。  経済の死を阻止するなど功を奏した点もあるが、景気浮揚という主目的とは別に金融市場が暴走し、株式や不動産といった資産の全面高を形成するに至った。それが新型コロナウイルスの世界的蔓延で歯止めを失い、経済と金融の関係は完全に狂った。 長期運用の極意はアセット

          皆、企業に甘えすぎていないか?

           長期投資による世の中づくりを考えるにあたり、3者の登場人物をイメージしてもらいたい。『投資家・生活者』、『運用会社』、そして『企業』だ。“運用会社”は我々の存在を示したいだけであり、これが仮に『投資家・生活者』と『企業』の2者のみでも成り立つはずだ。 長期投資であなたも社会も豊かになる仕組み  『投資家・生活者』は個人であり一体不可分。そんな個人が資産形成を望むにあたり、頼りになるのが『運用会社(投資信託)』の存在だ。小額から投資ができ且つファンドを通じた分散効果を狙え

          皆、企業に甘えすぎていないか?

          運用成績こそ最強の広告

           ファンドの広告、認知促進活動には様々な手法がある。しかし断言する。最強の広告要素は運用成績であるということを。無論、一発当てたい人は短期間の成績を、お金の不安を解消し人生に自信を持ちたい人は長期の成績をと指標とする運用成績は人それぞれだろう。そのような適正性はさておき、誰しもに共通して言えるのが「運用成績以上の説明材料など存在しない」ということだ。 運用成績とは何?  運用会社は受益者から預かった資金に対し株式等への投資運用指図を行う。目論見通り株式等が値上がれば基準価

          運用成績こそ最強の広告

          運用をやめて、投資をしよう パートⅡ

           前回、“投資が単なる金融商品となり、もはやコモディティにまで堕ちた”と述べた。個人投資家が気にするのはリターンのみ。金融業者が競うのは手数料の引下げのみ。なぜかって? 金融商品に特徴や差異を求めなくなってきたから。その結果、金融業者から商品の説明はされなくなり、代わりに“長期・つみたて・分散”といった『個人投資家のとるべき手法・心構え』がキラーワードとなった。“長期・つみたて・分散”は確かに有効だが、それを言い出した時点で金融業者、そして金融商品の存在価値は危うい。いずれに

          運用をやめて、投資をしよう パートⅡ

          運用をやめて、投資をしよう

           ESG投資がふるわない。国連による原則論の提唱が06年だったと記憶しているが、それ以降35兆ドル規模まで成長したものの、足元では米国を中心にESG投資からお金が流出している。いや、否定的な発言さえ飛び交っているのだ。いったい何が起こっているのか? 自由と責任の相反  E=環境・S=社会・G=企業統治に配慮した企業への投資は、投資家の社会的責任を果たす“望むべき投資手法”だと考えられる。それが否定される理由は、投資に政治色がつくやらウォッシュ問題やら以前に、そもそも一般的

          運用をやめて、投資をしよう

          自由の国・ニッポン

           誰にでも夢を掴むチャンスがある国・アメリカ。自由な権利と平等な機会を拠りどころに“成功の夢”を抱く精神こそ、アメリカ国民が建国以来ながく信奉してきたアメリカン・ドリームだ。桁違いの成功者が生まれるアメリカ。日本から見ると羨ましく感じるだろうか。ともあれ事実、個人も法人も規格外のビッグになれるのが自由の国・アメリカである。先日、そんなアメリカの地にて世界スポーツ界の史上最高契約金を決めたのは日本人・大谷翔平氏だった。 自由と平等こそがアメリカン・ドリームのカギ?  自由と

          暴落という名のオオカミが来るぞ!

           「オオカミが来るぞ!」と何度も叫んできた。しかし、なかなかその姿を見せない。不安の中にいる人々の共感が得たいから? それとも単にオオカミ少年の如く愉快犯? いや違う。事実、オオカミは姿を見せていないだけで、すぐそこにいるのだ。 オオカミはまだ来ない  リーマン・ショックの傷を癒し景気浮揚を狙うための緩和政策はずいぶんと長く続いた。いよいよ出口を模索しようという段階でパンデミックが世界を止めた。人類は苦しみつつも戦い抜きそれを制した。結果、緩和の出口を探る機会を逸した。

          暴落という名のオオカミが来るぞ!

          PBR改善は投資家が意識すべきこと

           東京証券取引所(東証)によるPBR改善要請も手伝い、株価に動きが生まれているようだ。いわゆるオールドエコノミーを中心としたPBR1倍割れ企業に対し、東証が具体的な改善策を明示するよう求めたのが発端。企業側のアクションに先行して株価が反応している様は、日本株式市場の再評価という側面のみならず、東証の確固たる姿勢も背景にあるだろう。 PBR1倍割れということは?  PBRとは“株価純資産倍率”のことで、純資産=株主資本、つまり株主の持ち分に対して株価がどの程度に評価されてい

          PBR改善は投資家が意識すべきこと

          金融機関は目先の損を取れ

           銀行、証券、そして投資信託のような金融業者はリスクを毛嫌いする。本来、金融業者はリスクとどう向き合うかが生業のはず。しかしそのような金融業者が本業であるリスクをなかなか取らない。顧客のお金を預かっているという性質上、リスクを回避し安定を選ぶ癖が染みついている。いやむしろ、そういう姿勢こそが是とされてしまっているようだ。  例えばあなたが事業を始めたとしよう。運転資金の調達方法としてすぐに頭に思い浮かぶのは銀行借り入れだろう。しかし、いざ銀行に赴いたところで、希望通りの金額

          金融機関は目先の損を取れ

          結婚相手をどう選びますか?

           投資信託(ファンド)の本質的な説明など無理である。企業投資も同様。例えば、“企業を応援する気持ちで”というフレーズを用いるが、そんなもの説明できるわけがない。なぜなら、応援したい気持ちは自分自身にあり、企業の何らかの要素に惚れ込み、または支えたいと思っているからだ。それを他人が易々と理解できようもない。  結論から言うと、応援投資もファンド選びも“相性が合うか”“共感できるか”という価値観の世界。すなわち、自分自身に価値観がなければ話が始まらないのだ。 どんなファンドを

          結婚相手をどう選びますか?

          投資信託のライバルとは

           「投資信託(ファンド)のライバルとは?」と問われたらどう答えるだろうか。まずは大分類(対象資産や国別)で区分し、その先でアクティブ型・パッシブ型と括っていくだろう。しまいには販売会社を経由するタイプ・しないタイプ(直販)と分けられ、モノによっては類似するファンドは5~6本まで絞られる。無論、比較要素は期間、規模、分配金方針など様々あり、実際のところ一つとして同じファンドはない。ただし個人投資家の立場から見れば、類似する数本程度をテーブルの上に並べ、どのファンドが良いか吟味す

          投資信託のライバルとは

          日経新聞の取材より

           日経新聞より取材を受けた。テキストでの取材のため、そのまま本誌に転用した。取材の背景にはセゾン投信の人事が関係しているのかもしれないが、それには言及せず。よって下記は純粋に直販投信として思うところを述べた。 御社は国内で最も知名度のある独立系運用会社だと思いますが、改めて直販を重視される理由を教えてください。  最重要ポイントは受益者との連携性。暴落時には事前に見定めた企業に対して応援買いがベストだが、個人投資家は“損切り”といった一般論もあって売り過多となる。つまり運

          ダイナミックプライシングから考える

           先月、タクシーにダイナミックプライシングが導入されるとの報道を見た。「ああ、やっとか」と思うと同時に、ふと海外のお土産屋が脳裏を過った。 定価制の是非    かつて日本は世界に先駆けて定価制を取り入れたと学んだことがある。三井高利の越後屋(現・三越)は呉服市場への参入が後発だったこともあり、知恵を絞って後発の不利を補った。それが定価制で、庶民が安心して店内で買い物ができるようにとの配慮だったはずだ。綺麗な反物に魅せられ、いざ価格を聞いてビックリ、がなくなったわけだ。越後屋

          ダイナミックプライシングから考える